05-07.夢
「酷いです。ホノカ様。
何故私だけ寝かせて皆様と褥を共にしているのですか?」
「違うの……皆が変なの……助けて……フィオちゃん……」
朝になって目覚めると、体中にミアちゃん、ルフィナ、ダフネ、アイちゃんがしがみついていた。
結局、あれから私の話なんて一切聞いてくれないまま、全員が既に私の伴侶なのだと言い張った。
昨晩は代わる代わるキスをされながら、どうにかこうにか夕食を済ませて寝床に潜り込んだのだった。
こんなのどう考えたって悪ノリだ。
絶対何か裏があるはずだ。
アイちゃんまで混ざって、いったい何が目的なんだろう。
何がそこまでこの子達を駆り立てたのだろう。
ミアちゃんなんて、殆どずっと泣きながらだったし。
この悪巫山戯で一番ダメージ受けてるのミアちゃんじゃん。
そのくせ、皆を止めようともしなかった。
精々、自分が一番多くキスしようと迫ってきたくらいだ。
しかも、泣きながら「捨てないでくれ」なんて囁くのだ。
あんなの堪ったものじゃない。
思わず、私を追い詰めるのが目的なのかと思ったくらいだ。
ルフィナとダフネはそんなミアちゃんにもお構いなしだ。
ミアちゃんに負けじと、何度も口づけを迫ってきた。
結局私の拒否なんて全部無視だった。
ルフィナは何故か再び成人した姿に変身していた。
「これなら抵抗も無いでしょ」なんて言いながら、問答無用で唇を奪われた。
そうして心身共に疲れ切った私は、皆が縋り付くのもそのままにして眠りについたのだった。
全員まだ起きていないようだ。
そもそも本当に寝ているのだろうか。
今も私の全身をガッツリ固定していて、一切の身動きを許してくれそうにない。
フィオちゃんはそんな私達を覗き込みながら、自身も混ざる隙を探しているようだ。
「お約束どおり、私は既にホノカ様のものです。
お望みとあらば、お助けしましょう」
フィオちゃんはそう言って、何故か私のワンピースを剥ぎ取った。
「なっ!?何やってるの!?」
「おや?
失敗してしまいました。
ホノカ様をそこから取り出そうとしたのですが。
ああ、失敬。
そうでしたね。ホノカ様に私の術は効かないのでした」
「絶対わざとでしょ!?
すぐに戻して!でないと!」
はっ!?
「ふふ。朝から騒ぎすぎだよ、ホノ姉」
ルフィナは私の頬にキスをしながら、胸に手を伸ばしてきた。
「私の……私のなのに……」
ミアちゃんは昨晩と変わらずおかしいままだ。
ボソボソと呟きながら、私の体にしがみついた。
「まっぱ」
「ダフネも」
「ぬぐ」
ダフネは半身を上げて、自らの服を豪快に脱ぎ捨てた。
「まったく。
ボクはホノカを信頼していたのに。
こんなにも早く裏切られるなんて」
アイちゃんは視線を逸らしつつも私の足にしがみついた。
「ホノカ様。
どうか私にもご寵愛を」
自分の服も消したフィオちゃんが、私の足元から這い寄ってきた。
フィオちゃんだけじゃない。
いつの間にか全員が素っ裸だ。
まさかフィオちゃんが術で!?
「待って!皆違うから!待ってよ!お願い!許して!
私が悪かったから!全部謝るから!
だからそれだけは!!」
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「待ってぇ……ダメだってぇ……」
「ホノカうなされてるわよ?
アイ、一体何を見せてるの?」
「さあ?
夢の内容までは知りませんよ。
知りたければメレクにでも聞いてみて下さい」
「流石にやり過ぎじゃないかな?
ホノ姉、そこまで悪いことしたかなぁ」
「ボクとの約束を反故にするのです。
この程度で済ませる事を感謝してほしいくらいです。
というかやり過ぎなのは、ミアの方では?
あそこまで役に入り込む必要も無かったでしょう?
明らかに一番ホノカを追い詰めていましたよ?」
「ハーレムなんてものを目論んだホノカが悪いのよ」
「それこそミア姉が言える事じゃないでしょ……」
「ならフィナのファーストキスを横取りした報いよ」
「それはダフネだし……。
しかもしたの私からだし……」
「ダフネ」
「フィナ」
「はじめて?」
「ダフネはノーカンよ。
ダフネ自身がまだ理解しきれていないもの」
「むう」
「しつれー」
「そうだよ!ミア姉!
ダフネの事も私の事も子供扱いしすぎだよ!
何年も修行したのは事実じゃん!
私だってもうとっくに大人のレディーだよ!」
「ならなんであんな事言いだしたのよ?」
「ミア姉が何時までも泣いてたからでしょ!
ミア姉の心の準備が出来るまでは身を引いてあげたの!
私はミア姉の事だって大好きなの!!」
「……アイ。やっぱり止めましょう。
全部夢だった事にするなんて」
「無理です。
もう術にかけてしまいましたから。
目覚めたホノカは、決闘後の出来事を全て夢と思い込むはずです。
そもそも、そうでなければ困るのです。
我々のあの振る舞いは、夢として誤魔化すからこその一時的なものだったはずです。
その約束があったから、ボクも協力したのです」
「アイならどうとでもなるでしょ」
「残念ながらボクはこの手の術が不得手なのです。
へーちゃんやメレクならともかく、ボクでは細かい制御など出来ません」
「ならメレクを呼びましょう」
「ご冗談を。
ボクに尻拭いを頼めと言うのですか?
自らの弟子に?」
「もう!ミア姉!そこまで!
余計な事考えなくて良いから!
どうせ後で泣く事になるんだよ!
ちゃんと心の準備して出直してきて!」
「……ありがと」
「どういたしまして!!」
「フィナ」
「おこってる」
「そりゃ怒るよ!
ダフネだって怒って良いんだよ!」
「むむ」
「むずかし」
「ミア」
「だいすき」
「だから」
「…………ありがと」




