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04-42.トントン

「へぇ~。

 本当に連れてくるとはね。

 しかも契約まで結んでいるのかい?

 これは驚いたね。一体どういう風の吹き回しだい?」


「何も聞かずあなたも契約なさい!」


「……」


「……」


 無言で見つめ合う大精霊様達。

周囲には強烈な緊張感が漂っている。

というか、魔力がもの凄い勢いで溢れ出している。

完全に一生即発ってやつだ。

私達は逃げ出すべきじゃないだろうか。

そう思ったのも束の間、膨らみきった緊張感は弾けて割れるように霧散してしまった。



「……信じよう。他ならぬお前さんの言葉だ」


「流石ね。元同僚」


「お前さんは相変わらずだな」


「そうでもないわ。

 新しく友達も出来たもの。それも二人も」


 あれ?

もしかして私の事も友と認めてくれてるの?



「あっはっは!そりゃ目出度いねぇ!

 それで?名前はなんて言うんだい?」


「リコリス」


「ふっ。良かったじゃないか。

 お前さんにピッタリの可愛らしい名前で」


 元のシルフも悪くないけどね。


 あれ?

今更だけど、シルフとノウムって……え?

先代守護神って私達の世界と何か関係があるの!?



「あなたも貰うと良いわ。

 案外悪くないわよ、ホノカとの契約も」


 そう思ってくれてたんだ!?

相変わらずツンツンしてるからわからなかった!!


 スーちゃんもそうだったけど、大精霊を強制的に心地よくさせる作用でもあるのだろうか。



「嬢ちゃん。

 頼んで良いかい?

 さっきは断っちまったが、こいつ、リコリスがこう言うってんなら話は別だ。

 リコリスにとってはそうでもないようだが、私にとっちゃあ大切な盟友なんだ。

 だから、私も仲間に入れてくれるかい?」


「はい。喜んで。

 アネモネ様と、そうお呼びしても宜しいでしょうか?」


「アネモネ。

 そうかいそれが私の名なんだね。

 良いだろう。この契約、受け入れよう……なんて言うまでも無いみたいだね。

 なんだいこれは。

 あのお方ともまるで別物じゃないか」


 アネモネも強制上書き契約に驚いているようだ。



「それじゃあ、早速移動するわよ。

 アイテル!ホノカ借りてくわよ!」


「させるわけ無いでしょう!

 何勝手な事を言っているのですか!」


「ごめん、アイちゃん!

 少しだけだから!」


「ホノカまで!?」


 私が声をかけた事で一瞬アイちゃんに隙が生じた。

その間に、私とアネモネだけを連れて再び谷底に転移するリコリス。



「みんな~揃ったのね~」


 谷底に戻ると、既に魔王様が連れてきていたらしきスーちゃんが、嬉しそうにリコリスとアネモネの下に駆け寄った。



「あんた!

 何勝手に出入りしてんのよ!

 ここは私の隠れ家よ!!」


 スーちゃんをスルーして魔王様を怒鳴りつけるリコリス。

魔王様、事前に言ってなかったんだ……。

というか、一度来たことがあるとは言え、神の目すら誤魔化す秘密基地に自由に出入り出来る魔王様は流石だね。



「時間がありません。

 すぐに準備を」


 魔王様はそんなリコリスに取り合う事もなく、私をどこからか運び込んだベットに導いた。



「えっと?」


「寝て下さい。

 全員。今すぐ」


「いや、そんな事いきなり言われても……」


「ご安心を。

 術で眠らせますので」


 問答無用で私達をベットに放り込み、自らも私の足元に潜り込んだ魔王様。

直後、私の意識は眠りに落ちていった。




----------------------




「シルフ!ノウム!

 まさかこんなに早く再会出来るなんて!!

 魔王君!君は本当に優秀だね!

 チビスケなんて言った事は謝るよ!」


 感激したローちゃんが、リコリスとアネモネを纏めて抱きしめた。



「「クロちゃん様!?」」


 二人は今の今まで半信半疑だったようだ。

アネモネはともかく、リコリスには魔王様がガッツリ匂わせていたはずなんだけど。


 あれ?

私、普段の姿になってるの?

魔王様が道を広げたのかな。


 これ大丈夫なの?

今の私、こっちでの出来事も全部思い出しちゃってるよ?

元の世界に戻った時、ここでの事全部覚えたままになっちゃうんじゃない?



「ご安心を我が主。

 記憶は持ち出せません。

 今の主は幻影に過ぎませんから」


「ふむふむ。

 これがホノカの本来の姿なんだね」


 いつの間にか私の側に近づいていたローちゃん。

両腕にはリコリスと、何故か幼くなったアネモネを抱え込んだままだ。



「がっかりした?」


「まあ、正直ね。

 私、ロリコンだから」


 本当に正直なこって。



「ローちゃんって向こうの人なの?」


「今はね。

 けどその質問はまたの機会にとっておこうよ。

 どうせ外に戻ったら忘れちゃうんだし」


「そうなんだけどさ。

 気になるじゃん。

 今はって事は、神様やってた時は違ったの?」


「うん。あの世界のアニメとか好きで見てただけだもん。

 それで、どうせ生まれ変わるなら行ってみたいなって」


 なるほど。

神様辞めた後に、私の前世の世界に転生していたのか。

と言うか神様ってそんな事出来るんだ……。

アイちゃんは知らないみたいだけど、へーちゃんは知ってたのかしら。


 あれ?

ローちゃんっていつ転生したの?

今は二十代前半くらいのお姉さんって感じだけど。



「タイミングとか時間とか考えるのは止めたほうが良いよ。

 それこそ、今考えるだけ無駄だからね」


 まだ何も聞いてないのに。

ローちゃんは思考読めないはずだけど。



「顔に書いてあったよ。今もね」


 なるへそ。



「先ずは一つ。

 約束は果たしました。

 これでホノカ様と僕は失礼させて頂きます」


 そうだね。

折角の再会だし、私達は空気を読んで御暇させてもらおう。



「うん。ありがとう。魔王君。

 お陰でこの娘達とのパスも繋ぎ直せたよ。

 まあ、今はまだホノカを介してこっそり忍ばせたものに過ぎないけどね。

 とは言えこれで、夢の中なら何時でも会えるよ♪」


「程々に。

 気取られては意味がありません」


「うん。そうだね。

 だから悪いけど、もう一つの方も早めにお願いね」


「承知しています。

 それでは」


 魔王様がパチンと指を鳴らすと、再び私の意識は遠のいていった。

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