エネミーズマンション1
声劇台本(2:1)(1:2)
3人用声劇台本です。
シリーズ物となります。
利用規約はありませんので、お好きな様にご使用下さい。
録画機能がある媒体でのご使用の際は、残して頂けると助かりますが強制ではありません。
連絡を下されば喜んで聞きに参ります。
(所要時間15分前後)
キャスト
ポリス(不問):
狼男:
サキュバス(女):
ポリス
「……何故、何故なんですか!
異動を命じられたのはまだ分かります、この職業ではよくある事ですしね。
しかし、何故新たな任務がマンションの管理人なんです?
私が夢見ていたのは、そう大それた事じゃありません。
田舎ののんびりした駐在所で、あ、おばあちゃん、大きな荷物ですねぇ、お手伝いしましょうか? なーんて、牧歌的な慎ましい仕事で…!
はぁ〜、取り敢えず、与えられた任務はこなさなければいけませんね。
まずはこのマンションの住人に挨拶しましょう」
間
ポリス
「えーと、101号室…表札がありませんね。
あぁ、最近何かと物騒ですし、地元みたいに留守宅でも鍵を掛けない様な田舎とは違うんですね、色々と。
では失礼の無い様に、ビシッと! 挨拶しなければ。
あぁ、警察手帳は出した方がいいでしょうか?
いやいや、それだと逮捕状を突きつけに来た、さながら刑事ドラマの警官ではありませんか。
初対面で威圧してはいけません。
はっ、それより、引っ越し蕎麦を用意すべきでは!?
え、うわぁっ!」
狼男
「うるっせぇ!
誰だ俺んちのドア前でぶつくさ言ってんのは!」
ポリス
「…え?」
狼男
「あぁん?
何だてめぇは……」
ポリス
「あ、あぁ…失礼致しました!
本官は、本日よりこのマンションの管理人を務めさせて頂く者でして。
住人の方々にご挨拶させて頂こうと、こうして馳せ参じた次第で」
狼男
「はん、新人のポリスか、てめぇ」
ポリス
「えっ、な、何故…」
狼男
「なぁんにも知らねぇ小物を毎度毎度送り込みやがるからなぁ、てめぇも大方数日で逃げ出すんだろうさ。
ここに来たポリ公はみぃんなすぐに音を上げちまう。
とっとと尻尾巻いて田舎に帰んな」
ポリス
「いいえ、そういう訳には参りません。
本官は、与えられた任務を放り出す様な事は致しませんからして!」
狼男
「へっ、口先だけなら何とでも言えらぁな。
おら、挨拶は済んだんだろ、とっとと失せろ」
ポリス
「いえ、まだ貴方のお名前を伺っておりませんし…」
狼男
「早く行け!
ちっ、もう日が暮れてきやがった…」
サキュバス
「さぁて、お仕事の時間…っと。
あらぁ、人間の匂い…?
あぁ、そういえば新しい管理人さんが来るって言ってたわねぇ」
狼男
「げっ、こいつまで来やがった…
ややこしくなりそうだ」
ポリス
「えーと、貴女は102号室の方ですね」
サキュバス
「そうよぉ。
宜しくねぇ、新人のポリスちゃん」
ポリス
「これからお仕事と仰っていましたね。
何をされていらっしゃるんですか?」
狼男
「そりゃ聞かねぇ方がいいぜ。
喰われたくなかったらな」
ポリス
「え、それはどういうーー…」
サキュバス
「あはっ、あんたに言われたくないわねぇ、それ。
ポリスちゃん、そろそろ日が暮れるから気を付けた方がいいわよ?
何せ今日は……うふふ。
その男が変身しちゃっても知らないからぁ」
ポリス
「変身…ですって?」
狼男
「こいつ、何も知らねぇでここに寄越されたらしいぜ。
前んとこで何やらかしたんだか知らねえが、全く、人間の方が俺らよりよっぽどタチ悪ぃな」
サキュバス
「あらら、そうなの。
それは可哀想に…
せめてこのマンションが何なのか、くらいは教えてあげるべきなのにねぇ」
ポリス
「あの、先程からお二人とも、何を話されているのか分からないのですが。
変身だとか、それに、人間の方がタチが悪いだなんて、まるでお二人が人間ではないかの様な…
いや、まさかね、そんな訳無いですよね」
狼男
「てめぇ、このマンションの名前くらいは知ってんだろ」
ポリス
「え、えぇ、辞令に書いてありましたから。
ええと、確か…エネ…エネ……すみません、横文字が苦手なもので」
サキュバス
「エネミーズマンション」
ポリス
「あぁそう、それです。
いやぁ、変わった名前だなぁと思いました」
狼男
「それで何も気付いてねぇのか、おめでたい頭してんな」
サキュバス
「こういう世界に疎ければ、分からないのも仕方ないわぁ。
ねぇ、新人のポリスちゃん?」
ポリス
「ええっと…こういう世界、とは?」
サキュバス
「うふふ、さっき、あたしの仕事を聞いたわよねぇ。
何だと思う?
