04-07.ふらふら
「本当に良かったのかなぁ」
「まあ良いんじゃない?
どうせフィナならすぐよ」
「まさか全員審査も無しにAランクなんてね」
私達が登録受付の窓口に向かうと、かなり戸惑った様子の受付嬢さんにそう言い渡されたのだった。
あのユスラとかいう女性が関係しているのだとは思う。
ここのギルド支部では相当名前が通っていたようだ。
問題児としての可能性が高そうだけど。
何にせよ、あのユスラをあっさり無力化したお陰で私達の実力は認められたようだ。
ミアちゃんはともかく、フィナちゃんはついでで上げるには本来のランクと乖離がありすぎるけど。
というか、基本的なシステムはまんまアルティエスタのと同じだった。
もしかしてギルド関係もアイちゃん達の仕込みなのだろうか。
人間に力を付けさせたいって話だし。
それにアイちゃんが産み出した異界には、魔物達を倒した時と同じように力を増す仕組みがある。
そもそも魔物を産み出したのも、アイちゃん、もしくは先代の神なのかもしれない。
「取り敢えず今日の宿でも探そっか。
一応、アメーリア商会が手配してくれるとも言ってたけど、何時までも甘えているわけにもいかないもんね」
「そうね。
その方がかえって気楽かもしれないわね。
なんか妙な奴に目を付けられてしまったようだし」
そっちの意味でも、アメーリア商会に迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
「あのおねーさん、本当に大丈夫なの?」
「うん。もう術は解除したよ。
むしろ本人は何が起こったのかすらわかってないんじゃないかな」
「……そっか。時間が止まってたから。
そんなのどうやって……」
「術を使わせなければ良いのよ。
それか囚われないよう、常に動き続けなさい。
ホノカの反応速度程度なら、何れフィナにも追いつけなくなるわ」
「なるほど……流石ミア姉」
逆に私自身もそれ以上の手出しは出来ないから、最強の術ってわけでもないんだけどね。
精々逃げる事くらいにしか使えないはずだ。
いやまあ、異空間の更に外側に真空の空間でも作ってから異空間を解除するとかって手もあるけども。
「ところで宿って本当にこっちで合ってるの?」
「さあ?
こんな事ならギルドで聞いておけばよかったわね。
あの女の事なんか気にする必要もなかったみたいだし」
どうやら適当に歩いていたようだ。
ミアちゃんなら初めて来た場所でも、なんとなくで当たりをつけられるのかと思ってた。
いやまあ、それくらいのあてはあるのかもだけど。
なんか足取りは自信満々だし。
「フィナちゃんはどう?
探検してて、気になる所とかでも」
「えっとね~」
それから暫くミアちゃんとフィナちゃんであ~だこ~だ言いながら街を練り歩き続けた。
二人がかりにしては随分と時間をかけて、どうにかその日の宿にたどり着いた。
この子達、二人で相談しちゃうとかえって時間がかかるのではなかろうか。
それぞれ押しが強いから、互いに自分の行きたい方向を提案し合って中々結論が纏まらなくなる。
結果、あっちこっち歩き回る事になってしまった。
今度からどっちか一人に任せる事にしようかな。
いやでも。やっぱこれで良かったのかも。
なんだかんだ、結局良い宿を見つけられたんだし。
何より、皆で笑いながら町を練り歩くだけでも楽しかったし。
「やっふぅ~!!」
フィナちゃんが奇声をあげながらベットに飛び込んだ。
マ◯オ?
「もう寝てしまっても良いわよ。
グラートには明日会いに行くと伝えておくわ」
「う~ん……ううん。
まだ寝ないよ。
お父さんとご飯行こ!
私お腹すいちゃった!」
フィナちゃんはそう言うなりベットから飛び降りて、早速部屋の入口に向かった。
どうやらすぐに行動するつもりのようだ。
確かにそろそろ夕食にはいい時間かもしれない。
折角宿にたどり着いたばかりだけど、もう少しだけ頑張るとしよう。
「随分と未練がましそうね」
私の視線もいつの間にかベットに吸い寄せられていた。
だってしかたないんだ。
長い船旅の間、揺れるベットでしか寝られなかったのだもの。
「大丈夫。行こっか、ミアちゃん。
またフィナちゃんに置いてかれちゃうし。
グラートさんにも頼まれてるんだもん。
フィナちゃんだけ先に行かせたらあんまり良くないよね」
「ふふ。そうね」
私達もフィナちゃんに続いて部屋を出た。
フィナちゃんは宿の前で待っていた。
私達は三人で仲良く手を繋いで歩き出す。
ダフネはまた私の腕に収まっている。
この子は抱っこが大好きだ。
「明日は買い物行こうね。
明後日はギルドかな?」
「依頼は任せておいて!
私がお姉ちゃん達の分までいっぱい稼いじゃうよ!」
「良いわね。
私達は後ろで見ててあげるわ。
フィナの初めての単独任務よ」
「本当にそれで良いの?
私達、フィナちゃんを任されてるんだよ?」
「良いの!
ミア姉もホノ姉も私が養うんだから!
そうしたら、二人とも私のでしょ!」
流石にヒモにはならないよ?




