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04-04.あまあま

「そろそろだっけ?」


「ええ。あと二日程で到着の予定だそうよ」


 私の大雑把な質問に、ミアちゃんが正確な答えを返してくれた。


 今は部屋にミアちゃんと二人きりだ。

ヴィーはまた海に潜っているし、フィナちゃんはグラートさんのところにいるはずだ。


 キアラとダフネは相変わらず二人で遊び回ってるっぽい。


 あの二人、立ち位置的にはライバルみたいな関係だと思うんだけど、そんな心配は要らなかったらしい。

今ではすっかり仲良しコンビだ。



「辺り一面海しか無いのに、どうやってそこまで正確に現在地特定してるんだろう」


「さあ?

 気になるなら、船乗りに聞いてみたらどうかしら。

 一緒に行ってあげるわ」


 もしかしてリハビリさせようとしてる?

男性恐怖症の。



「う~ん。

 別に良いかなぁ。

 もう船に乗ることは無いだろうし」


 今回の船旅で一生分乗ったもん。

どうせ飛行魔法やら転移やらも習得する予定だし。



「甘いわ。ホノカ。

 飛行魔法だって同じ話よ。

 長距離飛行中、どうやって現在地を把握するつもり?

 飛行魔法はただ習得するだけがゴールではないのよ。

 使いこなすには相応の準備と訓練が必要よ」


 うぐっ……たしかに。



「じゃあ、ミアちゃん聞いてきて。

 ミアちゃんだって飛ぶんだから必要でしょ?」


「私は必要ないわ。

 キアラとダフネが導いてくれるもの」


「なにそれずっこい。インチキだよ。

 怖くて自分で確認出来ないだけじゃん」


「ブーメランって知ってるかしら?」


「え?もちろん。

 投げたら返ってくるやつだよね。

 前世の世界でもあったよ」


「怖くて自分で確認出来ないのはホノカも一緒じゃない」


「……ごめん」


「ふふ。別に怒ってないわ。

 仕方ないわね。

 ほら、行きましょう。

 私が質問してあげるから、ホノカも隣で聞いてなさいな」


 そう言って手を差し伸べてくれるミアちゃん。

私はまだ少しバツが悪い気持ちを抱えながら、ミアちゃんの手を握った。


 ミアちゃんに手を引かれて話を聞いて回ってみると、船員さん達は快く教えてくれた。


 なにやら装置とかも使って実演して見せてくれたのだが、正直私は最後まで付いていくことが出来なかった。

後でミアちゃんに解説してもらおう。

なんかミアちゃんは理解出来てるっぽいし。


 そのまま何故か船内ツアーまで始まった。

こっちは結構面白かった。

それなりに長いこと生活してきた船だったけれど、まだまだ知らない部分も残っていたようだ。



「大砲とかは積んでないんだね」


「はっはっは!

 妙なこと気にすんだなぁ嬢ちゃんは!

 どうせあんなん海の魔物には効かんぜぇ!」


 案内してくれている豪快な船乗りさんが、大きな笑い声をあげた。


 意図せず呟きが聞こえてしまったらしい。

はずい……。


 まあでも、確かにその通りだよね。

あのタコクラーケンに打ち込んだって、文字通り豆鉄砲にしかならないだろうし。


 あれを仕留めるなら、大砲の弾サイズのガトリングでも用意しなければ、まともなダメージにはならないだろう。



「グラートさん以外にも、船守を務めている方はいらっしゃるんですか?」


「残念ながらおらんのよぉ!

 嬢ちゃんらはどうでい?」


「すみません」


「はっはっは!

 気にすんなぁ!

 嬢ちゃんらには窮屈でいかんじゃろ!」


 豪快な船乗りさんは、その後も気にした風もなく船内ツアーを続けてくれた。

まるで若い子が船に興味を持った事が嬉しいと言わんばかりに、終始楽しげに笑っていたのだった。





----------------------





 船内ツアーを終えて部屋に戻った私とミアちゃん。

他の子達はまだ戻っていないようだ。



「……もう少し頑張ればよかったなぁ」


「そうね。

 少なくともこの船にいる人達は皆良くしてくれるわ。

 折角時間があったのだから、部屋に閉じこもってばかりいないで少しでも仲良くしておけばよかったわね」


「うっ……そんなわざわざハッキリ言わなくても……」


「この期に及んでまたウジウジしてるみたいだから、こうして問題点を明確にしてあげているのよ。

 後悔するくらいなら今からでも動き出せば良いじゃない。

 まだ二日もあるわ。立ち止まるには早すぎるわよ」


「それは……わかるけど……」


「別に焦る必要は無いわ。

 ゆっくり広げていけばいいのよ。

 ここで出来なくたって、次がいくらでもあるのだから」


「結局甘やかしてくれるの?」


「ホノカだけ特別よ」


「本当に特別なやつだね。

 甘やかし過ぎたらダメじゃない?

 私って、割とサボる方だし」


「あら。自覚あったのね。

 そうよ。ホノカは元来そういう子なのよ。

 人一倍頑張らないと、努力すらままならないの。

 これも同じ話よ。

 自覚したのなら、改善するよう努力してみなさいな。

 一人で出来ないのなら、私が手を引いてあげるから」


「……ミアちゃんって尽くすタイプなんだね」


「いくらホノカに甘いからって、流石に怒るのよ?

 今更何言ってるのかしら?」


「ごめん……」


「謝罪より欲しいものがあるわ」


「少しだけだよ?」


 ミアちゃんが私に覆いかぶさってきた。

私はミアちゃんに押し倒されて、すぐ近くに見えるミアちゃんの唇に視線を向ける。



「目一杯甘やかしなさい」


 形の良いツヤツヤした唇が、囁くように音を紡ぎ出した。



「お互いに甘やかしあってたら、ズルズル行っちゃいそうじゃない?」


 なんとなく怖気付いて、少し身を引いてしまう。

きっとミアちゃんの発情が伝わってきたせいだ。



「大丈夫よ。安心なさい。

 私はちょっとやそっとじゃ溺れたりしないから」


 ミアちゃんはそんな私を追い詰めるようにして、距離を縮めてきた。



「まあそっか」


 観念して体から力を抜くと、ミアちゃんが私の頬に手のひらを添えてきた。

ヴィー程じゃないけど、少しだけひんやりしてる。ふしぎ。



「何時まで喋ってるつもり?」


 私の頬を優しく摘みながら、少しだけムッとしたような口調で問いかけてきた。


 ヴィーの事考えてたのバレちゃった?

ミアちゃん鋭いし。



「自分で塞いでみたら?」


 言葉を間違えたかも。

何故かミアちゃんは、何時も以上に燃え上がっていた。

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