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 その日はナルと離れて眠った。

 いつもの部屋にナルは布団を敷いて、私は隣の部屋に布団を敷いて、タオルケットの中に隠れるようにもぐりこむ。

 何も言わずに……お互い背中を向けて……すぐ近くにいるのになんだかヘンだった。

 目を閉じると、父の顔がぼんやり浮かぶ。あんなに大好きだったのに、父の記憶は私の中から少しずつ消えてゆく。

 だけど母は……母はいつまで父のことを、想い続けるつもりなのだろう……

 朝方になっても眠れなくて、何度も何度も寝返りを打った。

 寝返りを打つたび隣にナルがいないのが寂しくて、私はもうナルがいないと生きていけないのだと初めて知った。

 でもナルは違うのだ。ナルは私がいなくても生きていける。この部屋の中で、いつまでもルリのことを想って。そうやってナルは生きていけるのだ。


 目が覚めたら昼過ぎだった。

 太陽は午後の日差しをこれでもかというほど照りつけ、私の着ていたTシャツは汗でぐっしょり濡れていた。

 ゆっくりと起き上がって隣の部屋を見る。いつもだらしなく敷きっ放しの布団が部屋の隅に片付けられ、狭いベランダの窓が開いていた。

「ナル?」

 私は揺れるカーテンの向こうにナルの背中を見つけた。

 いつもベランダなんか出ないのに。

 あのベランダにはルリがホームセンターで買ってきた、土だけ入ったプランターが足の踏み場もないほど散らかっている。

「ここにいっぱい花を咲かせて、お花畑にしようよ」

 私の名前を付けてくれた父が、もうこの世にいないことを話した次の日、ルリは私にそう言った。

「きっとハナちゃんのお父さんも喜ぶよ」

 ルリが私の前で幸せそうに笑う。だけど最期までここがお花畑になることはなかった。

 立ち上がって窓辺に向かう。ナルがベランダの手すりにもたれて、ぼんやり遠くを見つめている。

 ナルは寂しそうだった。決して泣いていないけど、泣いているみたいに見えた。

 いつも一緒にいたのに、ナルのすぐ近くにいたのに、この人のこんな横顔を見たのは初めてだ。

 やがてナルは振り返って私に笑いかけた。いつもと同じナルの笑顔。私の大好きなナルの……

「ナル!」

 ナルに駆け寄ってその体にしがみつく。ナルは笑いながら、汗で濡れた私の背中を抱き寄せた。

「もう怒ってないの?」

 私は何も言わなかった。

「どこか行こうか?」

 ナルの言葉に私は

「海に行きたい」

 と答えた。

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