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冥界戦国余禄  作者: 今谷とーしろー


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3/6

生者必滅の章

陸 謀略

 信長と光秀。二人だけの密談を終えて、他の家臣たちも呼びこまれた。信長は当然上座に移り、光秀は左手(信長から見ると右側)の最上位に座る。助命されたばかりか主君の隣に坐している左馬助秀満と溝尾茂朝は状況がつかめずに呆気に取られている。

 右手の筆頭には信長の弟信治。続いて末弟の長利と森可成。これが信長がこの地に降り立って最初の軍議となった。

「当面我らが拠点とすべき二カ国、近江と丹波についての情勢をまとめる。先ずは近江に付いて」

 兄信長に促されて信治が説明を始めた。

「近江は南に六角家、北に京極家と長く二分されて来ました。現状では若干北の京極家が優勢ではありますが、京極家には一気に攻勢に出られない内部事情が有ります。それが京極軍の多数派を占める浅井とそれに不満を持つ反浅井勢力の対立」

 京極家では浅井派と反浅井派が拮抗して推移していたが、現世に置いて小谷城が落城し、浅井長政とその父久政らが大量にこちらの地にやって来てからは浅井派が圧倒的になっていた。しかし浅井派のみでは南の六角勢と対峙するには足りず、反浅井勢が常に足を引っ張ると言う、

「一種の三竦み状態が形成されてはや十年に成ろうとしています。そして近江の地形条件も決戦を阻む要因の一つです。すなわち中央に位置する琵琶の湖の存在です」

 戦いの主正面は広い平地が広がる湖東であるが、こちらに全力を注ぐと手薄な湖西を回ってくる別働隊に背後を突かれかねない。

「これを打開するには単純に相手の二倍の兵力を用意して東西両方から進軍すれば良い。そして我らの介入によりその条件が整う事となります」

「問題はどちらに付くか。その一点ですな」

 と光秀。

「それはこれまでの関係から言っても六角に」

 と可成が言うが、

「六角を捨てて京極へと言うのではありません。ただ我が軍が参戦した場合、浅井親子が全軍をこちらにぶつけて来る恐れもある。京極家内部の反浅井勢力と繋ぎを付けて切り崩しを計るのが上策と思われます」

「次に丹波だが」

 と結論を出さずに話を前に進める信長。これは特に珍しいことではない。がこれまでと異なるのはこの後だ。信長は自ら足を運んで訊きつけてきた丹波の情勢に付いて説明を始めた。そして、

「どう思う?」

 と光秀に意見を求めた。

「こちらはあからさまに判りやすい三竦み状態ですね」

 と腕組みをして、

「確か波多野兄弟は安土へ送ってそこで処刑されましたな」

「そうであったな」

 信長は表情を曇らせた。

「で有れば二人の身柄は六角の手中に有るのでは?」

「それで?」

「二人を六角から貰い受けて、これを利用して波多野と赤井を戦わせます」

「良かろう。丹波の方はお前に任せる」

 六角との交渉で六角家に囚われていた波多野秀治と弟の秀尚は織田家に引き渡された。

「またこの様な形で再会するとは思いませんでした」

 と光秀。

「我らをどうする積りだ?」

 と秀治。

「丹波へ御同道願います。どうなるかは、あちらの出方次第」

 二人を縛ったままにわか拵えの輿に乗せて運ぶ。光秀に付き従うのは津田長利とその指揮下の兵三百。途中で信忠がまとめた山崎の兵と合流してそのまま丹波へ向かう予定である。

 両者が出会ったのは愛宕山の麓辺りで有った。

「これは愛宕権現のお導きかな」

 と笑う光秀。毛を剃りあげて坊主頭に成っている。

「日向か。父上とはもう会ったのだな」

「丹波の再征伐を仰せつかった所です。中将様もお役目を果たされたようで」

「うむ」

「兄上より、丹波へ同道せよとの御指示だ」

 と長利が口を挟む。

「このままですか?」

 首を傾げる信忠に、

「ご心配なく。その兵は使いません」

 と光秀。

「それよりも兵はいかほど集まりましたか?」

「明智方が三千、羽柴方が同じく三千」

「天下を分かつ大激戦でしからな」

 と感慨深い光秀。

 信忠の下にいる部隊長三名の兵が合わせて九百。光秀ともに来た兵が三百。そして新たに加わった六千を加えて七千二百の大軍勢となって丹波口を進む。亀山で待ち構える津田信澄の六百と合流。そこで、

