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エネミーズマンション  作者: HAL姉
2/3

エネミーズマンション2

声劇台本(2:0:2)

男性2人、不問2人、計4人用声劇台本です。

シリーズ物ですので、よろしければ順番にご使用下さいませ。

利用規約は設けておりませんのでご自由にお使い下さい。

録画等を残せる媒体でのご使用の際は残しておいて下さると助かります!

喜んで聞かせて頂きます!


(所要時間15分)

キャスト

ポリス(不問):

狼男:

ぬりかべ(男):

猫又(不問):



ポリス

「何という事でしょう…

突然の部署異動を告げられたかと思いきや、突き付けられた辞令(じれい)はとあるマンションの管理人…

しかし、そこはまさしく私にとっての楽園!

天が私に味方した、いいえ、これは運命だったのです!

こんなに素晴らしい日が来るなんて…

ふふふ、きっと日頃の行いが良いからですね」


狼男

「ブツクサとうるせぇ!」


ポリス

「ひぇっ、す、すみません……

いやぁ、どうにもこうにも興奮が()めやらぬってヤツでして。

あー、それでえぇと、どこへ向かっているんでしたっけ?」


狼男

「おら、着いたぞ」


ポリス

「ここは……?」


狼男

「このマンションは各部屋に、普通のマンションと同じくキッチンや風呂、トイレといった設備が備わっちゃいるが、日々の暮らしを自活出来ねぇヤツもいる。

ここはそういうヤツらを救済してくれる所だ」


ポリス

「救済?

……すみません、もう少し簡単にお話して頂けますか?」


狼男

「見れば分かる。

入るぞ」


ポリス

「は、はいっ」


ぬりかべ

「インチキとな?」


猫又

「そうにゃ!

今のは絶対にインチキにゃっ!」


ぬりかべ

「人聞きが悪いのう…」


猫又

「ここにヒトはいないにゃっ!!」


ぬりかべ

「ほれ、王手飛車(おうてひしゃ)取りじゃ」


猫又

「納得いかないのにゃ〜!」


狼男

「げっ、よりにもよって…」


ぬりかべ

「おや、狼男さんじゃないかい。

ここに来るなんて珍しい事もあるもんじゃ」


猫又

「まだ話は終わってないにゃ!」


ポリス

「おお…なんと…ここは天国ですか…!!

文献(ぶんけん)や想像通りの…いえ、それ以上です!!」


狼男

「よう、壁爺(かべじい)さん」


ぬりかべ

「これ、その呼び方はやめんか。

ワシは昨今(さっこん)ではとんと見ぬ漆喰(しっくい)仕上げじゃぞ?

江戸頃の腕の良い左官(さかん)が腕によりをかけてそれはもう目を見張る腕っぷしでもって」


猫又

「うでうでしつこいにゃっ!

うにゃ? 犬臭さに混じって人間の匂いがするにゃ。

ワンコ、おみゃーさん何連れてきたにゃ!?」


狼男

「ワンコじゃねぇ、俺は狼だ!

んで、こいつはーー…」


ぬりかべ

「おうおう、そんならワシも、ちゃんとぬりかべ様と呼ぶが良いぞ」


猫又

「壁爺、言葉の使い方間違ってるにゃ!」


ぬりかべ

「ぬりかべ様と呼ばんと返事せんぞい」


猫又

「じじいマジで面倒臭いにゃ!」


ポリス

「ふわぁ〜、何て事でしょう…」


狼男

「あーもう、取り敢えず紹介しとくぞ、壁爺さんに尻尾割れ」


猫又

「尻尾割れって呼び名はあんまりにゃ!

断固(だんこ)訴えるにゃ!」


ぬりかべ

「そうさな、身体的特徴(とくちょう)をあだ名にするのは分かりやすいが、差別にもなるからのう。

狼男さんや、猫又さんに謝りなさい」


猫又

「そうにゃそうにゃ!

