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ロウリーの活動日誌  作者: ミシャ広人
第一章 日常編
4/4

鬼ごっこ

バトルって結構書くの難しいですね

横 10メートル、高さ 3メートル、奥行き17メートルほどの

理科室。窓から差し込んだ月の光が部屋を照らしてくれていた。

その、やけに広い高校の理科室の真ん中の奥に、実験道具などが入ってる

薄茶色のショーケースがある。

その前で、10歳くらいの

おかっぱの幼い少女は歌っていた。


「友達なんて上辺だけ♬

 暗いお釜でダルマさん♪

 おバカな鬼さんみーつっけた!」


歌い終わるや否や少女は近くにあった

理科室特有の背もたれのない直方体の木の椅子を

4つほど宙に浮かべ、

俺たちの方に勢いよく投げつけてきた。


「部長! こっちです!!」


俺は部長の手をやぶからぼうに掴み

3メートルほど左の位置にあった先生の使う、

黒く大きな机の下へと

駆け出した


「間に合えっ!」


俺はつかんでいた部長の手を左手に持ち替え

右手を部長の肩に回し、

持てる瞬発力すべてを注ぎこんで机の下へと

飛び込んだ。


ドガシャーン! パリーンっっ!!


椅子が俺たちの入って来た少し古い、スライド式の

厚い木のドアに当たり、そのまま、2枚まとめてドアごと廊下の方に吹き飛んだ。


「きゃぁぁ!」


「....!! なんつー霊力だよ!」


何とか間に合った俺はその威力に驚愕する。

相手が椅子を投げてからこっちに届くまで、

体感で一秒もかかっていなかった。

簡単に言うと60キロ以上は出てるということだ。

それが四つも...とんだ怪力少女だ。


幽霊にもパワーというものがある。

簡単に言うと、動かしたいと思うイメージ+

それに乗る感情の強さと数 だ。

俺たちはそのパワーを霊力(本当は浮かせる力ということで

浮力と呼びたいのだが、水の中で働くあの力と

かぶるため)と呼んでいる。

日常的に霊力が扱われる場面では

ポルターガイストというものがある。

誰もいないはずなのに箱がカタカタと動いたり、

洗濯物が勝手に落ちたりするあの現象のことだ。

あの場合は大抵、霊が

この物体を動かしたい と思うイメージと

この人間を驚かして楽しみたい 等の感情合わさり

霊力となり現れている。

よわい感情がたくさん集まっても

強い感情が一つだけでも霊力は発揮されるのだが...


「隠れてないで出てこーい! そしてくたばれ!! あははははははは!」


この子の場合は

とても強い感情がぐちゃぐちゃにたくさん

集まってできているようだ。

普通なら、A2サイズの額縁を壁から外して

落とす程度が限界なのだが...


俺は吹き飛ばされたドアがあったところを見つめる。

無理やり押し出されたことによって、ひどく傷つき

取れてしまった敷居がその威力の凄まじさを

改めて実感させる。


「どうやらさっきの歌といい、例の怪談の幽霊で間違いなさそうですね。

 あの感じだと話し合いなんて到底無理でしょう。

 部長、どうします?」


俺は自分の体制を起こしながら

部長が起きるのをエスコートする。


「そうね、どうしましょう。

 そもそも霊払いの知識なんて私知らないし...なによその顔?」


「いや、部長だったらそういうの調べてきてくれてるとばかり」


「仕方なかったのよ! 二日前に興味深い本を見つけて

 それに今日家を出るまでのめりこんじゃってたから!!」


あの本、帰ったら燃やす……!!