「十五郎か」

 元は光秀の寄騎であった摂津衆中川・高山両隊に攻められて亀山城は落城した。その時城にいた光秀の嫡男十五郎光慶も自刃して果てた。

「父上。お久しゅうございます」

 ここで兵の再編成。六千の兵を千ずつの六隊に分けて、四人の部隊長、信忠の寄騎である梶原と団、信忠の弟信房と叔父の長利が其々預かり、残りの二千は信忠と光秀のいる本陣。これを纏めるのは山崎で討死した明智軍の将、藤田伝五郎行政と伊勢伊勢守貞興である。

「取り敢えずの編成です。上様の元へ戻ってからもう一度組み直しますので」

 と光秀は言う。

「この兵は使わぬ、と言ったな」

「使いません。恐らく合戦には成りますまいよ」

 軍勢は内藤家の守る八木城下へと進む。城をぐるりと取り囲み、内藤家の三代と対面する。隠居の貞正と現当主の国貞、そしてその娘婿宗勝。かの松永久秀の実弟で、婿養子と言っても国貞の死んだ後の押し掛け婿である。宗勝の死後、国貞の実子と宗勝との間で相続争いが有ったのだが、それは彼らの知るところでは無い。

「こちらは織田前ノ右府様の御嫡男で三位中将様である。そしてそれがしは副将を務める惟任日向守。現世でこの八木城を落としたモノです」

 と笑う。

「隠しても仕方ないでしょう。この中には我が軍が直接手に掛けた兵も見受けられますので」

「我が息子は如何した?」

 と国貞。

「助命して追放致した。武器は捨てたであろうから、この先ここへ落ちて来ることは無いで有りましょう」

「さようか」

 安堵と寂しさとが入り混じった表情であった。

「では行って参ります」

 光秀は波多野兄弟だけを伴って矢上城へと向かう。もちろん彼らを運ぶ輿の担ぎ手だけは同行するが。

「数で力押しすれば落とせるのでは?」

 と言う信忠に、

「駄目でしょう。新たに加わった兵はこの地での戦いに慣れておりません」

 と否定する光秀。

「この地では槍で突くよりも刀で斬る方が有効。しかし織田家の兵はその様な接近戦は不得手です」

 だからこそ長槍を用いたり鉄砲を導入したりと工夫を重ねてきたのである。

 矢上城外で波多野の当主稙通と二人の息子元秀と晴通と対峙する光秀。彼が連れてきた兄弟の父が晴通である。

「共に黒井城を攻めましょう」

 と誘う光秀に、

「我らを使い捨てにする積りか」

 と憤る晴通。

「わしは赤井家とは姻戚ぞ」

 と憮然とする元秀。

「しかし御息女はこの地には居られぬ」

 と意に介さない光秀。

「我らが拒めば如何する?」

 と稙通が問うと、

「その場合には黒井城へ言って同じ申し出をするでしょう。我らと組んでこの矢上城を攻めようと」

 と平然と言い放つ光秀。

「承知した」

 稙通は敢然として受け入れた。

「では二人の内一人をお返しする。兄か弟か、どちらが宜しいか?」


漆 黒井城の戦い

 それは奇妙な戦いであった。

 光秀は波多野の出陣を見届けると、一旦八木城に戻って軍を黒井城へと向けた。黒井城の赤井軍へと猛然と攻めかかる波多野軍。その背後に展開する織田軍。傍目には後詰に見えるが、実態は前衛の波多野が逃げ出さないように見張る督戦隊だ。