謝るが良いぞだにゃ!」


狼男

「あー、こいつが今日からのここの管理人のポリ公だ」


ポリス

「はうあぁぁぁ……」


狼男

「まーたトリップしてやがんのか、てめぇ挨拶回りしてぇんだろ!?」


ポリス

「はっ、そうでした!

えー、本日からこのマンションの管理人を務めさせて頂きます!

何かお困りの際はいつでもお呼び下さい!」


猫又

「うにゃ、こいつ変わり者にゃ!」


ぬりかべ

「ほうほう、殊勝(しゅしょう)な人間の様じゃなぁ。

今までの者とは毛色(けいろ)が違うのう」


猫又

「壁爺、今までの管理人も皆毛色は真っ黒だったにゃ。

この人間もおんなじにゃ!」


狼男

「尻尾割れ、そういう意味じゃねぇ。

お前も慣用句勉強しとけ」


猫又

「尻尾割れって言うにゃ〜!

こう見えてワンコより200年以上長生きしてるにゃっ!

年上を(うやま)うにゃ!!」


ポリス

「はわぁ、プリプリ怒ってるの可愛い…」


ぬりかべ

「ふむ、お前さんは妖怪が好きなのじゃな」


ポリス

「ええそうです!

好きなんていうレベルではありません、私にとって皆さんは雲の上の存在なのです!

そんな方々にこうしてお会い出来る日が来るなんてーー…」


猫又

「ここは雲の上じゃないにゃ!」


狼男

「尻尾割れ、俺より200年長く生きてるんなら頼むから敬える様に賢くなってくれ…」


猫又

「にゃっ、馬鹿にするにゃ〜!!」


ポリス

「いやぁ、猫又さんはとっても可愛らしいし綺麗な三毛(みけ)ですねぇ。

抱っこしてもいいですか?」


猫又

「にゃっ!?

返事する前に抱っこするにゃ〜!」


ぬりかべ

「ほうほう、良かったのう猫又さん。

いつぞやは(あるじ)と死に別れてから抱き上げてくれる者がおらんと(なげ)いておったしのう」


猫又

「壁爺、余計(よけい)な事言うにゃっ!!」


狼男

「へぇ…尻尾割れには元々飼い主がいたのか」


ぬりかべ

「おや、狼男さんは知らなんだか?

猫又になるにはいくつか条件があるんじゃぞ」


狼男

「へぇ、例えば?」


ぬりかべ

「そうさのう…

ふむ、新しい管理人さんよ。

(ぬし)、妖怪好きと言うなら説明してくれるか」


ポリス

「ふわぁ、何て柔らかい毛並み…よーしよし、いい子いい子」


猫又

「や、やめっ……うにゃあ…」


狼男

「おいポリ公、猫又になる条件説明しやがれ!」


ポリス

「へっ?

あ、猫又ですか。

そうですね、諸説ありますが、日本では藤原家定(ふじわらのいえさだ)明月記(めいげつき)(しる)されたのが初出(はつで)と言われておりまして、山中に住まう(けもの)とーー…」


狼男

「あぁん?

そいつは違うぜ。

あれに書かれたのは俺の祖先らしいからな」


ポリス

「へっ、そうなのですか?」


狼男

「山中の獣に襲われた連中が帰り着いた村では、その後奇病が蔓延(まんえん)している。

それが狂犬病だって話でな」


ポリス

「となると、獣は山犬だったって事ですか」


狼男

「さぁな、俺も爺さんに聞いた話だ。

詳しくは覚えてねぇが」


ぬりかべ

「藤原家定か、久方(ひさかた)振りにその名を聞いたのう。

あやつはなかなかに面白い男じゃった」


猫又

「ふにゃあ、この管理人のテクニック、なかなかやるにゃ…」


狼男

「って、違ぇ!

