05-03.勝者の報酬
「それでどうしてこうなったの?」
「知らないわよ」
私とミアちゃんは、フィオちゃん&フィナちゃん&ダフネと向かい合っていた。
場所は何時ものアイちゃん空間だ。
だだっ広い荒野のど真ん中に、まるでこれから決闘でもしようかという雰囲気で向かい合っている。
いやまあ、本当に決闘するんだけども。
フィオフィナダフネチームが勝てば、三人を今すぐミアちゃんの恋人にするという条件まで付いている。
逆に私達が勝てば、フィナちゃんとダフネがコソコソするのは止めるという約束だ。
フィオちゃんの言い出したその勝負に、ミアちゃんとフィナちゃんはシブシブ顔で承諾した。
フィオちゃんはどうしてこんな事を言いだしたのだろう。
折角少し落ち着きかけていたのに。
それに私の強さを知らないのだろうか。
フィナちゃんから色々聞いてるんじゃないの?
「それで、フィオレ。
あなたはどうするのですか?」
審判役のアイちゃんが変な質問を投げかけた。
「フィオレはリスクを負っていません。
それでは賭けが成立しません」
なるほど。
フィオちゃん達が負けた場合、フィナちゃんとダフネはデメリットが生じるけど、フィオちゃんは何も条件を設定してないのか。
「お師匠様。
私は今回助っ人です。
勝利時にのみ報酬を頂くのです。
どうかそのようにお考え下さい」
言い訳まで用意してあるとは。
流石商人。抜け目ない。
「親友の危機に対価を要求するのですか?」
アイちゃんはフィオちゃんの考えに不満があるようだ。
何故かアイちゃん、友達って言葉に敏感だものね。
確かにアイちゃんなら嫌いそうな考え方だ。
「ならば、ミア様。
私が負けた場合、何を望まれますか?」
「……必要ないわ」
まあ今のミアちゃんが何か要求するわけないよね。
そんな気分じゃないだろうし。
「フィオちゃん。
フィオちゃんが負けたらフィオちゃんは私のね。
ミアちゃんの恋人は諦めて」
「ホノカ!?
何を言ってるの!?」
「ホノカ様……本当に変わられましたね。
その条件を承諾致します」
「待ちなさい!」
「ミア、わざと負ける事など許しません。
全力で挑みなさい」
「嫌よ!そんなの!
ホノカ!なんでそんな事言うのよ!
そんな条件あんまりよ!」
「なら私とミアちゃんも別チームにしようか。
勝った人の総取りね」
「突然どうしたってのよ!?」
「私、考えたの。
どうしたらミアちゃんを独り占め出来るかなって。
それで気付いたんだ。
ミアちゃんの欲しいものは全部私が手に入れてあげたら良いんだって。
それから、少しずつ貸し出してあげる。
これからは全部私がコントロールしてあげる。
フィオちゃんもフィナちゃんもダフネも、全部私のものにするわ。
何ならアイちゃんだって、私が手に入れてみせる。
そうすれば、ミアちゃんは私を見るしか無くなるでしょ?
皆の事が欲しければ、私に頼むしか無くなるんだもの。
私をいっぱい愛して満足させてくれたら、皆にも少しずつ順番を回してあげる。
ふふ♪とっても良い考えだと思うでしょ?
これでミアちゃんは面倒な人間関係に悩む事も無くなるんだから♪」
「あなた……ほんとに何を言って……」
「面白そうですね。
そういう話ならボクも参加しましょう。
ボクが勝ったら、全員色恋の事は忘れて下さい。
ボクの友として、ボクと共に生きて下さい」
「ダメだよ、アイちゃん。
それでは誰も乗ってこないよ。
皆降りちゃったら、賭けが成立しないでしょ」
「私、降りるわ。
こんな馬鹿げた決闘なんて」
「それもダメだよ、ミアちゃん。
今更ミアちゃんが降りられるわけないでしょ。
今ミアちゃんが降りたら不戦敗だよ?
フィナちゃん、今すぐ私かミアちゃんの恋人だよ?
そんなの、グラートさん達に申し訳が立たないでしょ?」
「アイの時と話が違うじゃない!」
「アイちゃんの参戦はまだ認められてないもん」
「そんなの屁理屈よ!」
「ミアちゃん、そんなに自信が無いの?
私に勝って、黙って従えくらいの事が言えないの?
私、今みたいに悩んでウジウジしてるミアちゃんなんて見たくないの。
何時ものミアちゃんに戻って欲しいの。
だからお願いね、ミアちゃん。
私達全員負かして、何時ものミアちゃんに戻ってね♪」
「何よそれ!!強引すぎよ!!」
「ミア、観念して下さい。
珍しくホノカが強い我欲を示したのです。
最愛の者の覚悟を受け止めてみせなさい」
「くっ!」
「これより、ミア対ホノカ対ちびっ子トリオの決闘を執り行います。
敗者は勝者に絶対服従。
取り決めはその一点のみです。
間違いなく履行される事をこのボクが確認致します。
ご存知の通り、ボクは約束を決して違えません。
それでは皆さん、配置について下さい」
「嫌よ!!!!
嫌だってば!!そんな勝負認めない!私降りる!
どうしてそんな意地悪するのよぉ!
私がホノカに勝てるわけ無いのに!」
ミアちゃんが蹲ってしまった。
ミアちゃんは一度私を決闘で負かしているのに。
そんな事も忘れてしまったのだろうか。
「アイちゃん。
構わないから続けて」
「待って!
私も!私も降りる!
こんな状況で戦いたくなんてないよ!」
今度はフィナちゃんが降参を宣言した。
フィナちゃんはミアちゃんに駆け寄って抱きしめた。
「フィオちゃんはどうする?
ダフネと二人で私に挑んでみる?」
「はい。勿論です。
そもそも私、負けるつもりはありませんから」
「ダフネ」
「やめる」
「ミア」
「なくの」
「いや」
ダフネもそう言って、フィナちゃんと一緒にミアちゃんを抱きしめた。
「なら私達で決めよっか」
「ええ。勝者は総取り。
条件に変更は無しです」
「ボクが言うのもあれですが、あなた達鬼ですね。
この光景を見て少しも心が傷まないのですか?」
「こんなチャンス逃せないもん。
アイちゃんの約束にはそれだけの効力があるんだから」
「右に同じです。
それにお師匠様ならば、私の自信の根拠についてもご存知のはずです」
「……まあ良いです。
ボクも一度口にしてしまいましたからね。
良いでしょう。最後まで付き合います。
それでは始めて下さい」
アイちゃんの若干投げやりな宣言で、私とフィオちゃんの決闘が始まった。