 追い詰められているのは攻め込まれている赤井家も同じ。攻めよせる波多野軍を退けても、その後にその四倍になる織田軍が控えているのだ。

「随分と恨まれたものだな」

 と苦笑する父時家に、

「申し訳ありません」

 と謝る息子直正。

「こちらは良いとばっちりだ」

 と愚痴る兄家清。彼は信長の台頭以前に討死しているので織田家との確執を知らない。

「この猛攻を凌げれば、わしの首一つで織田家とは話が付くかもしれません。しかしその前に波多野に取られる訳にはいきませんな」

 一方、後方で見つめる織田軍本陣では、

「日向殿、わしも戦いに参加させて下さい」

 一人残された秀治がそう願い出てきた。攻めている波多野軍の勢いが明らかに落ちて来ていたのだ。

「今更貴殿一人が加わった所で戦況は変わりませんよ」

 波多野稙通が兄では無く弟を選んだのは、戻ってくれば確実に死ぬからだったが、

「ここで私が一人生き残った所で、次の世代が残せる訳ではない」

「そうですね。如何しますか、中将様」

「わしが決めるのか?」

「この軍の総大将は中将様ですので」

「では、自由にさせてやれ。但し武器は戦場で調達してくれ」

「感謝します」

 波多野秀治は一族と共に散る為に前線へ向かった。


 波多野兵が全て倒れた後、残った赤井兵は二百弱。力尽きた兵はすべて灰に成って消えた。

「これで彼らを排除すれば、丹波は内藤家のモノです」

 と光秀。

 内藤軍が動こうとすると、赤井軍から将が一人歩み出てきた。

「それがしの首と引き換えに兵を助けて頂きたい」

 丹波の赤鬼と称された赤井直正である。

「久しいな、悪右衛門殿。父上は御無事か?」

 と光秀。

「残念ながら父も兄も力尽き申した」

「それは困った。残った赤井兵を纏める将が居ないではないか」

「では悪右衛門殿に率いて貰うしかないな」

 と乗っかる信忠。

「何と?」

「生き残った赤井兵はそっくり我が旗本として迎え入れる。これで丹波に残るのは内藤家の兵のみと言う事だ」

 直正は膝をついて、

「仰せに従いましょう」

「お待ちを」

 と異議を唱えたのが内藤宗勝。

「その悪右衛門殿は我が敵」

「それを言うなら貴殿は我が兄の敵だ」

「それがしはこの戦いが終わったら丹波を去って織田家に随身したかったんのに」

「内藤軍をそっくり連れて行くと丹波が空っぽになってしまうが、貴殿一人なら構いませんよ」

 と言う事で宗勝も同道する事となった。

「内藤家を出るにあたって名を戻そうと思います」

「貴殿の旧姓は確か」

「松永長頼。あの将軍殺しの松永弾正の弟で御座る」

「道理で見覚えが有ると思った」


捌 京極騒乱

 丹波を平定した信忠軍は近江坂本へとの帰途に付いた。その途上、現れたのは、

「内蔵助ではないか」

 光秀の重臣斉藤内蔵助利三。左馬助秀満と並ぶ双璧で、本能寺への攻撃の先陣を切った人物だ。それだけに執拗な探索を受けて六条河原で斬首の上に磔にされたと言う。それだけに首謀者である主君と、その犠牲者が並んでやって来た事に困惑している様子だ。

