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そいつはいきなり表れた。
「これはこれは勇者様、お初にお目にかかります。
私は魔王軍四天王が一人、魔剣使いのマキリモムと申します。
どこかへお出かけですか? 」
ニヤつきながらそんな口上を述べるマキリモム。
腰に三本ずつ、剣をぶら下げているそいつは、こちらを値踏みしていた。
「なんだおめえさんは、やるって言うのかい?
勇者様はちょっと見といて下せい。
あっしらの強さをね、行くぞポス」
「おう、任せとけ」
二匹はそう言うとステップを踏み出した。
ズン、タン ズン、タン ズン、タン ズン、タン
ズン、タン ズン、タン ズン、タン ズン、タン
そしてマキリモムに殴り掛かった
ドゴンッ!
凄まじい音とともに土煙が上がり地面には穴が開いていた。
「なかなかすばしっこい」
そこにいたはずのマキリモムは前に移動して避けていた。
「ほう、なかなかの威力。ゴリラですね」
マキリモムはゴリラの方を見向きもせずに自分の剣を眺めていた。
ブンッ ブンッ と剣を振り何かを確かめた後、鞘に戻す。
カチッ と音がしてマキリモムが消えた。
「ウハッ」
ゴリラの声が聞こえたかと思うと、穴からマキリモムが出て来た。
「まったく貴方達程度は鞘で十分ですよ。
さあ勇者、もう心の準備はできましたね。今から私に殺される準備が」
マキリモムは血の付いた鞘から剣を抜いた。