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 ナルと中華街の店に入った。大きな丸いテーブルに二人だけで座る。

 ナルは豪華な椅子に気持ち良さそうにもたれかかって、赤や金色に彩られている壁を眺めながら言った。

「変わってないなぁ、この趣味悪い壁の色」

「ナル、ここに来たことあるの?」

「うん。あれはハナちゃんと出会う少し前かな……ルリが俺をここに連れて来て、それで言ったんだ」

「何て……?」

 懐かしそうに壁を見つめたまま、ナルがつぶやく。

「俺と別れたいって」

 ショックだった。ルリがそんなことを言ったなんて……浮気しても喧嘩しても、ルリはナルのことが好きだと思っていたから。

「理由を聞いても答えないんだ。だから俺は別れないって言った。絶対別れないって言ってやった」

 ナルはそう言ってグラスのビールを一気に空けた。それと同時に食欲をそそる匂いを漂わせ、テーブルに料理が運ばれてきた。私はぷりぷりと輝く海老をぼんやり見ながら、ナルの言葉を聞く。

「そしたら泣いてんの、あいつ。このうまそうな料理の前で」

 私は何も言わなかった。ナルの口からこんなにルリの話を聞いたのは、初めてのような気がする。

 ナルは自分のグラスにビールを注いで、それをまた一息で飲み干した。

 本当はお酒なんか好きでもないくせに。私がそんなことを思って見ていたら、ナルが寂しそうな声でポツリと言った。

「ルリは、予感してたのかもな。自分が死ぬこと」

 私の頭にルリの一言がよみがえる。そしてその言葉の意味が、今やっとわかったような気がした。

『ナルが次に好きになる子が、ハナちゃんだったらいいな……』

 私は夢中で首を振る。だけどなぜか言葉が出なくて、ナルはそのまま続けて言った。

「自分が死ぬことわかってたから、その前に俺と別れようとしてた。俺に嫌われようと思ってくだらない男と付き合ってみたり……」

「そんなの……」

 信じられるはずがない。ルリを正当化しようと思って、ナルが勝手に想像しているだけだ。

 ナルを好きだったルリ。でも自分が死んだらナルが悲しむと思って、わざと嫌われるようなことをした。

 だけどそんなことをしてもナルの気持ちは変わらなくて、ナルがルリのことを好きなまま、ルリは一人で逝ってしまった。

 私たちの前に次の料理が運ばれてきた。ほかほかと温かくて、まるでルリのようだと思った。

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