15:化物の家
――魔素嗜好症。それは、今から300年ほど前より発生した原因不明の先天性疾患とされている。
この病を持って生まれた子供は、通常の食事だけでは栄養を満足に摂りきることが出来ず、10歳を迎えるころには餓死してしまうとされている。
そんな彼らを満たすことが出来るのは、『旧神教』より摂取することを禁じられている魔物の血肉のみだった。
こうなれば後は決まったようなものだ。
魔物の血肉を好んで食すというおぞましさから、旧神教上層部は魔素嗜好症患者を“魔物の魂に憑りつかれた異端者”と決定。この世に産まれたことが罪として、発見次第葬るように国中に発令を出したのだった。
……それと同時に、匿う者も死刑に処すと。
◆ ◇ ◆
「――トゥルーデ家の領主になってから約半年。私は様々な手を尽くし、各地から魔素嗜好症の子供たちを集め続けました。
私以外に彼女たちの存在を知っているのは、この屋敷にいる数名のメイドだけ。普段は私も協力し、この子たちの世話をしています」
小さな体で子供たちを抱き締めながら、クラリスは切実そうな表情で語る。
「クラリス……」
「ねぇクロウ様……おかしいとは思いませんか!? 産まれたことが罪だなんて酷すぎますよッ! この子たちはただ生きているだけなのに……それなのに、『魔物憑き』だのと馬鹿げたことを言われ、問答無用で殺されてしまうなんて……っ!」
彼女の青い瞳から、はらはらと悲しみの涙が零れ落ちた。その痛ましい姿に、俺の胸にも熱い思いが込み上げてくる。
(そうか……この子はずっと、小さな命を守るために頑張り続けてきたのか……)
メリットなんてどこにもない。魔素嗜好症の子供たちを匿っているなんてバレたら、間違いなく死刑に処されてしまうだろう。
天涯孤独で後ろ盾もなく、他の貴族たちからは目の敵にされているというのに、クラリスはそんな恐怖まで背負って生きてきたのか……!
俺は思わず、彼女のことを覆いかぶさるように抱き締めた。
「ク、クロウ様……っ?」
「ごめんな、クラリス。だけど今はこうさせてくれ。……あまりにもキミが健気すぎて、このままじゃ折れてしまいそうだったから……」
彼女の背中に両手を回し、その首筋へと顔を埋めた。
ミルクのような甘く幼い少女の匂いが俺を満たし、服越しに伝わってくる彼女の体温が俺の心を熱くさせていく――!
(この子のことを……守らなくちゃ……!)
俺はこの時、屍人の身体を与えてくれた『九頭竜』に対して心の底から感謝した。
ああ、もはや否定なんてしないさ。アイツのおかげで俺は強くなれた。今の俺なら、この健気で優しい少女を守ることが出来るのだからッ!
俺はクラリスの肩をしっかりと掴み、面と向かって宣誓する。
「決めたよクラリス。俺は、キミのことを守りたい。どんな困難が待ち受けているとしても、俺はキミの剣でありたい。だから……専属冒険者としての話、どうか受けさせてくれないか?」
「っ、クロウ様……! はいっ、こちらこそどうかよろしくお願いします!」
泣き濡れていた彼女の表情が、花開いたような笑顔に変わった。それだけで、俺の心に歓喜の情が沸き起こる――!
(はぁ、クラリス……なんて美しく、愛おしいんだ……っ! 俺だけの姫君、クラリス・トゥルーデッ!)
駄目だ――もはや自分が抑えられそうになかった。彼女に対する愛情が、ドクドクととめどなく湧き上がっていく。視界に映り込むクラリスの桜色の唇から目が離せない。
ああ、彼女の唇は……その首筋は――そしてぷっくりとした胸の先端は、一体どんな味がするんだろうか……!
「クラリス……クラリス・トゥルーデ……!」
さぁ、『ヤってしまえ』、『繋がってしまえ』、『心も身体も堕ちてしまえ』……!
そうして俺が衝動のままに、彼女の唇へと顔を寄せていった――その時、
「むぎゅぅー! パパ、さっきから苦しい~!」「ママとなにしようとしてるの!? チュウ!? チュウ!?」「やーらしー!」
――あっ、メスガキ軍団のこと完全に忘れてた!!!