「お前も生き延びられなかったか」

 と声を書けつつ、

「お前の望み通り、四国征伐は中止に成った。それで由とせよ」

 と諭されてひとまず一団に加わった。

 坂本城では同僚の秀満が出迎えてくれた。

「上様がお待ちです」

 光秀と信忠は奥へ歩み去った。

「どうなっている?」

 と訊ねる利三に、

「雨降って地固まると言うところか」

 と返す秀満。

「我らが殿と上様は、元々考え方が近かった。上様も一度死んで丸くなり、殿も気鬱が散じてなにやら晴々とされて居る」


 一方の奥の間では、

「大義であった」

 報告を受けて満足そうな信長。

「六千から二千を選りすぐって我が馬廻りに加える。残りは中将にもそこから千八百を取って、丹波兵と合わせて二千を任せる」

 それ以外の配分に付いては後ほど。

「六角とは話が付いた」

 安土城の引き渡しの件だ。

「江北の京極領は我らが取り、六角は兵を南に進めて伊勢と伊賀を切り取る事で同盟が成立した」

「随分と気前が宜しいですね」

 と光秀に言われ、

「伊勢は我らに恨みを持つ北畠が居るし、また伊賀に至ってはかなり手厳しい処分を行ったからな。余が手を出さぬ方が良い」

 兵力を大幅に増やして再編成。信長本人は最初の五百に加え、宇佐山衆と堅田衆から三百。それに山崎の兵から千を加えて千八百。嫡男信忠が丹波赤井兵二百と山崎兵八百で千。それに次ぐのが津田信澄で最初の六百に二百を加えて八百。信長の弟信治と長利がそれぞれ六百。息子の信房が五百。譜代衆として森可成が六百。これには息子の長隆と長氏のそれぞれ百が含まれる。斉藤利治、梶原景久、団忠正がそれぞれ百ずつ増やして四百。そして残る千は坂本城の守備兵として光秀の旗下に置かれ、彼はそれを半分に分けて秀満と利三に任せた。

 信長は本軍と譜代衆四将の軍を伴って安土城へ入城した。信長が京へ向かったのが五月の末。約一月ぶりの帰還となった。その途上、瀬田の唐橋を渡ったが、

「現世ではこの橋が無くて難儀しました」

 と苦笑する光秀。山岡景隆が光秀の渡河を阻む為に焼き落としたのである。

 城外で待ち受けていたのは蒲生定秀。元六角家臣だが、信長の上洛戦で当主親子が居城を捨てて逃走すると、信長に随身した。織田と六角の間を調停するのにはうってつけの人物であった。

「三年ぶりだな」

「こんなに早くお目に掛かる事に成るとは思いもしませんでした」

 謁見の間には六角の当主定頼。六角家の全盛期を築いた名君であるが、その死から二十年も経たずに六角家が滅ぶとは思いもよらなかっただろう。そして滅ぼした張本人こそが信長なのである。

 そして定頼の隣に座っているのが京極高吉。現在京極家の当主として担がれている高清の次男である。元々は父に愛されて兄高延を差し置いて後継ぎに押されたのだが、兄との家督争いは結局国人衆の下剋上を生む事となった。

「この中務殿を京極家の後継ぎとして担ぐ事で、反浅井勢力をこちらに取り込む」

 現世では浅井家との関係を重視して高吉の求める京極家再興には応じなかった信長であるが、ここに来て初めて利用価値を見出した事に成る。そこを光秀に突かれると、

「向こうに受けれいる余地が無ければ無駄だからな」

 確かに、浅井の支配が固まったあの時代に、古い京極家の復活を持ちだしても受け入れられなかっただろう。

「中務殿も傀儡に成ると判っていて良くこの計画に乗って来ましたね」

「神の国に入り損ねからな」

 高吉は安土でキリスト教へ改宗した直後に亡くなっている。落ちた所が元々関係の深かった六角の領地だったのが幸いであった。

「お前だって同じことをしたのだろう?」

 とやり返される。本能寺の変の後、高吉の息子高次が旧領復帰を狙って光秀に加担している。

「あれは向こうから味方したいと言って来たから受け入れただけです。私が敗れた後は果たしてどうなったやら」

「婿の方は処刑されたぞ」

 婿とは高吉の娘を娶った若狭の元守護武田元明の事らしい。やはり光秀に加担していた。

「若狭へ行こうとして捕えられた。捕えたのが浅井下野の義兄でな、我らと内通の交渉をしてたので土産にもらって来た」

 浅井の初代備前守亮政は元は分家の出身で、娘しか居なかった本家の婿養子となった。しかし本家の血を引く正妻との間に生まれたのはまたしても娘。そこでその娘に別の分家から婿を取ってこれを後継ぎにする予定だったのだが、側室との間に息子が生まれてそちらに後を継がせた。