ほら見てぇ、この格好で少しは気付かなぁい?」
ポリス
「えー、目のやり場に困ります、ね。
私は行った事ありませんが、お酒を出すお店で接客をされている方かなと。
いえ、偏見はありませんよ!
しかし、そんなに肌を出されて、風邪引いたりしませんか?」
狼男
「はっ、こいつぁ随分と天然な奴だな」
サキュバス
「あぁら、心配してくれるのぉ?
アナタ随分と優しいのねぇ。
でも大丈夫、あたし達は病気にはならないのぉ」
ポリス
「何ですって、病気にならないなんて、それは羨ましい!」
狼男
「あーあ、こんなんでここの管理人なんて務まんのかよ…」
ポリス
「ほ、本官は与えられた任務は全うします!
例え本来の職務から外れたマンションの管理人だとしても!」
狼男
「あぁ、そこは安心しろ。
外れちゃいねぇ」
サキュバス
「そうねぇ、ちゃあんと治安を護って貰わないとぉ」
ポリス
「えっ、あ、そうですね。
このマンションの警備も大事な事でした、これは失言を…」
サキュバス
「違うわぁ、アナタが護らなきゃいけないのは、ここの住人じゃなくてよぉ?」
ポリス
「ここの住人じゃない?
いえいえ、管理人ですから、ここの住人をお護りするのが仕事でしょう?」
狼男
「てめぇの仕事は、寧ろ逆だ」
サキュバス
「そうそう、ここの住人『から』人間を護るのよぉ?」
ポリス
「は……ははっ、やめて下さいよ。
そんな、皆さんが犯罪者みたいな事を言うのは」
狼男
「犯罪者、ではねぇな」
ポリス
「そ、そうですよね」
サキュバス
「そうねぇ、何せ法に縛られてないものぉ」
ポリス
「へっ、いや何を仰ってるんですか。
法に縛られない人がいるなんてそんな、有り得ません!」
サキュバス
「あたし達が…ヒト、じゃなかったらぁ?」
ポリス
「えっ…?」
狼男
「おい、いつまでも焦らしてやるな。
こいつには回りくどい言い回し通じねぇ。
ハッキリ言ってやれよ」
サキュバス
「だぁって、面白いんだもの。
それにあたしは、焦らして焦らして、それからう〜んと気持ちよぉくしてあげるのがお仕事なのよぉ?
それにぃ、こういうのは実際に見せてあげた方が…ねぇ?」
狼男
「ちっ、時間が無ぇ…」
ポリス
「あっ、お忙しい時にお邪魔致しましたか。
それはすみませんでした。
続きはまた、お時間のある時にで構いませんので」
狼男
「月が…のぼっちまう……っ!」
ポリス
「月?
あぁ、今日は綺麗な満月でーー…」
狼男
「ぐ、ぐおぉぉぉぉぉ!」
ポリス
「なっ、何ですっ!?」
サキュバス
「うふふ…
ポリスちゃん、すこぉし離れてた方がいいわよぉ?
服が破けて、ボタンが飛んでくるかもしれないからぁ」
ポリス
「いえ、そういう訳にはいきません!
苦しそうじゃないですか!
だ、大丈夫ですか、今、救急車の手配をーー…」
狼男
「ぐあぁぁぁぁあ!」
ポリス
「うわぁっ、何ですかこれ、全身毛だらけに!」
サキュバス
「あぁん、久し振りだわぁ、このモフモフが堪らないのよねぇ」
狼男
「ぐぅっ……触ルなっ!」
サキュバス
「いいじゃなぁい、少しくらい。
いつもお仕事の時間と被るから、こうして拝めるチャンスなかなか無いんだものぉ」
ポリス
「あわ、あわわわわ」
狼男
「人間ノ匂い……グルるるる…」
ポリス
「ひいっ!」
サキュバス
「この人間は食べちゃダメよぉ?」
ポリス
「まさか……これって…狼男…!?」
狼男
「グァァァア!!」
ポリス
「うわぁぁぁあ!」
サキュバス
「ポチ、おすわり!」
狼男
「クウン!」
サキュバス
「お手!」
狼男
「ワウン!」
サキュバス
「よ〜し、いいこいいこ」
ポリス
「…へ?」
サキュバス
「うふふ、ビックリさせちゃってごめんなさいねぇ。
新人のポリスちゃんのイイ顔が見たかったからぁ」
狼男
「はっ、俺は一体何を…!?