「……っ!!」


部長はしゃがむ体制を作る途中で、大きく顔を歪めて

自分の左足のアキレス腱のあたりを抑えた。


「部長、それ」


「心配いらないわ、ただガラスの破片が

 かすっただけよ」


部長はそういうが、真っ赤に染まっていく

部長の白い靴下が、傷の深さを物語っていた。


「それよりも気を引き締めなさい、

 来るわよ」


静かにそういうと、俺に幽霊探知機ゴーストセンサー

の画面を見せてきた。

それを見ると、標準がこの部屋に拡大され、

さっきよりも見やすくなった点の光が

少しずつこちらに近づいてくるのが分かった。

幽霊だから足音が出ないのをいいことに、

俺たちに奇襲をかけるつもりなのだろう。


「部長、耳を」


俺は部長に今思いついた作戦を伝えた。


「え、でもそれじゃぁ」


「しっ、もう来ます。かなり足は痛むでしょうが

 頼みましたよ」


そういって俺は、自分の鼻の前に立ててあった人差し指を

探知機(センサー)の画面の方に向けた。

相手は、俺たちが飛び込んだ側の方から接近していた。

ドアの外へは逃がさないということだろう。


「ばぁァァァ!! 見つけたぁぁぁぁぁ!!」


勢いよく飛び出してきた少女に向かって、

俺は近くに一つだけあった立方体の木の椅子を

投げつけた。


「あはははは!! そんなのあたしに聞くはずないでしょ!」


そんなのは知っている。――――これはフェイクだ!

投げた椅子は少女の体をすり抜け、

後ろの顕微鏡の入った灰色のショーケースのガラスを割った。


「それでは部長! 頼みましたよ!!」


俺はそう言って目の前の少女に助走をつけ勢いよくとびかかった。

そして、少女の肩を両腕でつかみ、そのまま目の前のショーケースへと投げ飛ばした。


「だからそんなの効くわけ……きゃっ!!」


油断をしていた少女は、俺の渾身の投げをもろに受けてしまい、

後方のショウケースへ勢いよく吹き飛ぶと、

そのままそこをすりぬけ壁の中へと消えていってしまった。

俺の狙い通りなら今頃……。


「グアアアァァァァ!!」


壁の中で反響して曇った、少女の悲鳴が聞こえてきた。


「部長! 今です!! 逃げてください!!」


俺がそういうより早く、部長は左足を引きずりながらも、

全力でドアの外へと出ていた。


「灰崎君も、今なら!!」


「駄目です! 今逃げたってまたすぐに追いつかれてしまいます!

 俺の言った通りにしてください!」


すぐに部長はドアから見て見えない位置まで逃げて行った。

少女はまだ立ち上がってこない。

まぁ、無理もないだろう。

少女は今頃普通の人間に触れられた、という事実に

困惑してるはずだ。

それに、さっきの悲鳴を聞く限り、

俺の読みも正しかったようだし。



しばらくすると、少女が笑いながら壁の中から

勢いよく飛び出してきた。


「アハハハハハは!! お前どうやったんだ!?

 幽霊のあたしに触れるなんて……もしかしてお前も幽霊なんじゃねぇの!?」


少女はやけに楽しそうだった。まぁ、ここまで全て狙い通りだ。


「あいにくだが俺は正真正銘の人間だ。

 まぁ、色々あってこうやって幽霊に普通に接触できるがな」


そう、俺は指輪を外せば幽霊を見たり声を聞いたりできるだけじゃなく、

幽霊に直接触れることもできるのだ。


「初めて幽霊に触れられてよかったって思ったぜ、

 こうして仲間を逃がすための足止めをできるんだからな」


俺は、元ドアのあった場所に道をふさぐように立つ。

それに少女は、何馬鹿なことを言ってるんだ?

とでも言いたげな顔で答える。


「見たところ、今のいなくなった女の方はただの人間でしょ?

 あたしのことも見えてなかったみたいだったし。

 それよりさぁ、君、あたしと遊んでよ!

 鬼ごっこしよう!

 ルールは簡単!! お日様が昇るまで逃げきれたら君の勝ち、

 あたしに殺されたら君の負け。

 これでどう? 範囲はこの学校内だけだよ!

 出ようとしたら、わかるよねぇ?

