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集合写真

 とある日の昼前、誰も居ない教室。

(ふじ)君、集合写真だよ。もうみんな集まってるよ」

 端末に向けていた視線を上げると小松さんが教室のドアと廊下の境界線で立っていた。

 集合写真を撮るために他の生徒と一緒に数分前に校門へ行ったと思っていたが。わざわざ呼びに戻ってくるとはお節介なやつ。

「いいんだよ俺は行かなくて」

「そうなの?」

「ん」

「なんで?」

 しつこいな。いいと言ったんだから何も聞かずにとっととみんなのところに行ってほしい。なるべく表面上に出さないように、腹の中で少しムッとした。

「先生に言えば分かるよ」

 もう話すことはない、とは口に出さずに端末に視線を戻した。

 病欠でもないし集合写真に参加しないことが納得できないのは当然だろうけど、映りもしない写真撮影に参加することもない。だけど一々事情を話すのは面倒くさい。

「──写真に映らないの?」

 大きな音が聞こえたかのように、びくっと肩を揺らして反射的に小松さんの方へ顔を向けた。

「テレビで見たことがあるよ。珍しい病気で、日の光浴びちゃだめで鏡にもカメラにも映らないんだって」

 何も言わない俺を見て、小松さんは「ごめん」と一言だけ残すと、小さな足音を立てて去っていった。小鳥のさえずりと風が教室に入ってくる音に交じって外で盛り上がっているクラスメイト達の声が小さく聞こえる。

 なんだよ、分かっているのなら──。呼びに来られて、そしたら断って。まるで拗ねて独りぼっちになったみたいな気分だ。ほんの少し芽生える後悔と寂しさを頭から振り払った。

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