15
終電間際の電車に二人で乗った。
ひと気もまばらな車内に、電車の揺れる音だけが響く。
「俺、本当はわかってるんだ」
ナルの声は、初めて会った日のように優しかった。
「ルリが俺を、追い出そうとしていること」
私は電車に揺られながら、隣に座るナルを見る。
「すごく静かな夜とか、真夜中にふと目が覚めたりすると、寂しくてやりきれなくなっちゃうんだよな……」
ナルは窓の外を見つめたまま、少し照れくさそうに笑う。
「ハナちゃんに気づかれないようにベランダに出て、一人で吐きそうなくらい泣いて、それで気がつく。こうやって俺を苦しめて、ルリはあの部屋から俺を追い出そうとしている。もう私のことは忘れて出て行けって……早くハナちゃんのことを幸せにしてやれって」
電車がホームに滑り込んだ。ドアが開いてすぐに閉じ、また電車は走り出す。
「でもさ、死んで、時がたって、誰からも忘れられて……そんなのって寂しいだろ?だからせめて俺ぐらいは、ルリのことをいつまでも覚えていてやろうかって」
ナルの言葉を聞きながら涙があふれそうになった。
ナルは今でもこんなに深く、ルリのことを愛している。
「ごめんな……」
私は小さく首を振る。そしてルリの笑顔を思い出しながらつぶやいた。
「ナル……好きなの」
「うん」
「またいつか会える?私たち」
「そうだな……」
ナルが流れ行く窓の景色を見た。
「会えるかもな」
涙をこらえてナルを見る。
「きっとルリが会わせてくれるよ」
「そうだといいな」
私の言葉にナルが笑う。
最後にナルの笑顔を見られてよかった……