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03-21.降臨

「ホノカさんもミアさんも本当に強すぎだよ~」


 大の字で寝転がったまま、ベルタちゃんが楽しそうにそう言った。



「ベルタちゃん、淑女はどうしたの?」


「今はお休み~」


「ふふ。やっぱりまだまだお子様ね」


「いいもん。どうせミアさん達と比べたら子供だもん」


「ならいっぱい美味しいものを作ってあげようかな。

 子供は沢山食べなきゃだからね」


「美味しいもの……!」


 息も絶え絶えで転がっていたマリカちゃんの目がカッと見開かれた。

どうやら息を吹き返したらしい。



「じゃあミアちゃん。皆のことお願いね」


「ええ。こっちは任せなさい」


「僕らも手伝います」


 ジャンが慌てて上体を起こした。



「ううん。手伝いは要らないから、しっかり休んでいて。

 午後からは魔物が相手よ。

 疲れを残して怪我でもしたら大変よ」


「はい」


 素直に聞いてくれてなによりだ。


 私は皆を残して少し離れたところで、昼食を作り始めた。


 今日は何にしようかしら。

お肉いっぱいがいいのかな。

でも、あまり食べすぎて動きが悪くなっても困るよね。


 子供達の事をあれこれ考えながら料理を作っていく。


 これも少しだけ懐かしい感覚だ。

誰かの為に作る料理も良いものだ。


 私はどうしてミアちゃんの為に作らなかったのだろう。

ニナちゃん達と暮らしていた頃は、皆の為を思いながら作っていたはずだ。


 けど、ミアちゃんと二人きりになってからは、料理は趣味の延長に戻ってしまった。


 以前、アイちゃんからもその事について指摘された事があった。


 ポジティブに考えるなら、それだけ今の私の心が前向きになったという事なのだろう。

かつての心を取り戻しつつあるのだ。


 楽しみ、思いやる余裕が生まれたのだ。

なら、素直に喜ぶべきなのだろう。


 やはり大きなキッカケは、ミアちゃんの告白だろうか。

ボースハイトとの因縁を共有したことで、より絆が深まったのだろうか。


 ならアイちゃんとはどうだろう。

ヴィーやキアラとはどうだろうか。


 皆の喜んでくれる顔は簡単に思い浮かぶ。


 私はとっくに立ち直れていたのだろう。


 きっと懐かしいなんて気持ちは大げさなのだ。


 ただ、レン、ザイン、ニナちゃん達と暮らしていた頃と重ねてしまっただけの事だ。


 それだって別に悪いことなんかじゃない。

こうして昔の思い出を大切にしながら、新しい思い出も積み重ねていけばいい。


 そうすれば、悲しんでいる暇なんて無くなるはずだから。

だから私はきっともう大丈夫だ。


 物思いに耽っている内に少し昼食を作りすぎてしまった。

まあ、食べきれない分は収納スキルに入れておけばいい。

それより早く皆を呼んであげよう。

きっとお腹を空かせているはずだから。



「ミアちゃ……え?」


 そこには誰もいなかった。

つい先程まで、子供達が寝転がっていたはずなのに。

ミアちゃんが皆を見守りながら、腰を下ろしていたはずなのに。


 誰もいない代わりに、黒い霧が漂っていた。

まるで、皆を飲み込んでしまったかのように。



「ミア……ちゃん?」


 当然のように、返事は無かった。



「ベルタちゃん!マリカちゃん!

 ジャン!ラウル!キアラ!!

 皆!何処にいるの!?」


『ホノカ!落ち着きなさい!』


「ヴィー!皆が!皆がいないの!!」


『わかってるわ!

 私もキアラの気配が感じられない!

 けど先ずは落ち着きなさい!

 アイを呼ぶのよ!

 神に声を届けなさい!』


「うっうん!!」


『へーちゃん!へーちゃん!へーちゃん!』


 なんで!?

なんでこんな時に返事をしてくれないの!?

早く!早くアイちゃんを呼んでよ!!



『……ま……いま……から!』


 え?


 その直後、私の眼の前に強烈な光が降り注いだ。


 光に視界を焼かれて、前がよく見えない。

それでもどうにか薄目を開けながら様子を確認すると、アイちゃんに良く似た少女が立っていた。


 少女は私に手を差し伸べながら、アイちゃんとよく似た声で言葉を紡いだ。



「ホノカ。手を貸しなさい。

 今アイは手が離せないの。

 私では道案内しかできないけれど、必ずミア達の下へ導いてみせるわ」


 私は少女の手を取り、言葉を返す。



「うん!お願い!へーちゃん!」


 へーちゃんは私の手を引いたまま、黒い霧に飛び込んだ。

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