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リム  作者: 愛猫
第1章
9/9

第7話 特別な存在

まるで、ぬるま湯の中にいるようだ。

暖かくて心地よいそんな中を漂っている。

あぁ、これはきっと夢の中。

だって私は知っているから。


現実は、もっと、残酷なんだ。




「…い、おい。おい!」

重い瞼を開けると、覗き込むアオのフワフワの耳が眼前にあった。

「こんな所で何寝てんだ、阿呆。」

「ふぇ」


もう日暮れのようで、辺りはオレンジ色に包まれている。広大な庭の草むしりを言い付けられてから5時間程経過していた。どうやら私は庭の木陰で寝てしまっていたらしい。

だって何だかすごく眠いんだ。


「アオ、眠い」

「おい、アオ様と呼べ」

「眠いよ」

「っ、おい!」


とてつもない眠気に襲われて、私はまた目を閉じる。

今度は心地よい感じじゃない、寧ろ気持ちが悪い。何かに探られているような覗かれているような感じがする。

前身をなにかが這い回っている。

息苦しい。

黒くて大きな闇が迫る。


居た



居た




やっと、見つけた





アオイ






「…目が覚めましたか?」

お香の香りがする。見上げると悠禅がこちらを見下ろしている。

「あれ、ここ…」

「店の中ですよ、葵くん庭で寝てしまったようですよ。」

「え、すいません。私は何で庭なんかで…」

「疲れていたのでしょう」

「そう、でしょうか…」

「おや、本当に顔色がよくありませんね。」

「すいません、ちょっとおかしな夢を見てしまったので」

「夢ですか」

「黒い闇がずっと追いかけてくるんです。凄く怖くて逃げても逃げて追いかけてくるんです。」

「今日の瘴気に、あてられたのでしょう。使ったのでしょう?あの香を。」

そうだった、私が勝手に持ち出してしまったのだ。

「すいません、私勝手に…」

悠禅がそっと葵の頭に手を乗せた。どうやら怒ってはいないようだ。むしろ優しい手付きだった。

「あれは特別な人にしか扱えないものなんです。だから、アオさんの話を聞いた時は驚きました。」

「どういう事ですか?」

「あなたが、特別な存在だと言うことですよ。ここへ連れてきたのも、あなたが特別だからです。ねぇ、アオさん。」

悠禅が呼ぶといつの間に現れたのか、先程見た猫耳美人がフワリと悠禅の隣に降り立った。

「悠禅、お前何を考えている」

何やら苛立った様子のアオ、いつも通り微笑んでいる悠禅。取り残されている私。

「アオって、アオ様って一体何者?」

「アオさんは、私の式神ですよ。」

何だか急に異世界っぽい話になってきたぞ。悠禅によると、こちら側では大体の人間が一人一体の式神がついているらしい。それは個人の力や能力によって多種多様な者が居るそうだ。

「という事は、私にも式神いますか?!どうしたら呼べますか?!」

「さぁ、どうでしょう。葵くんはイレギュラーですからね。自分の心に語りかけてみてください。答えてくれますよ。」


どういう事か分からないが、見様見真似でやってみる。式神、式神さん…いますかー?どこにいますかー??

すると、夢の中で聞いた声が脳内に響いた。


〝やっと、呼んでくれるのね〟


突然、うさぎの耳当てが光り出す。それは次第に人の形へと変化し葵の眼前へと舞い降りる。

突然、私の目の前に可愛らしいうさ耳幼女が現れた。薄桃色のツインテールに赤い目、愛くるしい顔をした女の子が目を潤ませながら私を見上げている。


「葵、やっと呼んでくれたね!君の式神、モモだよ!」



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