視線を下げれば、クラリスと俺に挟み込まれた少女たちが抗議の視線を向けていた。周囲の連中も、興味深そうな目で俺たちのことを見ている。
(しまった……俺、子供たちの前で何しようとしてたんだよ……! くそっ、しっかりしろ俺ッ!)
一体どうしちまったんだ……さっきまでの俺は明らかにおかしかった。危うく犯罪者になるところだったぞ。
もしかしてこれも、屍人の身体になった影響なのか? つまりクトゥルーのせいってことか!? ええい、やっぱりお前のことは嫌いだ!
そうして自分の異常に戸惑う俺を、クラリスは微笑ましげに見つめてくる。
「ふふふ……何をされるつもりだったのかは知りませんが、こちらは別に構いませんよ? ……私は、クロウ様のこと嫌いじゃないですから」
「んなっ!?」
こ、このメスガキがー! 大人をからかいやがって!!!
くそっ、いつか絶対に『孕ませ』――じゃなくて、教育してやるからなチクショウ!
そう決意した俺のことを煽るように、メスガキ共が一斉にすり寄ってくる。
「パパ、チュウしないのー!?」「はやくはやく~!」「ヤっちゃえヤっちゃえー!」「クトゥーママに完全におちちゃえー!」
「ええいっ、うるさいわメスガキ共ーッ!」
――それからはもう大騒ぎだ。
元気満々な子供たちを、こちらも全力で相手してやった。全員で敷地内の庭に飛び出すと、強くなった身体能力をフルに活かし、追いかけっこから肩車から高い高いまで、知っている限りの遊びを全部子供たちに実践してやった。
「オラァッ! たかいたかーーーーーーい!」
「キャハハハッ! みてみてクトゥーママ、わたしとんでるよー! まるで昔みたいッ!」
ときおり変なことを言う子もいるが、みんな大喜びな様子だった。クラリス曰く、彼女たちは自分と数名のメイドだけで世話しているため、あまり力の必要な遊びはさせてあげることが出来なかったそうだ。この子たちに父性を教えてあげるためにも、ずっと男手が欲しかったのだと彼女は言う。
なるほどな……それで俺のことを『パパ』って紹介したのか。よし、それなら今日は嫌というほど遊んでやるか!
「よーしお前ら! 今日からは思う存分遊んでやるし、魔物の肉だってお腹いっぱい食べさせてやるからなー!」
『わーーーーーーーーーい!!!』
俺の一声に、無邪気にはしゃぐ子供たち。
その愛らしい姿を見ながらつくづく思った。こんなに可愛い子たちのことを、『魔物憑き』だのと言ったのはどこのどいつだと。
(旧神教の連中、本当に許せないな……っ!)
まったく、難癖をつけるのも大概にしろってんだ。
魔素嗜好症という病が――伝説の魔物『九頭竜』と、その配下である魔物たちが死んだ年から広がり始めたモノだからってな。
読者の皆様、いつもご愛読ありがとうございます。
急な話になりますが、ゾンビキングサガはノクターンに移動することになりました(はい、運営に怒られました)。
それに伴い、こちらの小説は二月の初めをもって削除することになってしまいます。
たくさんのブックマークやご評価、ご感想にレビューをいただいたのにもかかわらず、このたびは大変申し訳ございませんでした……!
今後はこのようなことがないよう、心から反省してまいります……。
・追伸
ノクターン版ゾンビキングサガには追記修正を加え、三話からは【姉妹〇殺・大量脳内射〇】描写などオリジナル展開をモリっと盛り込んでおります!!!
エロパートがある回にはサブタイトルに『第7話:異国の商人【少女買〇・乳内〇精】』という感じでプレイ内容を書きこんでおりますので、「エロだけ見せろやこの馬路まん〇野郎がッ!」って人は【】が付いてる回だけを覗いてくださればオッケーです! タイトルは変えておりませんので、興味のある方は「ノクターン ゾンビキングサガ」で検索を!
未成年の方は大人になってからよろしくどうぞですッッッ!




