04-36.かたくな
「まお、メレク様」
「様は要りません。ホノカ様」
「私も要らないで、要らないよ。メレクさん」
「さんも要りません。ホノカ様」
自分は直そうとしないくせに。
「……メレクって一度決めたら引かないタイプ?」
「単にホノカが真の主と認められていないだけでは?」
認められたら素直に頼みを聞いてくれるって事?
でもそう言うアイちゃんも様付けで呼ばれてるよ?
アイちゃんの事だから、単に気にしてないだけかもだけど。
「どうかお気になさらず。
ホノカ様の資質に疑念を抱いているわけではありません。
僕はただ、敬愛するアイちゃん様に教えて頂いた言語を大切にしているだけなのです」
なるへそ。
少しでもスタンスを崩したくないのか。
つまり、アイちゃんガチ勢の方でしたか。
「アイちゃん、何でこんな良い子放ってたの?
何時も側においてあげたら良かったじゃん」
「別に放っていたわけではありませんよ。
むしろメレクとは頻繁に会っている方です」
そう言えば度々私達から離れてたりするもんね。
そういう時にでも会ってたのかしら。
「前回お会いしたのは一万二千十二日と三時間五分前です。
お忙しいのは存じていますが、その認識には異議を申し立てます」
細かっ!!
恋しすぎてめっちゃ指折り数えてたんじゃん!!
えっと、大体三十二、三年前って事かな!?
間隔が神様感覚!!
もしかしてそれで私達についてくる事にしたの?
アイちゃんが目当てだったの?
私を頑なに主と呼ぶのもそれが理由なの?
アイちゃんもアイちゃんで、メレクの事を特別大切には思ってはいるようだし、これ実質両思いではなかろうか。
つまり私は当て馬ってやつなのかしら。
いや、何か違う気もする。
別に私がどっちかに恋してるわけでも無いし。
というかこれ、想像していたより不味い状況では?
私が契約を上書きした事で、メレクはアイちゃんとの大切な繋がりを失ってしまったのだ。
内心、私に対して嫌悪感等を持っていたっておかしくない。
「ご心配なく。
僕が不満に思うべき相手はアイちゃん様です。
ホノカ様に思う所はありません」
「え?
なんで今……」
「おそらく契約の繋がり故でしょう。
ホノカ様が僕に向けた感情はなんとなく伝わってきます」
「その……ごめんなさい……」
「謝る必要などありません。
僕を理解しようとしてくれたが故だと理解しています」
「えっと、ありがとう」
「こちらこそ。
ホノカ様のお陰でアイちゃん様のお側に置いて頂く口実が出来ました」
魔王様めっちゃ良い人だぁ!
何かすっごい気遣ってくれるし!
今まで側にいなかったタイプの人だ!!人じゃないけど!!
「メレク、改めてよろしくね!」
「はい。我が主」
私も魔王様の主として相応しくなろう!
アイちゃんの下に帰りたくないと思われるくらい頑張ろう!
なんかすっごいやる気出てきた!!
「やはり今すぐホノカをボクのものにするべきでしょうか。
そうすれば、ホノカごとメレクを取り戻せますし」
あれ?
アイちゃん不貞腐れてる?
何か声音がほんのり不機嫌だよ?
「ホノカは私のよ」
「何れミアもボクのものになるのですから問題ありません」
「ふふ。良いわ。そういうの」
ミアちゃん、ほんと懲りないよね。
どうしてくれよう。
「ねえ、師匠とミア姉の言葉の意味違うよね?」
そうだよ、フィナちゃん。
ミアちゃんは恋人や伴侶的な意味だけど、アイちゃんのは神の眷属的なやつだよ。
使徒とか天使とか、多分そんな感じの。
「大した差では無いわ。
それより、そろそろ戻りましょうか。
少し長居し過ぎたもの」
「そうだね。
早くミアちゃんにお仕置きしなきゃだし」
「ホノ姉、頑張り方を間違えてると思うよ……」
正直自分でも自覚はある。
流石のミアちゃんでも、疑似寝取りプレイには懲りたと思ったのに、喉元すぎればなんとやらだ。
こういうの、暖簾に腕押しとも言うのかな。
馬の耳に念仏?
