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ここの暮らしは、意外と心地がよかった。
ルリとナルは私のことを何も聞かなかったし、それでいて、いつもさりげなくそばにいてくれた。
私が一人で寝ていると、ルリが
「こっちにおいでよ」
と誘う。
枕を抱えて、ルリのぬくもりのする布団におずおずともぐりこむ。するとナルも強引に入り込んできて、私たちは修学旅行の夜のようにふざけ合いながら眠った。
朝になるとルリは、バリッとしたスーツを着て仕事に出かける。ルリはちょっと意外だったが普通のOLなのだ。
そしてナルは何もしないで、部屋でテレビを見たりごろごろしていた。
「ナルちゃんって……ヒモなの?」
ナルは黙ったままニコニコと笑う。そして私はナルと、ずっと一緒に過ごした。
真夏の昼間にナルと映画を観る。
「すごい、感動した。もう一回観よう」
そう言ったのはナルのほうなのに、いつの間にかナルは私にもたれかかって寝息をたてていた。
あんまり暑いのでナルが
「海に行こう」
と言った。だけど私は水着を持っていない。
「じゃあ、ルリに借りれば?」
ナルが押し入れの奥から引っ張り出したのは、真っ黒なビキニ。一応着てみたけど全然似合わなかった。ナルも
「やっぱり海に行くのはやめよう」
と言った。失礼なヤツだ。
冷房のない部屋で、窓を全開にしてナルと寝転ぶ。「暑いね」「うん、暑い」二人の会話はたったそれだけ……
開け放した窓から生ぬるい風が入ってくる。全然爽やかでないのに、なんだか気持ちいい。
ナルは私の隣でうとうとしていて、ルリと間違えたのかわざとなのか、私の髪を優しくなでた。