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04-22.こうかん

「ヴィーは大精霊や大戦の事って誰に聞いたの?」


『水の大精霊よ』


 順当なとこだったわね。

まあ、そりゃそうか。



「その人とは親しいの?」


『まあ、ざっくり言えば母親みたいな存在なのよ』


 昔話だけでなく、ヴィーに精霊達の事を教え込んだのはその水の大精霊なのか。



「どうりで。

 あの者は大雑把でいけません」


『ああ、まあうん。

 どうりでってのは引っかかるけど、否定できないわね。

 そうね。でもそっか。

 そう言うって事は、アイもあの方と親交があったのね』


「ええ。私個人としても、水の大精霊とは良好な関係を築けていると自負しています」


 え?

その人、世代交代強要して良いの?



『そうなのね。

 全然知らなかったわ。

 話をしていたら、何だか久しぶりに会いたくなってきたわね』


「お連れしましょうか?

 どうせなら、現大精霊の立場からの話を聞いてみるのも良いかもしれません。

 ホノカの疑念もそれで晴らせるやも」


 別に疑念って程じゃないけどね。

ただ不安なだけだ。

大切なヴィーとキアラが苦しまないようにしたいだけだ。



『是非お願いするわ!』


 めっちゃ食い気味ね。

ヴィーったら、そんなに水の大精霊様が好きなのかしら。


 いやいや、流石にお母様にまで嫉妬するのは無しだろ。

少し落ち着こう。

契約の話をしていたせいで、少々過敏になっているっぽい。



「ミアちゃん、どうする?」


「別に良いわよ。

 付き合ってあげましょう。

 相変わらず旅を急いでるわけでも無いんだし」


 まあ断る理由も無いか。

どうせまた、この場所に戻してくれるんだろうし。



「大精霊!どんな人なのかな!

 会えるの楽しみだね!」


 フィナちゃんも賛成のようだ。



「う~」


 キアラは何やらうめき声を上げている。



「どうしたの?」


「こわ~」


「水の大精霊に会うのが?」


「うん~」


「無理もありません。

 風の大精霊は気性が荒く人望がありませんからね」


 なるほど。

キアラにとっての身近な大精霊はそういう存在なのか。


 というか、そんなのを私の契約精霊にしようとしたの?

力が必要だったからって、流石に手段選ばなすぎじゃない?

あの頃はまだ、アイちゃんと秘密を明かし合う前だったけども。


 それはそれとして、この世界の情報を一挙に集めているであろう風の精霊達の親玉が、そんな問題の有りそうな感じで大丈夫なのだろうか。


 風の精霊達は、各地の精霊達とも今尚情報を共有しあっているはずだ。


 実際、ヴィーもたまにやり取りをしている。


 何か妙な思想の流布とかしてないよね?

アイちゃんに排斥されそうになったら、アイちゃんやキアラの悪評をばらまくとかしてこない?


 実は一番敵に回しちゃいけないタイプだったりしない?



「ご心配なく。

 性質に難があろうと、愚か者ではありませんから。

 かの者が世界やボクを敵に回す事はありえません。

 情報通というのは、相応に弁えているものなのです。

 まあそれ故に、多少ボクの事を舐めているきらいはありますが」


 なるほど。

敵に回してはいけない相手を心得ているのか。


 それで何でアイちゃんを舐めているって話になるの?

アイちゃんって、自分を虚仮にする相手を放っておくタイプにも見えないよ?


 ああ、だからこそか。

そのアイちゃんが実際に風の大精霊を野放しにしているのだ。


 なら、アイちゃんにとって風の大精霊は有用なのだろう。

少なくとも、多少反抗心がある程度で刈り取ってしまうわけにはいかないのだろう。


 そういう現状を理解しているからこそ、舐めているという状態に落ち着いているわけだ。

何と言うか、小狡いというか、肝の小さそうな御仁なのかもしれない。



「何だか面白くないわね。

 キアラが成り代わってやりなさいな。

 私達も協力するわ」


「うん!

 やる!」


 何故かミアちゃんとキアラが燃えている。

アイちゃんがバカにされていると知って、苛立ちを覚えたようだ。



「穏便にだよ、ミア姉」


 フィナちゃんって、魔物相手なら格上でも突貫しちゃうのに、基本的に平和主義なのよね。

敵ではない相手とは、とことん争いを回避したがるようだ。

いやまあ、勿論訓練とかは別だけども。

ミアちゃんやアイちゃんとは積極的に組手や試合もしてるし。


 たぶんフィナちゃんにとって、それが正義なのだろう。

力は振るうべきときに振るうものであって、誰彼構わず押し付けるものではない。

それはそれとして、強くなり、競い合う事も大好きなのだろう。


 たぶん、グラートさんもそんな感じなのだろう。

そこまで長いこと一緒にいたわけでもないけど、グラートさんの優しさは私だってよく知っている。

本当によく似た親子だ。


 フィナちゃんが大人になったら、グラートさんと同じように近所の子達を気にかけてあげるのかもしれない。


 何れはグラートさんにとってのミアちゃん達や、ベルタちゃん達のような教え子みたいな存在が、フィナちゃんの前にも現れるのかもしれない。


 なんだかそれってとても素敵な事に思える。

フィナちゃんなら、きっとそうするだろうとも。


 神の孫弟子となったその子達は、きっと昔のミアちゃん達以上に強くなるのだろう。


 アイちゃん達の目指した、外敵に打ち勝てる強い人類も、そうして育まれていくのかもしれない。


 アイちゃんがフィナちゃんに目をつけた事も、改めて理解できた気がする。

少し強引過ぎる勧誘方法だったけど、きっと必要な事だったのだろう。


 神様って未来が見えてるのかしら。

それとも、フィナちゃんの力だけでなく、そういう素質も見抜いたからこそなのかしら。


 何にせよ、フィナちゃんを見出したアイちゃんは流石だ。

もしかしたら、へーちゃんもかな?

きっとそんな二人が守る今のこの世界は、大戦になんて繋がらない筈だ。


 私達も出来る限り力になるつもりだしね。

ううん。出来る限り程度じゃダメだよね。

精一杯力を尽くすとしよう。


 別に世界を守りたいとかって高尚な想いは無いけど、アイちゃん達が喜んでくれるなら力になりたいと思えるもの。


 ミアちゃんだってきっと同じはずだ。

アイちゃんがバカにされたと知って、苛立ってしまうくらいだもの。


 きっと水の大精霊と会うことは、私達がこの世界をよく知るためにも役立つはずだ。

私もなんだか会ってみたくなってきた。

そんな理由が無くたって、ヴィーのお母様でもあるって話だもんね。



「それじゃあ、行ってみようか。ヴィー。

 アイちゃん、お願いね」


「ええ。任されました」

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