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新学期の始まりの朝、駅に向かう学生たちとすれ違いながら、私は自分の家に帰る。
夏休みの初日にあの家を出てから、まだ1ヶ月ちょっとしかたっていない。
だけど私はもっとずっと長い間、ルリたちと暮らしていたような気がしていた。
家で母は一人、ポツンとキッチンに座っていた。どことなく寂しげな母の背中。
いつもいるはずの男の姿は見えなかった。
私はそんな母には声もかけず、階段を上がり自分の部屋に入る。
少しだけ懐かしい匂いのする私の部屋。
ベッドの上に倒れこみ、枕に顔を押し付ける。
目を閉じたらルリの笑顔が浮かんで涙があふれて、私は声を押し殺してただ泣いた。
次の日、私は制服を着て家を出た。しかし行き先は学校ではない。あのアパートでもない。行き先はルリの葬式だ。
ルリは仕事帰りに買い物をして、家に戻る途中で事故に遭った。
飲酒運転の車にはねられ、あっけなく死んでしまったのだ。
ルリが最期まで手に握っていた紙袋の中には、真新しい水着が一着入っていた。
葬儀場は、なんとなく閑散としていた。
ルリは身寄りがなかったらしく、遠い親戚だというおじさんが面倒くさそうに頭を下げている。
私はお焼香をあげて、笑顔のルリの遺影に手を合わせた。悲しいのにもう涙が出なくて、ただ喉が渇いてやるせなくて、私はすぐにその場を離れた。
葬式でナルに会ったらどうしようかと思った。会うのがとても怖かった。でもそこにナルの姿は見えなかった。
ナルはどうしているのだろう。会いたいけど会いたくない。
私はもう、あのアパートへは帰ることができなかった。
こうして14の夏が過ぎ、いくつもの季節が通り過ぎた。
私は普通に学校に行き、普通に遊んで、男の子とも付き合った。
だけどどれもうまくいかない。何かが違うのだ。あの14の夏みたいに、私はうまく笑えない。
私の顔はだんだん母に似てきて、母が父と出会ったという、18歳になっていた。