出会い
魔術、それは普通の人間には到底使えないものである。傷ついたものを癒やし、ろうそくに火を灯し、そして人を傷つける。それはまるで兵器のような、薬のような......
私の話をしよう。私の名はツキミ・アッヘンバッハだ。
この国で一番名の高い「国立魔術学園アテーナー」に通う16歳の女学生だ。魔術師の家系に生まれたため、この学校に通っている。まあ魔術師の家系といったが、有名な魔術師を生んできた古い家系ではなく、ちょっと魔術をかじった家系ではあるため、私はそれほど魔術を扱えるわけではないのだけれどね。
魔術師の学校といわれれば、高等学校みたいなものを連想するかもしれない。まあ、生徒がいて、教師がいるのだから似ているようなものかもしれない。しかし、この学校は他の学校と違い特異な点がある。それは卒業しても、いつでも帰ってきて研究したり、教鞭をとったり、学校に来た仕事をこなす人もいる。このような学園は現在増えていっている傾向にある。おっと話がそれてしまった。
入学当時はひよっこだった私も、魔術を使えるようになってきた7月。担任のシェレクリア先生が妊娠したのだ。日に日に膨らんでいく腹部には新たな生命が確かに生まれようとしていた。
これによって担任の先生が産休をとり、一時的にこの学園を去ってしまった。まあ時期が夏休み前だったので夏休みが来るまでの数日間負担が大きい中頑張ってくれ、そして私達学生と一緒に休みに入ったのだ。
代わりの教師を探すのはなかなか難しいものだ。さっき言った通り、魔術師は学校にいるのだが、私達みたいなひよっこは教えるに値しない!とか言う頑固な人が多いのだ。教えるとしても古い家系の才能溢れる魔術師でないといけないなどありえない条件もよくあるものだ。まあ、私も研究者のような人から教えていただくには力がまだまだ足りないことはわかっているつもりだけれどね。
よってこの夏休みに代わりの教師がきまる。今度来る人はどのような人なのだろう......また前の先生みたいな優しい人がいいなぁなんて思いながら、二学期教室のドアを開けるのだった。しかしクラスの人はまだ少なかった。少し早かったかな?まだ時間もあるし、本でも読もうかしら。
教室は大学みたいなもので、黒板があり、机が階段状に並んでいる。ちなみに私は一番前の位置に座っている。理由は簡単、上に上がるのがめんどくさいからだ。
時間が経つと教室には人も増えていき、チャイムが鳴り朝のホームルームの時間が始まる。
私はどんな先生が来るのだろう、と近くの友人と話していた。するとドアががらっと開いた。
しかし、ここで私の願望は見事に砕け散るのであった。入ってきた人(先生)は、ストレートの長い黒髪で、体型は身長が高く少し痩せ気味だが、鋭い目つきより知的だと思わせる雰囲気があった。服は黒いスーツで(暑苦しそうだな)、見ていると昔の軍師にいそうな感じだった。
「俺はグレイ・エレボス。今回産休で来れなくなった代わりに来た魔術師だ、これからよろしく。」とだけ無愛想に短い挨拶をした。