第21話 続く世界には、またやってくる
進藤聡は怒っていなかった。
夢に出てきた空崎先輩の言葉で少し落ち着いた俺が、進藤聡に感情的になって言葉をぶつけてしまったことを謝ると、寛大な態度で許してくれた。
「まあ、身近な人を亡くしたらそうもなるよね」
「もしかして……」
その理解度の高さから、進藤聡も身近な人を亡くした経験があるのではないかと尋ねようとすると――
「ああいや、訊かないでくれ」
別に怒った風でもなく軽々と受け流された。
少しのことで怒らない器の広さは、君や空崎先輩と似たところを感じる。
彼は話すことがなくなったのか、去って行った。
いくら落ち着いたと言ってもさすがに心に堪えるのは間違いなく、少し一人になりたくもあったのでちょうどいい。
空崎先輩に対する気持ちの整理をつけている間に、その次の時間の授業が始まる。
その授業はあまり面白くなく、春の陽気が俺に眠気を感じさせる。
授業に意味はあり、君の分も受けておくべきなのかもしれないが、眠りかけた俺にそんなことは関係なく、俺の視界は狭まっていった。
「おはよう永井君。君が達観しているという評価は撤回すべきかな」
どうやら気づかぬ間に授業が終わっていたらしく、進藤聡が俺の席にやってきていた。
「わざわざ俺を起こしに来るとは、暇なの?」
「暇であることは間違いないけれど、君を起こしに来たのは暇だからというわけでないね」
暇なのか。
生徒会やってるのに暇なのか。
「生徒会役員なんてやっていて暇なものなのか」
「ああ、副会長の仕事は平役員のころよりも案外少なかったりするからね」
平役員の方が副会長よりも仕事が多いのか。
というか、進藤聡が副会長だったという事実を俺はつい今の今まで知らなかった。
春休みが明けて生徒会の新役職が発表されたときはまだ何を考えることもできなかったころだから仕方のないことかもしれないけど。
「そういえば、落ち着いたということは自分なりに答えは出たの?」
答えというのはどういう意図で口にしたのだろうか。
彼が俺の現状をどこまでわかっているのかがわからない。
空崎先輩の死に対する答えが出たという意図で言っているのか、それとももっと深い部分――生きる意味とかこの世界の意味とかそれに対する答えということなのか。
「まあ、そうだね。ある程度は」
どういう部分を訊かれているのかはっきりしなかったが、生きる意味はまだ分からない、とか軽々と言えるものではないので、とりあえず流しておく。
会話の流れでいつかどっちを訊いていたのかわかることだろう。
それよりも、まだ見つかっていない生きる意味を考えた方がいいんじゃないだろうか。
「そうか。それは良かったよ。いい人生を」
「そちらこそ」
まるで今後会う予定がないような挨拶になってしまったが、これも進藤聡との会話の特徴かもしれない。
例えば君との会話がねえ、命から始まるように、例えば空崎先輩が素っ気なく話すように。
それを思い出すと、答えが出たはずの空崎先輩や君の死に対する未練が湧き出してきてしまった。