えぇい、手を離せっ!」
ポリス
「えぇっ……戻った?」
サキュバス
「この子は半妖、ヒトとの混血なのよぉ。
変身しちゃっても、ご主人様の命令ですぐ戻れる仕様なのぉ」
狼男
「仕様言うな!
それにてめぇなんかご主人様じゃねぇ!」
サキュバス
「あぁら、どの口がそんな悪い事言うのかしらぁ。
お仕置きが必要みたいねぇ?」
狼男
「ぐっ…」
ポリス
「えぇと……と、とにかく少し分かりました、こちらが狼男さんで、貴女がそのご主人様…なんですね?」
サキュバス
「うぅん、ちょっと足りないわねぇ。
あたしが今この子のご主人様をしているのは、単純にお隣りさんだからよぉ。
満月の度に隣りで騒がれたら困るでしょお?
このモフモフは堪らないけど、どうせなら美味しい精気をくれる人間のご主人様になりたいわねぇ」
狼男
「俺だっててめぇなんか願い下げだ!
この雌豚め!」
ポリス
「な、何て事仰るんですか!
名誉毀損罪で訴えられますよ!」
狼男
「はん、訴えられるもんなら訴えてみやがれ」
サキュバス
「あんたみたいな獣に、あたしの生業を雌豚呼ばわりされる筋合いは無いわよぉ」
ポリス
「生業…はっ、そういえば先程人間の精気を…とか言ってましたけど、まさか貴女は…!?」
狼男
「こいつは人間の男の夢に入り込んで精気を吸い尽くす、サキュバスだ」
ポリス
「サキュバス…!?
す、凄いです!!」
サキュバス
「あらぁ?
さっきは狼男にあんなに怯えてたのに、目の色が変わったわねぇ」
ポリス
「ええまぁ、先程は流石に突然の事でしたし、何せ命の危機かと思いましたからね。
いやぁ、しかし、こうして本物を拝める日が来るとは…!」
狼男
「本物だと!?」
ポリス
「幼少の頃からずっと、憧れていたんです。
狼男、サキュバス、ヴァンパイア……
日本の妖怪も素敵ですよねぇ。
天狗や河童、ぬりかべなんてのも!
そもそもは人間が作り出した、超常現象を具現化した物でーー…」
サキュバス
「あらぁ、語り始めちゃったわぁ」
狼男
「はん、なるほどな。
こいつがここへ寄越されたのは、オタクだったからか」
サキュバス
「何も知らされてなかったのにも納得したわぁ。
最初は心配したけど、これなら大丈夫そうねぇ」
狼男
「前任者は初日に尻尾巻いて逃げ出しやがったからなぁ」
サキュバス
「やぁだ、人間はあんたと違って尻尾なんか無いわよぉ?」
狼男
「慣用句だろ、知らねぇのか」
サキュバス
「日本語の慣用句なんて知らなぁい」
ポリス
「であるからして、説明の出来ない事象に名を付け、存在を確立した為に生まれたのがアナタ達なのです!
ですが、所詮は想像の産物でしかない。
一生涯出会える事はないと悲しみに暮れていましたが、今まさに、目の前に!」
狼男
「おい、どうすんだこれ」
サキュバス
「熱くなっちゃってるわねぇ…
何にせよ、あたしはもうお仕事の時間だからぁ、後は任せたわぁ」
狼男
「なっ、置いてくな!」
サキュバス
「あんたが案内したげなさぁい?
半妖なんだから、変身は1回きりでしょお。
じゃあねぇ、新人のポリスちゃん」
ポリス
「えっ、と、飛んだ!?
うわぁ、本当にサキュバスなんですね!
何て素晴らしい…」
狼男
「ちっ、仕方ねぇ…
おいてめぇ、いつまでもボーッとしてんじゃねえ、行くぞ」
ポリス
「ボーッとしていたんじゃありません!
サキュバスさんの翼に見とれていたんです!」
狼男
「んなもん、これからいくらでも見れんだろうがよ」
ポリス
「いくらでも見られるなんて…夢の様です…!
あっ、で、行くと仰ってましたがどちらへ?」
狼男
「てめぇ、挨拶回りしてぇんだろ?
ひと部屋ずつ回ってたら夜が明けちまわぁ。
めんどくせぇから手っ取り早く済ませてやる」
ポリス
「何と、それは助かります!」
狼男
「この時間なら、あそこにアイツらが集まってる筈だ。
今日は籠る予定だったが、まぁいい。
顔出しついでだ」
ポリス
「すみません、お手数お掛けします。
で、アイツらというのは?」
狼男
「行けば分かる、着いてこい」
ポリス
「は、はいっ!!」
-to be continued-
有難うございました!
感想お待ちしています!