「内通者と言うのはその廃嫡された娘婿ですか」

「その時は義兄が身を引いて収まったらしいが」

 そうまでして跡を継がせた実子の久政が暗愚で一度は六角に屈する事に成った。そして孫の代に成って独立を果たす。元は六角義賢の一字を貰って賢政と名乗っていたのを、新たに義兄の名を取って長政と改める事に成る。

「出来る男と見込んで妹を嫁がせたのだが、結果として辛い思いをさせてしまった」

「しかし備前守殿は、上様と決別した後も名前はそのままでしたな」

「そうだな」

 妻に気を使ったのか、あるいは義兄を滅ぼした後で改名する積りだったか。

「反浅井派が離反し、浅井内部からも内応者が出たと成れば、戦わずして降る可能性もあるのでは」

「いまさら命乞いをされても興醒めだがな」

 と複雑な表情となる。

「しかし、あの堅牢な小谷城へ籠られると厄介ですな」

「そうかな」

 信長には何か策が有りそうであった。

 準備に約一カ月。遂に信長は動き出した。信長本軍が狙うのは小谷ではなく支城の横山城である。浅井家が六角に対する防衛拠点として築き、後には織田との争奪戦となった。この城を巡る後詰決戦が姉川の合戦である。小谷が落城して廃城に成ったが、こちらに落ちて来て再び浅井の拠点として用いられている。城を守るのは長政が最も信頼した一門浅井玄番と宿老遠藤直経。共に姉川の合戦で討ち死にした部将である。

 横山城を囲む信長軍の布陣は明らかな誘い。

「出て来ますかねえ」

 と光秀が言うと、

「まあ、来ないだろうな」

 既に罠は張り巡らされていた。信忠率いる別働隊が湖西を回って現れた。陣取ったのは琵琶湖と余呉湖に挟まれた要衝賤ヶ岳。これを案内するのは地元の国人阿閉貞征・貞大親子。光秀に加担して秀吉の長浜城を占領した。その報復で秀吉に処刑されてここにいる。そもそも阿閉親子が光秀に味方したのは秀吉との境目争いが原因であった。謀反の張本人である光秀が許されている以上、単なる便乗者が責められる筈が無い。

 さて完全に孤立した小谷城であるが、この地では兵糧攻めが全く使えない。

「まずは横山城だ」

 信長は城兵に退去勧告を出した。武器を捨てて城外に出るなら危害は加えない。出てきたのは一部の兵、姉川の合戦で討ち死にした織田・徳川の兵だった。

「一人でも兵が欲しい状況で退去を許すとは」

 と驚く光秀に、

「単に寝返りを警戒して戦うのを避けただけだろう」

 と分析する信長。

「昨日までの味方を相手に戦うのはやりにくかろう」

 と投降兵は後方へ下がらせた。その中には堅田衆の坂井政尚の嫡男尚恒もいたので、彼の部隊に引率を命じた。政尚は次男も二条御所で討死していて子孫が残っていない。

 信長が持ち出したのは大型の弩。正しくは西洋伝来のクロスボウの複製品である。その矢には布に包まれた何かが取り付けられていた。

「第一射、放て」

 大型の弩から発射される矢が木製の壁に突き刺さる。続けて第二射。これは普通の弓矢。但し先端に火を付けて放つ火矢である。火矢が燃え広がると、第一射の矢がいきなり爆発した。

「火薬ですか?」

「本能寺に蓄えてあった硝石を使って火薬を作ったのだが、肝心の鉄砲の数が足りないのでな」

「火攻めは私も考えましたが、火薬を使って威力を増すのは思いつきませんでした」

 信長は「一番良いのは燃やす事」と最初に教わった時からその方法を考え続けていたのだ。

「これで籠城が得策でない事、少なくとも我が軍を相手には通用しない事が知れ渡るだろう」

 修羅界の戦国は新たな局面を迎える。


タイトルの選定が苦しくなって来ました。

さて次はどうしようか。

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