お誘い
熊殺しのアレックス。幼い頃仲よかった友達だった。その時からアレックスはでかく、熊も倒すんじゃね?と噂が始まって熊殺しのアレックスと呼ばれるようになったらしい。ちなみに実際は殺したことはないようです。
まあ幼い頃は本ばっか読んでいたから友達も少なく、家でずっと本を読んでいた俺を無理やり外に連れ出してくれたりしていた友人である。おかげで少し性格は良くなった気がする。そして少し暴力的にもなった気がする。
昔も大きかったが今は筋肉の鎧とも思わせるような盛り出た筋肉、そして人懐っこそうな笑顔、短く切った髪、野太い声。思い出すとあんまり変わっていいないな。
「久しぶりだな、学園に入るまで一緒だったから何年ぶりだろうか?」
「そんなことはどうでもいいわい!お前今教師しているのか、似合いそうだな!」
「そうか、お前の方がもっと似合っているよ」
と少しの間昔話に花が咲いた。そうか俺がアテーナに入ったが、こいつは騎士団に入ったのか。知らなかった。まあ、俺の方が入試があるから勉強し始めたせいで遊べなくなったわけだが。
「で今回のルミ・ミュラーのことじゃが、家は空っぽじゃった」
と報告を始めた。内容は以下の通りだ。
・捜査に入った家はもう抜け殻で、手かがりはなかった。
・ルミの行方はわからない。
・近所付き合いはなく、親戚の方にも当たってみたらしかったが、なにも情報を得ることはなかった。
ということだった。
こんな話し合いが終わったところで解散となった。アレックスは校長と話しているみたいだ。
めんどくさい会議が終わってよかったな〜と一人職員室でくつろぐ。もちろんコーヒーは忘れない。
特に考えることもなく一人ずっと椅子に体を預けていると、俺の後ろから声が聞こえた。アレックスだ。しかも隣に見たことない少年がいた。身長は普通ぐらいだったが、アレックスと対照的にスラッと伸びた手足で、鎧が少しぶかぶかだった。茶髪も長く目にかかるぐらいあった、戦うときにうっとしいだろうななんて思ってしまう。これを行ってところで、俺の方が長いのだから説得力は皆無だろう。
「今から飲みに行かないか?奢るぞ?」
「それはありがたい。それで隣の少年は?」
「ああ、こいつか!俺の世話係というか何というか」
「弟子です。」少年が答える。
「へ〜騎士団に入るとそんなことがあるんだな」
「しかしなぁ、俺には向いてない気がな」とアレックスが頬を掻く。
「向いてそうじゃないか。教えるということは無理かもしれないがな」
「そういうお前こそ弟子ぐらいいるのだろう?」
弟子か......いるかな。ツキミは弟子なのか?どちらかというか何というか家政婦さん?
「そんな感じのはいるな」
「やっぱし。それじゃ弟子も一緒にどうかな?」
「別にいいが四人分奢るきか?そんなに騎士団は儲かるのか?」
「こういう時は上が持ってくれるんだよ、気にすんな!」
羨ましい、俺なんて残業代も出ないのだぞ!!言えるわけがない。
「それじゃ俺は夕食作らなくていいように言ってくるとするかな」
「それならついていこう、なにせお前のことだ!ギリギリまで家で粘るつもりだろ!」
「いつの話をしているんだお前は」
何だか昔に帰ったみたいだった。他愛のない話をしながら帰路を辿る。久しぶりの再会となった友人はなにも変わっておらず、何だかホッとした。




