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記憶回復

 魔術の詠唱について 

 魔術の発動には詠唱する方法もあるが、無詠唱で発動することが可能である。詠唱は言霊によってこの世界に存在する無数の精霊に呼びかけ、魔術を発動するために必要な魔力を補助してもらうことを目的をする。無詠唱はこの精霊を使わずに魔術を発動する方法だが、自分の魔力を使用するので魔力消費は大きいが詠唱するよりも早く発動出来ることが利点である。しかし無詠唱はなかなか使うことが出来る魔術師はおらず、無詠唱が出来る魔術師は一流と呼ばれる。



 唇が触れ合った。その瞬間先生の魔力が迸り、私の記憶も完璧に戻っていた。その魔力の奔流に煽られて私の神が揺れる。この心地よい魔力、久しぶりだ。

 懐かしい家族の顔、幼少期の楽しかった思い出、私に魔術を教えてくれるグレイ先生。

 私はツキミ・アストライオス。賢者の血筋を引くアストライオス家の長女だった。しかしアトライオス家は私を残して滅ぶことになる。

 

 私が12歳のときに賢者の魔術に怯えた国王が皆殺しにしたのだ。幸いにも私は友達の家にお泊りしていたことにより生き残る事ができたが、帰ってきたときにはもう手遅れだった。残ったのはお金と家宝の賢者の石であった。


 私は殺されることを恐れた。


 殺された家族のことを忘れたかった。

 

 その恐怖から逃れるために契約魔術を家庭教師をしてくれていたグレイ先生と結んだのだった。



 先生の魔力に反応したのかサラマンダーが私たちに気付いた。しかし今の私には恐怖は感じない。負ける気がしない!右中指にはめた指輪、賢者の石に魔力を込める。すると賢者の石が赤く光り始めた。


 賢者の石は、アストライオス家の血と魔術に反応して使用した魔術師の魔力を高めることが出来る一品だ。(あまり知られていないから自分も使えると思っている人が多いが、私がいないとただの石なのだ。)


 「俺はあのサラマンダーを殺る。お嬢様は黒ローブをお願いします。」

 そして私とグレイ先生は主従関係を結んだ関係だった。


 「わかりました。存分に暴れてきてくださいね。」昔の記憶が蘇ったことでなんだか口調が変だな。

 「ああ」と短く返事をする先生の顔は自信に満ち溢れていた。


 その背中はこれまでも見たが、懐かしく感じた。


 

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