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05-04.結界vs収納

「あれ?

 もうお終い?

 やっぱりフィオちゃんじゃ私に勝てなかったね」


 私が試合開始直後に発動した時間遅延結界に、フィオちゃんは為す術無く囚われた。


 何やら自信満々だったけど、フィオちゃんがこの術を防げるはずも無い。

ユスラのように転移を使えるならともかく、あのタイミングで避ける事は不可能だ。



「アイちゃん、もう勝負は着いたでしょ?

 宣言してくれないの?」


「……」


 アイちゃんは何も答えてくれない。

遅延結界じゃ、これ以上はこちらからも手を出せないし、戦闘不能とは認めてくれていないのかも。


 なら仕方がない。

遅延結界の外側に何か別の拘束系結界を張って解除するか。


 一応、念の為ね。

フィオちゃんは何かを隠しているみたいだし。


 軽めの重力結界で良いかな。

下手な術で怪我をさせても嫌だし。



「油断しすぎですよ。ホノカ様」


「そうでもないよ。フィオちゃん」


 私の背中にナイフを突き立てていたフィオちゃんが、地を蹴って大きく距離を取った。



「まさか三枚目とは。

 情報と違いますね。

 ホノカ様は同時に二枚までしか結界を張れなかったのでは?」


「それはフィナちゃん情報?

 まさかと思うけど、前から決闘を挑むつもりだったの?」


「どうでしょう。

 単に愛しい方の情報は何でも知りたかっただけかもしれません」


「じゃあ私もフィオちゃんの事教えてほしいな♪」


「初手を躱した方法ですか?

 ホノカ様が私のものとなって下されば、全て教えて差し上げます」


「もう。フィオちゃんのイケズ」


「私実は、追うより追われる方が好きなのです。

 どうぞご自身の手で暴いてみせて下さい」


 油断無く隙を伺うフィオちゃん。

どうやら私の動きを待っているようだ。

先程のように、錯覚を起こさせるのが目的なのだろう。


 フィオちゃんが持つスキルは、【直感】と【収納】の二つだ。


 遅延結界の発動を察知したのは【直感】の効果だろう。

けれど、あのタイミングで避けるには転移が必要なはずだ。


 少なくとも私が結界を張った時点で、フィオちゃんは間違いなくそこにいたのだ。

幻術を使ったとかでも無い限り、身体能力だけで姿を消すには無理がある。


 ミアちゃんだってそこまでは出来ないはずだ。

いくら私がミアちゃんに比べて鈍いったって、決闘相手の気配を見逃す程気を抜いていたわけでもない。


 考えられるとしたら、魔術による転移か隠された三つ目のスキルってところかしら。


 後は、【収納】の使い方を工夫してるとか?


 可能性はある。

フィオちゃんなら転移代わりに使う方法を見つけ出していたとしてもおかしくはない。


 仮に転移が使えるとして、フィオちゃんの勝ち筋は何があるだろう。


 先ず私が自身に纏っている結界は突破出来ないようだ。

少なくとも、咄嗟に取れる手段では。


 なら私自身に解除させるしかあるまい。

先程フィオちゃんが攻撃を仕掛けてきたタイミングでは、遅延結界と重力結界の二つを発動させていた。


 上限が二つだと聞いていたフィオちゃんは、それで隠れるのを止めて攻撃を仕掛けてきた。


 その辺り、フィオちゃんは相変わらずだ。

折角私の目を誤魔化す事に成功したのに、油断して姿を晒してしまった。


 まあ、私も人の事は言えないけども。


 とにかく今がチャンスだ。

今度はどうやって避けたのか、必ず突き止めてみせよう。



「踏ん張って。フィオちゃん。

 少し加減無しでいくから」


 私は自分自身も含めた広範囲を重力結界で覆い尽くした。



「!?」


 フィオちゃんの姿は既に目の前には無かった。

スキルも使って周囲を探ってみるも、どこにもフィオちゃんの気配は感じられない。


 ならこれ、やっぱり【収納】で何かしているのだろうか。

自分の体をスキルで収納した?

どうやって出てくるの?

さっきの遅延結界の件を考えるなら、同じ場所でなくても良いはずだ。


 これはマズイ。

フィオちゃんを引きずり出す方法が思いつかない。

かと言って、フィオちゃんも私の結界を破れない。

完全に硬直状態だ。

何か手を考えないと……え?



「ってぇ!!!

 なによこれぇ!?!?」


 私は思わず蹲る。

いつの間にか私は一糸纏わぬ姿になっていた。

荒野のど真ん中で、全裸で突っ立っていたのだ!



「フィオちゃん!!

 これは何の冗談よ!!」


 私は収納スキルで代わりの服を身に付けた状態で出現させた。


 まさかこんなところでも瞬間着替え術が役立つなんて……。



「フィオちゃん!

 真面目にやって!」


 私はやむを得ず重力結界を解いてみた。

案の定、フィオちゃんは眼の前に現れた。

その手には、見覚えのある布キレがぶら下がっている。



「私は真面目です。ホノカ様。

 私の力では、ホノカ様自身への干渉は叶いませんでした。

 なのでこうして服を奪わせて頂く事にします。

 これ以上盗られたくなければ、早めに降参して下さい」


「なにそれ!?」


「ご安心を。

 盗った分は後ほど新品のもので補填させて頂きます。

 十分な用意がありますので、必ずやお気に召して頂けるかと」


「そんな心配してないよ!?

 というか盗った服返してくれないつもりだったの!?

 しかもなんで新品の用意まであるの!?準備良すぎだよ!

 最初からそのつもりだったんでしょ!」


「この状況は想定しておりましたので。

 残念ながら、ホノカ様の結界を破る術がありません。

 ホノカ様に守りに徹されてしまえば、こちらには攻撃の手段がありませんから」


「ならこうすれば良いんでしょ!!」


 私は自身が纏う結界の厚みを増加させた。

これで【収納】の効果範囲外になるはずだ!

手を触れる必要が無いとは言え、距離には限界があるのだ!



「残念ですがそれでは防げません」


 フィオちゃんが指をパチンと鳴らすと、私の服は再び跡形もなく消滅してしまった。

いや、全部フィオちゃんの収納スキルに収まってるだけだけど!


 瞬間着替え術で新しい服を身に纏い、飛行魔法で空高く舞い上がった。



「へっくし!!」


 また!?

どういう事!?

まさかフィオちゃんまで飛行魔法使えるの!?


 再び服を身に纏う。


 結界もダメ!空もダメ!

いったいこんなのどうしろってのよ!?



「どうかお風邪を召されない内に降参を」


 この!絶対負けるもんか!!!

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