俺が聞いたのは猫又になる条件の話だ!」


ぬりかべ

「おう、そうじゃったそうじゃった」


ポリス

「猫又になる条件ですか…

山中に住まう猫又は元々山神(やまがみ)として存在していたとされていますが、私が支持しているのは愛猫家(あいびょうか)達の話ですね!

長年連れ添った飼い猫が猫又になるっていう」


狼男

「へぇ。

で、飼い主を恨んで襲いかかんのか」


猫又

「そ、そんな事しないにゃっ!」


狼男

「ああん?」


ポリス

「化け猫と猫又を同一視(どういつし)する書物(しょもつ)もありますが、化け猫は人間に迫害(はくがい)された猫の怨念(おんねん)や恨みが化けたもの、猫又は愛された飼い猫が主人と離れたくない思いで変化した姿、と私は認識しております」


ぬりかべ

「妖怪、と言うと人間は大抵(たいてい)襲いかかってくる恐怖の対象としておるな」


狼男

「そうじゃねぇのもいるんだけどな」


猫又

「勉強不足にゃっ!」


狼男

「お前が言うな」


猫又

「にゃっ!?」


ポリス

「いやぁ、こうして皆さんのお話を聞けるなんて、本当に夢の様です!

ぬりかべさんのお話も是非聞かせて下さい!」


ぬりかべ

「ワシの話か、そうさのう…」


狼男

「壁爺さんは九十九神(つくもがみ)だろ」


ポリス

「えっ、妖怪じゃないんですか?」


猫又

「何でワンコが言っちゃうにゃ!

台無しにゃ!」


ぬりかべ

「ほうほう、いいんじゃいいんじゃ。

管理人さんはぬりかべという妖怪は知っておるな?」


ポリス

「え、ええ勿論(もちろん)

道行く人の前に立ちはだかる、どこまでも続く見えない壁、ですよね。

正体は、これも諸説ありますが狸やイタチなどと言われています」


ぬりかべ

「そうじゃ、一般的な妖怪としてのぬりかべはのう。

ワシは少し違っておってな、狼男さんが言った通り、九十九神なんじゃよ」


狼男

「人間が勝手に決めた分類だから、本質は(たい)して変わらねぇがな」


ポリス

「そうなんですか?」


猫又

「壁爺はこの猫又と一緒なのにゃ!

そこのワンコとは格が違うのにゃっ!」


狼男

「てめぇ、その喉元食いちぎってやろうか!」


猫又

「今の姿のワンコなんか怖くないにゃ〜ん」


ぬりかべ

「これこれ、そう挑発するでないぞ。

後で泣きを見る事になるのは目に見えとる」


ポリス

「九十九神って、人間の創作物が長い年月をかけて命を宿(やど)した姿、ですよね」


ぬりかべ

「うむ、(ひら)たく言えばその通りじゃ。

(ただ)しこれにもいくつか条件があってのう」


狼男

「腕のいい職人が魂を込め、更に長年(ながねん)大切にされねぇとなんだろ」


猫又

「さっきからワンコ大事な所持って行き過ぎにゃっ!」


ぬりかべ

「ほうほう、いいんじゃよ」


ポリス

「となると、ぬりかべさんは人間の前に立ち(ふさ)がったりはしないんですか?」


ぬりかべ

「しないのう」


猫又

「壁爺嘘ついたにゃ!

昨日やってたにゃ!」


狼男

「あー、俺も先週見たぜ。

若い人間の(めす)を閉じ込めてただろ」


ぬりかべ

「ほうほう、何の事かのう。

ワシにはさっぱり分からんぞい」


猫又

「人間の女の子ばっかり狙ってる助平(すけべい)じじいにゃっ!」


ポリス

「えぇっ!?

そうなんですか!?」


ぬりかべ

「言いがかりじゃぞ、そいつはきっと古狸(こり)仕業(しわざ)じゃろう」


猫又

「にゃっ、古狸のせいにしたにゃ!