 ちなみに、玄関まで言った時点で死刑だよ!」


少女はそういうと近くに置いてあった試験管を宙に浮かせ

ふわふわと手の平の少し上に浮遊させた。


「なんか俺の知ってる鬼ごっことはだいぶ違うな、

 とくに後半の部分…、なぁ、かくれんぼじゃダメかな?

 この学校の二階だけを使ったかくれんぼ

 お前が鬼で、俺が逃げる方。

 見つけたら俺のことを煮るなり焼くなり

 好きにしてくれていいからさ」


そこで、少女は目をグワッ! と見開き、

音はしないが、足でドンドンとじたんだを踏みながら

大声で叫んだ。


「だめ! ダメダメダメダメダメ!! 絶対ダメ!

 そんなこと言ってお前、あれだろ!?

 あたしが数数えてる間に学校の外に逃げるつもりだろ!?

 そんなの許さないぞ! 鬼ごっこったら鬼ごっこだー!!」


彼女の感情のあらぶりに呼応して、試験管は

床にたたきつけられ、

ゆすられたショーケースの中にあった顕微鏡も

いくつか地面へと落ちていった。


それにしてもこの取り乱しよう、

過去に何かあったのか?

ひとりかくれんぼ事件となにか関係があるのかな。


「分かった、落ち着け、落ち着けって。

 お前の条件を飲んでやる。

 その代わり、俺からも一つ条件がある」


「なんだ、言ってみろ」


俺の問いかけに反応し

少女は霊力を使い暴れるのをやめた。


「範囲はこの理科室内だけだ。この理科室から出た時点で

 俺の負け、これでどうだ?」


「はーああぁ!? いかれてんのか?

 そんなの一瞬で終わっちまうぜ!!」


「かもな、でも、今あいにく一緒に来たおれの仲間たちは

 逃走中なんだ。そいつらの所にお前を行かせるわけには

 いかないからな」


俺はそういうと腰を低くして逃げる体制を整えた。


「仲間たちって、さっきの女以外も他にいるのか」


「さあな、でも全員普通の人間だぜ。

 そんなの相手にするよりも俺とここで遊んでた方が

 ずっと面白いはずだ?」


俺は言いながら、少女の横を通り過ぎ理科室が背になるよう

移動した。


「まぁ、そうだな。分かった、お前のその条件飲んでやるよ!

 そんで、お前を殺した後、間に合ったら残りの仲間も殺す。

 それでいいだろ?」


「あぁ、ありがとう。

 意外と話の分かるやつだな。」


少女がエッヘン、とでもいいたげに腰をそらし

両手の手首を骨盤に当てた。

そのしぐさはまるで、普通の10歳くらいの少女が

父親に褒められて喜んでいるようだった。


「それじゃあ始めるよ。あたしが今から十数えるから

 その間に好きな場所に逃げて。じゅーう~」


目をつぶり、少女はカウントダウンを開始した。

俺は、理科室を見まわし使えるものはないか、

と思考を巡らせた。

そして―――


「ゼロ―!! さぁ、どこにいるかなぁ!!」


理科室特有のシンクを挟みつながった黒く長い机、

それが横に4つ並んでは奥にずれるという

配置になっている理科室の6組目の一番左の机の下に

少女の目は、いった。背中を丸めて隠れている俺を見つけたのだ。


「ハハ~ン……。どこかなぁ、って! バレバレだっつうの!!」


少女はその場所に向かって、近くにあった椅子や顕微鏡、

しまいには中身のなくなった顕微鏡の入っていたショーケースまで

投げつけてきた。

そして…。


ガシャーン! バリバリ!! ドーン!!!


その凄まじい威力によってシンクは粉々に、

机は真っ二つに粉砕して、


「グアアアアアァァァァ!!」


理科室には俺の叫び声が響き渡った。






 

 


 





 











おかしい場所や分かりにくい点などがございましたら修正するので言っていただけると

助かります。

感想とかくれるとすごくうれしいです

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