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神殿の中で子供はピゴラだけだった。
周りには大人ばかりの生活にピゴラはうんざりしていたのだ。
同世代の子供と遊びたいが、
神殿長の子供という立場がそれを許さなかった。
ピゴラはそれでも仕方がない事なのだと、
父の後を継ぐ為には必要な事なのだと、
どうにか自分を納得させていた。
そんな生活の中に赤子が入ってきた。
そのなんとも不思議な生き物にピゴラは興味津々で、
成長していくその姿を見る事がピゴラの日課に加わり
毎日赤子の元へと通った。
「ほうら、モーラスごはんですよ」
モーラスと名付けられた人族の赤子はいつも眠っている。
それをいい事にピゴラはモーラスの身体を隈なく触ったり、
母親のように自分の胸を吸わせようとしたみたり、
ピゴラは自分の内から湧き出て来る感情を
抑える事が出来なくなっていた。
モーラスが成長して一人で動けるようになり、
いつの間にか何処かに行ってしまっている事が多くなった。
ある日、モーラスが怪我をして帰ってきた。
「モーラス! 」
それを見てピゴラはすぐに駆け寄った。
「大丈夫だよ、ちょっと転んだだけさ」
それを聞いてピゴラは思う
何て人族とは脆いのだろう
と、そしてこうも思った。
私が守ってあげないと