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03-30.仲良し

「本当にこれにするの?」


「うん!!」


 フィナちゃんが最初の目的地に定めたのは武器屋だった。


 しかも真っ先に手に取ったのは、店の隅の箱に適当に放り込まれていた剣だ。


 フィナちゃんが使うにはだいぶ大きい。

たぶん、振るのもギリギリどうにかってところだ。


 今も両手で刀身を抱き抱えるようにして持ち上げている。

別にこの手の剣に切れ味なんて期待できないけれど、見た目が危なっかしくてハラハラしてしまう。


 まあ、適当に魔物を狩っていれば、すぐに軽く振り回せるようにはなるだろう。

とはいえ……。



「別に武器はすぐ買わなくても良いんだよ?

 今度ゆっくり出来る時に、特注で作ってもらおうよ。

 剣を使うなら、フィナちゃんの体に合ったものを用意するべきだと思うの」


「これがいいの!」


「大丈夫よ、ホノカ。

 好きにさせておきなさい」


「そんな無責任な……」


「そうじゃないわ。

 フィナはグラートの真似がしたいのよ」


「真似?」


「お父さんいつも言ってるの!

 最初は店の隅っこの、安物が相棒だったって!」


 フィナちゃんったら、本当にお父さん大好きね。



「ならまあいっか」


 いざとなったら収納スキルもあるしね。



「やった!」


 フィナちゃんが店のカウンターに剣を持っていくと、裏からお爺さんが現れた。


 何故かお爺さんは、剣を背中に担ぐ用の革の入れ物を手に持っていた。

しかも、サイズ感もフィナちゃんにピッタリだ。


 そのままお爺さんは、フィナちゃんの体に合わせて、手早く微調整を済ませつつ、革の入れ物と剣を装着した。



「よし、出来た。

 キツイところはないかい?」


「ありがと!大丈夫よ!

 アロンツォさん!」


「うんうん。

 それにしても、遂にルフィナも冒険者になるんだねぇ。

 まだ暫くはこの町にいるのかい?」


「ううん!海を渡って隣の大陸に行くの!

 すっごい冒険者になって帰ってくるね!」


「そうかそうか。

 楽しみに待っとるよ」


「うん!」


 お爺さんとフィナちゃんは元々顔見知りだったようだ。

グラートさんの贔屓というのもあるが、フィナちゃんも個人的にこの武器屋には通っていたらしい。


 真っ先に手に取った剣も、実は前々から目を付けていたものだったようだ。


 お爺さんが入れ物を用意していたのも、そんな経緯があっての事だったらしい。

結局、剣の代金しか受け取らなかったし。


 下手すると入れ物の方が高価なんじゃないかしら。

やたら上質な素材に見える気がする。

いやむしろ、この感じだと剣自体も良い素材だったりする?

まあ、野暮なことは言うまい。


 笑顔でお爺さんに挨拶しながら店を出て、うっきうっきで通りを歩くフィナちゃん。


 武器屋に来る前からそうだったけれど、あっちこっちで声をかけられている。


 背中に担いだ剣が目立つ為、話題はもっぱらフィナちゃんの旅立ちについてだった。



「フィナちゃん人気者だね~」


「ホノカもああやって笑っていれば、すぐになれるわよ」


「いやまあ、別に自分がなりたいわけでもないんだけど」


「気持ちはわかるわ。

 私も誰彼構わず話したいわけではないし」


「だよね~」


『二人とも社交性が無さ過ぎるわ。

 結局ここまでの旅の最中だって、数える程度にしか他の人と話してないじゃない』


「さみし~」


「まさか精霊に人間社会での在り方を問われるとは」


「良いのよ、別に。

 私もホノカも美人すぎるもの。

 下手に声かけたら、面倒な男共が寄ってくるだけよ」


「ほんと、よく自分でそういう事言えるよね」


「事実じゃない」


「もう。ミアちゃんたら」


「またイチャイチャしてるの?」


「そうよ、フィナ。

 私達はラブラブだもの。

 早くフィナも混ざりなさいな」


「ミアちゃん」


「冗談だってば。そんな怖い声出さないでよ」


「今のはミア姉が悪い。

 ちゃんとホノ姉の事大切にして」


「わかったわよ。もう。

 二人して責めなくたっていいじゃない」


「最近のミアちゃんは少し浮かれすぎだと思うの」


「そうかしら?」


『あの日からずっとこんな感じよね』


「あの日って?」


『ホノカとミアと私とキアラ、それにアイが、それぞれ話し合いをしたの。

 色んな秘密を明かし合って、これからもよろしくねって。

 ミアはそれが嬉しくて堪らないみたい』


「余計な事言わないでよ、ヴィー」


「よけいー?」


「違うわ、キアラ。

 そういう意味じゃない。

 嬉しいのは嬉しいのよ。

 でも恥ずかしいじゃない」


「そっか~」


「相変わらずミアちゃんとキアラって以心伝心だよね。

 なんでキアラの言いたいこと、そこまでわかるの?」


『ホノカも、一々嫉妬しないの。

 あなたもあなたで変になっているのだと自覚なさいな。

 私達はあの日家族になったはずよ。

 家族皆で仲良くしましょう。

 勿論、これからはフィナともね』


「ヴィーってなんだかお母さんみたいだね」


『あら。じゃあお父さんは誰かしら』


「う~ん。

 みんな子供っぽいんだよなぁ~。

 なら、私がお父さんになってあげるね!」


『それは良い考えね♪』


「余計なお世話よ。

 うちは母子家庭なの。

 フィナは普通に娘で良いじゃない」


「それより姉妹が良いなぁ。

 ヴィー、ミアちゃん、私、フィナちゃん、キアラの順で、仲良し姉妹になりましょう」


「違うよ!ホノ姉!

 ヴィー、私、ミア姉、ホノ姉、キアラだよ!」


「聞き捨てならないわ。

 ホノカはともかく、私がフィナの下なわけないじゃない」


「あ、でもそっか。

 もしかしたら私よりフィナちゃんの方が年上かもしれないのよね」


「え?」


「あはは~。私、こう見えても十歳くらいなの。

 フィナちゃんにも後で色々教えてあげるね」


「なにそれ気になるよ!?

 今すぐ教えてよ!」


「うんうん。後でね~」


「今だよ!今!今すぐ!」


『そもそも、実年齢言い出したらキアラの方があなた達より年上よ?

 ホノカは普通に見た目通りで良いんじゃない?』


「ヴィー。

 面倒くさいから蒸し返すのは止めなさい」


『それもそうね』


「ねぇ~え~!ホノ姉~!」


「後でね~」

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