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03-40.勝負

「ルフィナちゃん、なんでこんな様になってるの?」


「ふしぎ……むしろ……ふしぜん……」


「ふっふ~ん!

 師匠のお陰だよ~!」


「師匠ってグラートさん?」


「ううん。アイ師匠!」


「世の中、凄い人って意外といっぱいいるのね~」


 流石にアイちゃん程となると、世界に二人しか居ないと思う。


 へーちゃんがどれだけ強いのかはわからないけれど、前にアイちゃんが魔術はへーちゃんの領分だと言っていた。

多分その方面ではアイちゃんより上位の使い手なのだろう。


 ベルタちゃん達が今回選んだのは、ボアより更に難易度の低いラビ狩りだった。


 ラビとは兎っぽい魔物だ。

なんか角生えてるやつ。

上位種に翼の生えた奴もいるらしいけど、私は見たことが無い。



「ミアさん!ホノカさん!勝負よ!

 時間内にどっちが多く狩れるかのね!」


「良いわよ。

 フィナはそっちに貸してあげるわ」


「キアラもだよ。ミアちゃん。

 その勝負、キアラ次第と言っても過言じゃないよ」


「……キアラは無しにしましょう」


「え~!!」


 もう。ミアちゃんたら。

そんなに負けたくないのね。


 ベルタちゃん達には先日の異界騒動でキアラの姿を見られていたので、今回はちゃんと紹介する事にした。


 新しく増えたダフネもいるし、二人とも殆ど人間にしか見えないから、細かく伝えずとも見逃してもらえると判断したのもある。


 幸い、あの霧の森の魔物とダフネが同一の存在とは気付いていないようだ。

普段キアラが姿を消していたのもあって、ダフネも同じように今まで見えなかっただけだと判断してくれたのだろう。


 とはいえ、見た目三歳児程度の幼女二人を森の中に連れてくるなんて、普通なら意味がわからないだろうけど。


 それでもベルタちゃん達は、気にしない事にしてくれたようだ。



「キアラとダフネのチームにしたらどう?

 二人には悪いけど、勝敗とは関係の無い扱いで」


 キアラは風の精霊だ。

情報収集にかけては、群を抜いている。

私とミアちゃんが束になっても敵わないだろう。



「それなら良いわよ」


「やった~!」


「がんばる」


 程々にね~。

二人が全力出したら、根こそぎ狩り尽くしちゃうから~。



「それじゃあ勝負は、私ミアちゃんチーム対、ベルタちゃん達幼馴染ズとフィナちゃんのチームね。

 お昼になったらここに戻ってきましょう。

 よ~い、どん!」


 一斉に駆け出す子供達。

いきなりフィナちゃんから目を離す事になってしまったけど大丈夫かしら。


 アイちゃんに厳しく扱かれたとはいえ、実地経験は皆無のはずだ。


 まあ、キアラ達も気にしてくれているだろうし、へーちゃん経由でアイちゃんも見ているだろうから大丈夫だとは思うけど。

一応こちらでも出来る限り気配は辿っておくことにしよう。



「それじゃあ、私達も行こっか」


「ホノカはあの子達を見ていてあげなさい。

 こっちは一人で十分よ」


 ミアちゃんも似たような事を考えていたようだ。



「良いの?

 収納スキル無いと不便だよ?」


「心配要らないわ」


「ミアちゃん一人じゃ負けちゃうかもよ?」


「何ならホノカもあの子達に協力して構わないわよ?」


「ふふ。凄い自信だね。

 けど止めとくよ。

 どうせなら、格好いいミアちゃんが見たいし」


「期待してなさい」


「うん♪」


「ほら、手を離してさっさと行きなさいな」


「うん……」


「まったく。仕方のない子ね」


 ミアちゃんが私を引き寄せてキスしてきた。



「勝手にしちゃダメだってば」


「何時までもぐずってるからじゃない。

 これでもう平気でしょ?」


「むしろ離れ難くなっただけかも」


「ダメよ。聞き分けて」


「は~い」


 私はどうにかミアちゃんの手を離して歩き始めた。

子供達は大分先を進んでいるようだ。


 ここはあの子達のホームベースだ。

不慣れなフィナちゃんが一緒であっても、特段問題とせずに動き回れるのだろう。


 ミアちゃんは本当に勝てるのだろうか。

何だか大人げないとは思うけど、私もミアちゃんに勝って欲しいと思う。


 未練がましく後ろを振り返ってみた。

ミアちゃんの姿は当然のように消えていた。


 ミアちゃんはきっと全力だ。

勝負事で手を抜けるような子じゃない。

むしろ私は足手まといだったのかもしれない。

別に気配を消すのとかが上手いわけでもないし。


 スキルを使わなければ、小さな兎にすらあっさり逃げられてしまうのだろう。

不甲斐ない。



『私が変わろうか?』


「ううん。大丈夫。

 ありがとう。ヴィー」


『そう。なら早く皆を追いかけないとね』


「うん。付かず離れずの位置で見守ってようか。

 私の気配であの子達の狩りを邪魔しちゃ悪いし」


『そうね。それが良いと思う。

 この森に大した魔物なんていないもの。

 あの異界だって、そう頻繁に発生するものでも無いって話だし』


「うん。どうせなら私達も楽しもっか」


『ええ。兎肉と合いそうな木の実でも探してみましょう』


「良いね♪」

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