表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/15

9:決戦の時




 約3万体ものモンスターによる大侵攻。そのニュースは瞬く間に街中に広がり、人々はたちまち大パニックとなった。

 衛兵による誘導の下、多くの者たちが急いで避難を進めていくが、それを行うのは一般の民衆のみだ。


 俺を含めた4000人以上の冒険者たちは、街壁の外でモンスターの群れを待ち構えていた。

 そんな俺たちへとギルドの受付嬢が言い放つ。


「――冒険者の皆さま、領主様よりお言葉をたまわりましたッ! “戦士たちよ、死力を尽くしてアーカムの街を防衛なさいッ! 参戦した者には無条件で50万、活躍した者には1000万ゴールドの賞与を与えましょうッ!”とのことです!」


『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――ッ!!!』


 その言葉を聞いた瞬間、俺たちは興奮の叫びを張り上げた!


 冒険者からしてみれば、これは名を上げるためのまたとないチャンスだ。特にアーカムは血気盛んな駆け出し冒険者の集まる街。ここで逃げ出すような賢い奴はいない。

 ギラギラと瞳を輝かせる俺たちへと、受付嬢は言葉を続ける。


「この異変に気付くきっかけとなったのは、特殊モンスター『暴食屍人(グール)』の出現でした」


(ってえッ!? 俺!?)


 ギョっとする俺を他所に、受付嬢は語りだした。

 その最高にイケメンなグールさんをなぶり殺すべく、30名ほどの冒険者たちが≪ルルイエ洞窟≫を練り歩いていた時のことだ。突如としてダンジョン全体が振動し、壁や足元から目に見えるほど濃厚な魔素が噴出してきたらしい。

 彼らは急いでダンジョンから脱出したが、困ったことに魔素までもが洞窟の外の森へと漏れ出してきたのだ。


「――高濃度の魔素が森に広がった影響で、多数の動物たちが瞬く間に魔物化を開始したそうです。ゆえに正直なところを申し上げますと……モンスター3万体というのは、ダンジョン付近の生体数からざっと予測しただけの、最低限・・・の数字でして……」


 尻すぼみになっていく受付嬢の声に、血気盛んだった冒険者たちの顔にも恐怖と不安が走り始めた。

 だってこっちの戦力、衛兵部隊を含めても5000人もいないしな。ただでさえ絶望的だった戦力差がさらに開いたとなれば、ビビる奴も出てくるだろう。


「あっ、イタタタタ……あーなんかお腹が痛くなってきたな~……! これじゃあ戦うのはキツいかなー!」

「カァー! 昨日2時間しか寝てないから辛いわー! マジで2時間しか寝てないからなー! これちょっと戦うの無理だわ~!」

「本当は戦いたかったんだが、膝の古傷が開いてしまってな……」


 勝ち目が皆無なことを悟るや、半数以上の冒険者たちが謎の状態異常を起こし始めやがった。うん……なんか戦う前から戦線が崩壊を開始したんだけど、これも魔物の仕業なのかな……?


(まぁ仕方ないか。特に駆け出しの冒険者たちなんて、まだまだ精神的に未熟だもんなぁ……)


 そうしてアーカムが滅びそうになっていた時だ。『実は身体付きがとんでもないランキング』第一位を独占している馴染みの受付嬢が、顔を真っ赤にしながら頭を下げてきた。

 ボインと胸を揺らしながら、涙ながらに彼女は叫ぶ。


「みなさまどうか戦ってくださいッ! 私もこの場に残りますからッ!」


『いいやお嬢さん、ここは俺たちに任せてくれッッッ!!!』


 ……美女に頼られるというシチュエーションに、一瞬にしてやる気を取り戻す冒険者たち。

 アホだなぁと思いつつも、気付けば俺も固く拳を握り締めていた。


(よし……やってやるか!)


 ――どうやら屍人になったところで、男心というのは全く腐りはしないらしい。


 絶望的な大決戦を前に、俺たちは熱く闘志を燃やしたのだった。



ブックマークにご感想、お待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=551233604&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