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モーラスはやっと自力で動けるようになった。
これまでは身体を使わないものばかりを練習してきたが、
これからは身体を使うものもやってみることにした。
身体強化の魔法を発動させ、練習ついでに探索も行い
まずは神殿、そして森の中や街の方まで出るようになり
どんどん行動範囲を広げていった。
正直モーラスには情報が足りなかった。
この喋るゴリラ達の事がいまいち理解できずに
ただ、魔法の練習ばかりをしていた日々だったが
ようやくこの世界の事が分かってきた。
この神殿の周りは森に囲まれており、その森を出ると
街並みが広がる。建物はしっかりとした石造りで、
住居区画と商業区画に分かれていた。
商業区画では市も開かれたりしており活気があった。
なかなかしっかりとした文明が築かれているのだが、
「ゴリラしかいねえ」
右も左もゴリラ、ゴリラ、ゴリラで少しへこんだ。
分かっていた事とはいえ実際に見て、確認してしまうと
ショックは大きかった。
自分はゴリラを救う勇者なのだと思うとまたへこんだ。
「モーラスどうしました」
神官長が声をかけて来た。
「どうして俺だけ違うの? 」
それは神官長に対して言った言葉では無かったのだが、
モーラスの中から出た本当の言葉だった。
「モーラス、この世界には人族が沢山いますよ」