二人はすれ違う
撮った写真を見ながら、智雄と木村さんが前を歩いているのを眺めて歩く。変な顔、とか目めっちゃ開いてんじゃん、とか茶化しあっているのを見て、叔父との会話がふと頭の中に浮かぶ。
『写真に残すことってそんなにいいことかな』
いつか店の掃除をしながら叔父に聞いたことだった。テーマパークや神社で写真を撮っている光景を何度も目の当たりにして、自分には関係のない習慣だけど不思議に思っていた。
『思い出を共有し合うのも、楽しいのかもしれないね』
そう言う叔父の横顔は何かを思い出していそうに、どこか上の空で哀しそうだったような気がする。もし俺も、この体質が無くて、写真に映ったのならあの会話の中に混ざれたろうか。
「──写真ってさ。見返すのもいいけど撮る瞬間が楽しいんだよ」
横から小松さんに声を掛けられて、意識が現実に引き戻される。
「どうせ映んないし」
「それでも、形だけでもやればいいじゃん」
「無駄だよ。そんなことしても」
「寂しくないの」
「ああ」
「あっそ」
小松さんはそっけなく返して前を歩く二人の方へ足早に向かい、「ねぇねぇ見せてー」と智雄にせがむ。
何だよあいつ。
4人で歩いているはずが、自分だけ独り取り残されているような気がした。