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いつもの駅に電車が着いた。
ナルが立ち上がったけど、私は座ったままだった。ナルは何も言わないで電車を降りた。
やがてゆっくりと電車は動き出す。私は振り返って白い蛍光灯に照らされたホームを見つめる。
ナルはそんなホームに一人ぼっちで立っていた。
「ナル……」
私はつぶやき窓にしがみつく。そんな私を見てナルが小さく手を振った。
駅のホームはすぐに見えなくなり、ナルの姿も私の視界から消えていく。
私はこぼれ落ちる涙と必死に格闘しながら、ナルの言葉を思い出す。
『きっとルリが会わせてくれるよ』
そうだね。そうだよ。
あの満月の日、運命みたいにナルとルリに出会えたように。
あの卒業式の日、引き寄せられるようにナルにもう一度会えたように。
私はその日を心待ちにしながら生きてゆく。
そしてその時、私は、ナルは、誰を想って生きているのだろう……
電車の揺れに身を任せ、静かに目を閉じてみる。
ベランダに花をいっぱい咲かせて、幸せそうなルリの笑顔が浮かんで消えた。
私の拙い文章を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。