「フィナちゃん、また協力してくれる?」
「え~嫌だよ~。
私別に、泣いてるミア姉見てても平気なわけじゃないんだよ?」
「奇遇だね。私もだよ。
最初はゾクゾクくるんだけど、段々耐えられなくなってくるよね」
「一緒にしないでよ!」
ゾクゾクはしないか。まだ。
でも多分、フィナちゃん素質あると思うよ?
さっきミアちゃん虐めてる時……いや、考えるまい。
どう考えても、私が無理やり目覚めさせたやつだし。
本来のフィナちゃんは心優しい天使なのだ。
さっきは少し魔が差しただけ。そうに違いない。
二度とあんな事に巻き込まないようにしなきゃ!
「でもヴィー達だと効果薄かったのよね。
アイちゃん、またやってみる?」
「嫌です。
メレクとやって下さい。
そのまま親睦でも深めたら良いんじゃないですか?」
なんてツレナイことを。
それは私より、魔王様が可愛そうだよ。
いやでも、違うか。
これ多分不貞腐れのやつだし。
自分で誘導しておいて、魔王様取られたのめっちゃ根に持ってるじゃん。
「流石にそれは時期尚早だから、スーちゃんと挑戦してみようかな。
少し成長してもらえば、良い感じに効果ありそうだし」
問題は私の心の方かもしれない。
スーちゃん美人過ぎて、うっかり惚れちゃうかも。
「ホノ姉、やっぱあれ禁止。
ホノ姉もミア姉以外とイチャイチャするのはダメ。
それじゃあミア姉の事叱れないでしょ。
それに、ミア姉を傷つける為に他の子と仲良くするなんて良くないよ」
「はい……仰るとおりです……」
ミアちゃんを罰する為だからって、私がミアちゃん以外とそういう事してたらダメだよね……。
そもそも私も抵抗はあったし、やっぱりこの方法は封印する事にしよう。
なら今晩は空の上に放置してみようかな。
不可視の結界に閉じ込めて。
「ホノカ!待って!今何考えたの!?
背筋がゾワゾワしたわよ!?」
流石ミアちゃん。
本能的に感じ取ったのか。
魔王様みたいにパスが繋がってるわけでもないのに。
これは流石にやめておくか。
いくらなんでも可愛そうだし。
そういう恐怖心を利用するのはなんか違うよね。
ぐぬぬ。
こうやって甘い事ばかり考えてるから、何時までも進展が無いのかなぁ。
かと言ってあまり酷い事はしたくないし……。
なんか私、どうやってミアちゃん虐めるかばかり考えてるなぁ。
嫌だなぁ。こういうの。
押してダメなら引いてみる?
暫く無視してみるとか?
いや、そんなの論外だ。
そうだ!
逆にいっぱいイチャイチャしてみよう!
私がどれだけミアちゃんを想ってるのか見せつけて、罪悪感を植え付けよう!
きっとその方が私も幸せになれるだろうし!
うん!良い考えな気がしてきた!
「……ホノ姉。何思いついたの?」
「フィナちゃん?
何でビビってるの?」
「だってホノ姉、なんか嬉しそうだし。
今度はどんなお仕置き思い、あ、いや!なんでもない!
やっぱさっきの質問無し!私は何も聞かないよ!
だから見えないところでやってね!」
「違うってば!
何も酷いことなんてしないよ!」
今はミアちゃんの前だから詳細言えないけど!
こういうのは言葉にしないで伝えないと意味ないし!
「うっうん!そうだよね!
ホノ姉の事信じてるから!」
それ明らかに信じてないじゃん!!
益々ビビってるじゃん!
いったいフィナちゃんの脳内私はどんな怖い事してるの!?
「ホノカ様は折檻がご趣味なのですか?
僕、痛いのは嫌ですよ?」
待って!魔王様!
今話しに入ってこないで!
ややこしくなるから!!
「ダメよ、ホノカ。
ああいう事をして良いのは私にだけよ」
ミアちゃん!全部わかってるんでしょ!
ミアちゃんはパスなんか無くても、魔王様以上に私の考えてる事察せるはずだよ!!
「はいはい。何時までも騒いでないで戻りますよ」
「待って!せめて誤解を!」
アイちゃんは私の言葉を待つ事なく、私達をスーちゃんの泉へと転移させた。
その後は案の定、誰も私の弁明を聞こうともせずに解散してしまった。
ちくせう。後でミアちゃん虐めてやる。