(ひど)いにゃ、古狸はそんな事しないにゃ!」


ポリス

「こり?

あぁ、(たぬき)の妖怪ですね」


狼男

「あいつなら昨日は俺と一晩中()んでたな」


猫又

「ほらっ、やっぱり昨日見たのは壁爺だにゃっ!」


ぬりかべ

「ほうほう、これは一本取られたのう」


ポリス

「こちらのマンションには古狸さんもおられるんですか」


猫又

「そうにゃ!

古狸とは長い付き合いなのにゃっ!」


狼男

「そういや挨拶回りだってのに長居(ながい)しちまった。

そろそろ行くか」


猫又

「にゃっ、もう行っちゃうのにゃ?」


ぬりかべ

「何じゃ猫又さん、名残惜(なごりお)しそうじゃのう」


猫又

「べ、別に名残惜しくなんてないにゃっ!」


狼男

「何だ、まだ()で足りないってのか?」


猫又

「にゃっ!

ワンコは乱暴だからお断りにゃっ!!」


ポリス

「ふふ、良ろしければまた来ます!

そういえば、ここは救済の場だと(おっしゃ)ってましたけどどういう事です?」


狼男

「あぁ、ここは食堂だ。

猫又や壁爺さんは料理なんて出来ねぇからな」


ポリス

「へぇ、妖怪でも普通に食事するんですね」


狼男

「普通に食事をするってのが、ここにいる条件なんだよ」


ポリス

「条件、ですか」


ぬりかべ

「時代、というのかのう…

昔と違って、ワシらが存在しにくい世の中になってしもうた。

住処(すみか)を追われ、行き場の無くなったワシらは監視下(かんしか)に置かれる事になったんじゃ」


猫又

寝床(ねどこ)が無いと妖怪でも(こご)え死んじゃうにゃ!」


狼男

「最初に集められたのはごく(わず)かだったらしいが、妖怪達がここの事を伝達して住民が増えたって感じだな」


ポリス

「なるほど…

それがこの、エネミ…ええと、何でしたっけ」


猫又

「エネミーズマンションにゃっ!」


狼男

「さっきサキュバスにも聞いたのに覚えらんねぇのか…

鳥頭だな」


ポリス

「すみません、どうにも横文字を覚えるのが苦手で…」


猫又

「鳥頭?

管理人さんはどう見ても鳥じゃないにゃ!」


ぬりかべ

「ほうほう、猫又さんは確かにもうちっと勉強した方がいいのう」


猫又

「にゃっ、壁爺にまで言われたにゃ!!」


狼男

「んじゃあポリ公、そろそろ行くぞ」


ポリス

「あ、そうですね!

今度はどちらに?」


狼男

「もう1箇所(かしょ)、似た様な場所があんだよ」


ぬりかべ

「挨拶回りも大変じゃのう。

さて、ワシらもそろそろ()り出すとしようか」


猫又

「うにゃっ!」


ポリス

「えっ、どちらへ行かれるんです?

もう夜ですよ」


狼男

「夜だからだろ」


猫又

「そうにゃ!

人間とは違うのにゃん!」


ポリス

「なるほど…

ではお気を付けてお出掛(でか)け下さいね」


ぬりかべ

「ふうむ、やはり新しい管理人さんは変わり者じゃのう」


ポリス

「えっ、そうですか?」


猫又

「これから過ごしやすくなりそうなのにゃ〜!」


狼男

「おらっ、置いてくぞポリ公!」


ポリス

「はっ、はい〜、今行きますっ!」


猫又

「ワンコ、面倒事(めんどうごと)は嫌いな(くせ)に、何であんなに張り切ってるのにゃ?」


ぬりかべ

「ほうほう、あの人間を気に入ったんじゃろうて。

ではワシらも行こうかの」


猫又

「にゃっ、人間を(おど)かしにれっつらごーなのにゃ!!」




-To be continued-

ご使用有難うございました!

感想お待ちしています!!

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