ミニット王国
「うわぁぁ、でっけーなぁー!!」
目の前には大きなお城を中心にいくつもの建物や行商屋の数々、、、
そしてエルフやドワーフ、様々な種類の人達で溢れかえっていた
--------ミニット王国
数年前までは平和の国として何万人の人達が暮らす穏やかな国として有名だったが、ここ数年悪魔達の攻撃がこの国にまで及ぼし、たくさんの命が亡くなり、違う国へ渡った者も多い。
だがそれでも、この世界でじいちゃん以外の人と出会っていなかった僕には多すぎる数の人達で溢れていた
「ん?なんか、良い匂いがするな~」
長旅で疲れていた僕のお腹が大きな音を鳴らす
匂いに釣られて歩き出すと、そこには焼きたてのパンが売られていた
「おっ!そこの兄ちゃん!!見ない顔だな。どうだい?この国自慢のミニットパン!!焼きたてだよ!」
綺麗な色で焼かれたパンの表面には先ほど見た大きなお城が描かれていた
「いくらですか?」
僕はおじいちゃんからもらった銀貨10枚しか持っていなく、この世界でのお金の相場が分からなかった
「銅貨10枚だよ。」
銅貨10枚か・・・
銀貨1枚で足りるよね。
僕は銀貨1枚を渡した
「毎度~!んじゃあこれがお釣りの銅貨90枚な!」
大量の銅貨が渡された
銅貨100枚で銀貨1枚か。
銅貨1枚が日本円で10円と考えると銀貨が1000円札か。
この世界では100円玉のような物はないのかっ!
10円玉を90枚でお釣りがきたように感じると、やけに虚しくなる
銀貨の上には金貨がありその上には白銀貨があるようだ。
まさか、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白銀貨1枚じゃないよな、、、
「すみません、この壺くださる?」
僕は買ったばかりのパンを頬張りながら、お釣りの10円、、、いや、銅貨を異空間に収めていると、隣の高級な壺や絵などが売られている店の前に一人の貴婦人らしき人物が壺を見ながら店員に声をかける
「これは奥様!いつもご贔屓にしてくださりありがとうございます!こちらはお目が高い!こちらの壺は有名なドロル先生の新作でございます!お値段は銀貨80枚でございます。」
「あら、安いのね!いただくわ。」
銀貨10枚しか持っていなかった僕にとっては銀貨80枚を安いと言っているこの人に驚いてしまった
着飾った女性は店員へ金貨1枚を差し出す
「ありがとうございます!ではこちらお釣りの銀貨20枚でございます!」
・・・あっ、やっぱり金貨1枚で銀貨100枚なのね。
ってことは、白銀貨も1枚で金貨100枚だろうな・・・。
この世界の人は財布とかどうしてるんだろう。
あんなに銅貨や銀貨がたくさんあったら大変だろうな。
そんな事を思っているとあっとゆーまにパンを食べきってしまった。
どうしようかな、じいちゃんには、このお金で宿に何日間は泊まれるって言ってたけど、早いとこギルドに登録して稼がなきゃな!
