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ピゴラは俺と同じように神殿で育った。
ただそれは俺のように捨てられていたからではなく、
彼女が神殿長の娘だったからである。
だから俺達は姉弟のように育てられたのだが
ただピゴラはブラコンであった。
まぁ正しく言えば兄弟ではないので違うのだが……
「大丈夫、モーラス? 何かあったらすぐに私に言うのよ」
そう言ってピゴラは俺を教室まで送り届けると去って行った。
ピゴラは学校の生徒会長であり、神殿長の娘。
そんな人物に目をかけてもらっている奴に手を出すなんて事は
ある訳がない、
分別のある大人のゴリラなら。
当然、ここは学校で、分別のない子供のゴリラが集まる場所で、
そして、子供の世界は残酷だ。
自分達と違う者はターゲットとなってしまうのだ。
「おい、お前! ちょっとこっち来いよ! 」
ヤンチャなグループに校舎裏へと連れていかれ
「俺達が学校での生活の仕方を教えてやるぜ」
そう言うやいなや拳が飛んでくる。
俺がその拳をひらりと躱すと、またすぐに拳が飛んでくる。
俺は痛いのは嫌いなのだ。
そもそも人族とゴリラではパワーが違いすぎる。
だから躱し続けるしかないのだが、それにも限界がある。
殴られるよりは殴る方が痛くはないだろう。
今度は俺が拳を振るうとゴリラが吹っ飛んで行った。
思いもよらぬ出来事にゴリラ達は動揺する。
人族とゴリラでは身体能力が違うという常識が覆されたのだ。
「おい、嘘だろ? どうなってんだ」
「こいつ、本当に人族なのか? 」
「いや、何かの間違いだ。そんなはずはねえんだ」
現実を受け入れられずに、殴りかかってきたゴリラを俺は殴り飛ばした。