表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/146

昼食

 次の日からまた学校は始まった。しかし、昨日の光景を見てしまったため私はなかなか授業に集中することができなかった。昔の先生は髪の毛は灰色だったのに今はなんで真っ黒なのだろうか。私のことに気付いていたのになぜ話してくれなかったのだろう。そんな疑問が私の頭のなかでぐるぐると回っていた。

 考えても仕方がない。先生と話してみよう、そう思い私は昼休み職員室へと向かった。

 

 この学校の校舎は学生だけのものじゃないので、まるで街みたいである。魔術に必要な道具が売っている売店があったり、魔術の研究に必要な生き物を飼う飼育小屋みたいな建物があったり、食事するためのレストランまである。昼休みということで、まだ食事をしていない私の空腹を煽るように料理の美味しそうな匂いが漂っている。職員室は、研究者達がいる建物と一緒なため(研究をしながら教師をしている人もいるので)学生棟から少し離れた研究棟まで歩かなくてはならなかった。

 

 職員室につくと、ちょうど先生は宿題の提出を確認し終え昼食に行く様子だった。

 「グレイ先生、お話があるのですが......」と声をかけてみた。

 「俺今から昼食を食べに行くところだから後にしてくれないか?」どうやらまた今度にしてほしいようだ。しかし昼食をまだ食べていないのは私も一緒だ。よしいいこと思いついた。

 「先生食べながらでもいいので私も連れて行ってください。」そして流れで奢ってもらおう!!

 「お前奢ってもらうつもりだろう、まあいい。ついてこい。」とあきれたように言うと歩き始めた。


 先生が連れてきてくれた場所は、あまり人目につきにくそうな喫茶店だった。まあ教師と女子学生が一緒に食事をしているところを見られるのはあまりいい気持ちがしないのだろう。

 「それでは話を聞こうじゃないか。」とカレーを注文した後に話し始めた。

 「昔の話です。先生は私の過去のことを知っていますね?」

 「なんのことだ?俺はここにきてからお前のことを知ったのだが。」ととぼける。

 「昨日先生が私の祖父のお墓参りをしてくれていたのを見ました。」先生が動揺するのがわかった。

 「盗み見していたのか?」

 「たまたま先生がいるのが見えただけです。」すみません、盗み見どころか何を話していたのかまで聞いていました。

 「そうだったのか。それでなぜそんなことを俺に聞く?」

 「私は記憶喪失とまではいきませんが、一部記憶がないのです。しかも亡くなった記憶は魔術に関することだと思うのです。」

 「ほう、なぜ魔術に関する記憶だと思ったのだ?他のことの可能性だってあるのではないか?」

 「それは、魔術を学んでいくうちに昔も学んだことがあるなと思うことが多いからです。そこから少し昔のことを思い出すこともあるのですがすぐ忘れてしまうのです。」

 「なるほど、でもお前の祖父を俺が知っていたのは昔魔術師として俺を導いてくれたからだ。お前のことは名簿を見て姓が一緒だから気付いただけだ。俺が話せることはないぞ。」あ、また嘘をついている。

 「祖父が弟子を取っていたのは覚えています。しかし、祖父が弟子を取ったのは一人だけでした。昔からいる先生のお話を伺ったのですか、その弟子が先生だったということはもうわかっています。」

 先生が苦虫を噛み潰したような顔をしている。どうやら私のほうが一枚上手だったようだ。

 「先生なぜ教えてくださらないのですか?」隠そうとしていることに苛立ちお覚え始めた。つい責め立てる口調になってしまった。


 先生は少し沈黙し、ウェイトレスにコーヒーを注文した後に話し始めた。

 「話してもいいが、覚悟ができているのか?」

 「覚悟はとっくにできています」何の覚悟だろう?

 そうか、とつぶやくと話し始めた

 「お前は......」するといきなり頭を鈍器で殴られたような痛みが走った。


 実際に殴られたのかと思い後ろを振り返ったのだが、誰もいない。先生は話し続けるが、頭痛によって聞こえない。

 「先生、やめてください!!」耐えきれずに言う。先生が話すのをやめるとさっきまでの頭痛がウソのように消えていった。

 「だから俺は言いたくはなかったのだ。」

 「知っていたのならはじめに教えてくださればよかったのでは......!?」なんで頭痛をすることを知っているんだ?それは仕組まれているからなのか?そしてある可能性にたどり着く。


 「先生、私の記憶は魔術によって意図的に消されているということですか?」

 「いや、正確には思い出せないようにしている。と言うのは正確ではないな。お前が望んでこの契約を俺としたのだ。」 

 「契約とはなんですか?」と質問したところで先生は時計を見た。


 「もうすぐ昼休みが終わる。話はここまでにしておこう。契約のことや過去の話はもう少し時間が立ってから話そう。お前には早すぎる。」というとさっさと会計を済ませ行ってしまった。

 

 契約?なぜ私は先生に契約してまで記憶を消したのだろうか。消したくなるほどの思い出。私は何を体験したのだろうか。

 

 少しの間私は動けなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