あとは、今日の宿と学校にも手続きに行かなきゃな。
「まずは宿だな!」
そう言って僕は宿を探すことにした。
探している最中、何やら騒ぎが起こっており、覗いてみると大人3人が、僕と同じ年齢のように見える大きな耳のエルフを追いかけていた。
「待ちなさい!ランス!!」
大人3人は必死になってエルフを追いかけるが、エルフは涼しい顔で捕まる様子もなく逃げていく。
「うるせーなー。オイラは何も悪いことしてねー!悪いのはあいつらだろっ!」
そう言って、エルフは空高くジャンプをした・・・いや、空を飛んでいる。
「浮遊術か!?」
僕は同じ能力なのかなと思い咄嗟に声に出ていた
そうすると、近くで同じ騒ぎを見ていた人が笑いながら話してきた。
「おっ、お前さんも浮遊術使えるのかい?もうこの騒ぎは恒例行事だよ!あの子はランスって言って、そこの学校に通うエルフの中のエリートってやつだな!追いかけてるのは先生達。
エルフは元々はエーテル王国に暮らす者がほとんどだったが、最近ではこのミニット王国に移住してくる者も増えてきてな。
だが、まだ珍しいのか学校ではよくいじめられるようで、その仕返しで相手にケガさせちゃっては、毎回先生から逃げてるんだよ!」
あーこの世界でも国同士や種族に対する差別的なものがあるのか。
そう感じながら空を飛び回るランスを目で追う。
それにしても速いな・・・
普通、浮遊術を使うと空を飛ぶことはできるが、あんなに速くは僕は動けない
「ねぇ、おじさん!その学校ってどこにあるの?」
僕は少しだけ胸が高鳴った。
この状況でそんな事を思うのはいけないと思うが、同年代で僕よりもすごい超能力を使っている姿を見て、純粋に友達になりたいと思ったんだ。
おじさんに学校までの行き方を教えてもらい、僕はその場所へ走り出した。
学校に到着し、受付のような場所に綺麗なお姉さんが立っていたので、そこへ向かう。
「あら、どうしました??」
僕は全速力で走ったため、呼吸が落ち着かない
「す、すいま、せん!にゅ、入学、したいん、ですけ、ど・・・」
そう言ってじいちゃんの手紙を受付のお姉さんに差し出す
「この時期に入学って・・・ってあら、この手紙・・・。ちょっとあなた!ここで待っててね!」
お姉さんは手紙を見ると慌てて奥へと走りだした
数分待つとそこにはお姉さんと、その後ろには腰の曲がったおじいさんが現れた。
「いやはや、あやつに孫がおったとはのぉ~。」
そう言って僕の顔をまじまじと見つめる。
「あっ、あの・・・」
僕はずっと見つめられ少し恥ずかしくなり、声を出すとおじいさんはクスッと笑い、満面の表情で僕の頭を撫でた
「すまんのぉ。あやつとは昔からの親友じゃったからのぉ。あやつの孫となるとわしの孫でもあるように感じてしまってのぉ。」
どうやら、このおじいさんはこの学校の校長であり、じいちゃんの親友らしい。
「手紙は読ませてもらったよ。ユースケ君。君をこの学校へ入学させよう。とは言っても、もう入学式は終えておるため、転校生のような形で紹介させてもらってもええかの?」
「あっ、ありがとうございます!でも入学金とか授業料とか、まだ持ってないんですけど・・・」
そう申し訳なさそうに伝えると、校長から頭を軽く叩かれた。
「バカモン!あやつの孫からお金を取るわけないじゃろ!それに、金の事に関してはあやつの手紙にも書いてあった。君は何も心配せず、たくさん学びなさい!」
校長の顔を見ているとじいちゃんを思い出してしまうほど、優しさが全面に溢れていて、懐かしさと嬉しさで顔が綻んでしまう。
「はいっ!!」
僕は大きな返事をすると、校長は優しい笑顔で何度も頷いた。
こうして学校の手続きを済ませ、明日から学校生活の始まりだ。
僕は学校の近くにある宿を校長の御厚意で格安で泊まらせてもらった。
明日の学校終わりにでもギルドにも登録しないとな。
ミニット王国に着いてから慌ただしく一日が過ぎた。
宿のベッドで横になりながら、窓の外の空を眺める。
「アツシ・・・ユカ・・・」
みんなは無事なのか。
この時間にもクラスメイトの誰かが死んでしまっているかもしれない。
そう思うと心臓の鼓動が速く脈打つ。
「なんで僕達なんだよ・・・」
異世界に来てから、優しいじいちゃんと出会い、明日から学園生活が始まる。
この世界に来てから、ワクワクすることも楽しいと感じることも多い。
きっとただの異世界転生や異世界転移だけなら、純粋にこれからの生活を謳歌していけるだろう。
しかし、僕たちは悪魔を倒すために異世界へと放り出されてしまった。
クラスメイト全員が死んでしまうと現実世界でも死んでしまう。
そんな現実を思い出すと急に恐怖心が溢れ出す。
教室で聞こえたあの声。
結局あいつは何が目的なんだ??
色んな事を思いながらも、長い1日だったせいか僕はそのまま眠りについた
あと26人・・・




