04-19.まだまだ
「ね~お師匠様~?」
「今はアイちゃんです」
そうだね~。
補習終わったもんね~。
でもね~何ヶ月も呼び続けてると癖になっちゃうんだよ~。
「アイちゃん」
「はい。なんでしょう?」
「もしかしてアイちゃん空間って歳とらないの?」
「何故そう思ったのですか?」
何だか試すような気配の質問が返ってきた。
こういう時、答え次第であからさまにがっかりしてくるから答えづらい。
そういう教育の仕方良くないと思うの。
「えっと……髪が伸びてないから」
「はぁ~」
ごめんて。そんなため息つかないでよ……。
こういうのなんて言うんだっけ?モラハラ?
「今更気付いたのですか」
「……ごめんなさい」
自分でも鈍いと思うけどさ……。
というか、そう返すなら何でさっきの質問したん?
他の回答だったら優しくしてくれたの?
「観察力が足りていませんね」
「……はい。
ちなみに……参考までになんだけど……」
「他に気付ける要因ですか?」
「うん」
というよりアイちゃんが満足する答えを知りたいなと。
「先ず真っ先にボクの気持ちを考えてほしいものですね。
ボクはホノカ達の寿命を無為に削るつもりはありません。
かと言ってホノカが十分な力を得るには生半な時間では足りないでしょう。
ですからああして異空間を用意したのです」
「え?
それって、私の為にあの空間を作ったってこと?」
「ええ。そう言っているではないですか」
「ありがとう!お師匠様!」
「……精進してください。
あの空間はホノカの真似た空間とは様々な点で異なっています。
よくよく観察して参考にしてみてください」
「うん!」
加齢を止める効果以外にも、魔物を倒した時と同じ成長効果もあるのよね。
後なにがあるんだろう。
正直まだ見当もつかない。
けど、アイちゃんのこの様子ならまだ何か特殊効果があるっぽい。
私のちっぽけな異空間は、サイズだけでなく機能も全然足りていなかったらしい。
だと言うのに、私はあろうことかそれを得意気になって自慢していたのだ。
笑顔で褒めてくれたアイちゃんって、実はめっちゃ寛大なのではなかろうか。
「次は私の番よ。アイ」
「私も!私も!
早く転移教えてほしいの!」
「勿論構いませんよ。
三人まとめて相手してあげましょう」
「え゛!?
私も!?」
「何を言っているんです?
当然じゃないですか」
「私まだ出てきたばっかだよ!?
少しくらい休ませてよ!?」
「問題ありません。
ボクの異空間には疲労回復効果もあります。
ホノカの体はいたって健康なはずです」
早速一個判明した!
道理で連日訓練に明け暮れても倒れたりしないわけだ!
「そういう問題じゃないよ!?
精神的な疲労の話だよ!?」
「数時間置きに適度な休憩は与えているでしょう?」
「その程度で完全に回復するわけないでしょ!?
今の私に必要なのはミアちゃんとのイチャイチャタイムだよ!」
「ホノ姉?私は?」
「フィナお姉ちゃんに甘やかされるのも良いよね!」
「えっへっへ~しょうがないな~」
可愛い。
「ボクも散々甘やかしてあげたではないですか。
膝枕したり、手を繋いで散歩したり。
あげく、背中まで流させて」
それは!!
「その話、詳しく聞かせてもらおうかしら」
あ!いや!その!
ミアちゃんが怒るような事は何もしてないよ!?
「ホノ姉、好き放題しすぎだよ……。
ミア姉が見てないからって」
そういう意味じゃないってば!
ちょっと寂しさ紛らわせてただけだって!
「ホノカ~うわき~?」
キアラまで!違うってば!
『浮気……そう言えなくもないかしら』
「ちょ!?
何言ってるのヴィー!?」
ヴィーは私と一緒に補習受けてたから知ってるよね!?
何もやましい事なんてしてないよ!?
私の味方はダフネだけなのね!
ダフネは!?寝てる!いつも通り!
『アイにも散々甘えていたもの。
あれはフィナにお姉ちゃ~んって甘えている時と同じノリだったわ』
「つまり私から見たらホノ姉は浮気したと言えるのね」
「言えないよ!
そもそもフィナちゃんとしてる事は浮気じゃないよ!
それにミアちゃんとしか出来ない事は他の誰ともしてないよ!」
「ホノカ。あなた都合が良すぎやしないかしら?
私がフィナとホノカの接し方に口を出さないであげているだけで、一般的には十分に浮気の範疇よ?」
「それ言い出したらミアちゃんとフィナちゃんもでしょ!
しょっちゅう抱き合ってるじゃん!」
「つまりホノカも、わかっていて見逃してくれていたのでしょう?」
「それは!……そうかもだけど……でも……浮気を許してるわけじゃないし……」
「ただし、それはフィナに限った話よね。
アイとはまた別に話し合う必要があるとは思わない?
具体的には、私とアイの逢瀬も認めるべきだと思うのだけど」
「何でそんな話になるの!?」
「最低でも、ホノカとアイがした事くらいは許してくれるわよね?」
「うぐっ……ダメ……ダメだよ!そんなの!
ミアちゃんは私のだもん!私だけのだもん!」
「ホノ姉、恋人って言うより子供みたい……」
フィナちゃん!?
「少しばかり開き直りすぎじゃないかしら。
末っ子扱いを受け入れるのは構わないけど、見た目相応の振る舞いも忘れてはダメよ?」
あれ!?
なんかガチで心配されてる!?
「もう話は良いですか?
良くなくても連れていきますね。
後は休憩中にでも好きに話し合ってください」
結局私も、呆れた様子のアイちゃんによって、再び出てきたばかりの修行空間に取り込まれてしまうのだった。




