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奇病
ポルフィリン症。──それは物語に出てくるヴァンパイアの性質とよく似た病気としてヴァンパイア症候群という名でも知られている。
感染すれば夜は凶暴性が増し、知覚過敏によって光や先端の尖った物に過度な反応を起こすという。
しかし世の中にはもっと不思議な病気が知られている。ヴァンパイア症候群のように体調に影響が出るほどの困ったものではないが、それは感染症ではなく先天的なものだ。その病気にかかった物から生まれてくる子供も必ず発症し、一生治ることは無い。
代表的な症状としては、犬歯が普通の人のそれより少しばかり長く、赤い食べ物を好む。(生き血も例外かと言われると嘘になるが、飲まなくても死ぬことはないし好んで飲むなんて話は聞いたことがない。他人に害を及ぼすような症状は無いのでそういう意味では悩まされる病気ではないだろう。)そして鏡や写真に自身の姿がまったく映らない。
——俺は生まれてこの方、自分の容姿、顔を見たことがない。目の色も、髪型さえ、分からない。