マッドサイエンティストの復讐 熊本地震編
彼は顔を上げ、真っ直ぐな視線を放った。
その先には壁があったが、もっとずっと先を見つめていた。
もう一度、視線をモニタに戻す。
また眉間にシワが寄った。
「不謹慎ッ」
「売名行為ッ」
彼は言葉を吐き捨てた。
画面をスクロールする。
彼は最後まで文字を追った。
「許せないッ、GOSAのやつら」
彼はタレントのブログを見ていた。
そこには熊本地震のコメントが載っていた。
「GOSAどもに思い知られてやる」
GOSAとは彼が名付けたターゲットの総称だった。
「ヴァーチャルの世界の恐ろしさを思い知らせてやる。
マットサイエンティストの名に懸けて」
彼は、藤崎のこの一言を気に入っている。
くだらない発明をして、「お前、マッドサイエンティストか」と言われたことを。
『タレントS、500万円を実名で寄付』
{売名行為}
{セルネイムアクション。IF 文春=センテンススプリング}
{今までも恵まれない人がいただろう}
{今でしょう。売名行為}
『頑張って! タレントD』
{不謹慎}
{この名古屋コーチン、不謹慎」
{名古屋コーチン?}
{地鶏}
{地鶏?}
{自撮り}
{不謹慎厨}
GOSAどもは盛んにタレントを中傷した。
自分に正義と分別があるように。
そして、GOSAどもはタレントの不謹慎を捜し、書き込んだ。
次々から次へとSNSで中傷を。
ふとGOSAどもは気付いた。
いつもと違うと。
いつもなら、タレントは世間の目を気にしてブログを止めるのだが。
それでも、GOSAどもは批判を書き続けた。
ヴァーチャルの世界で。
実は、彼らは彼らが好きなヴァーチャルの世界に飛ばされていた。
マッドサイエンティストの彼はヴァーチャルの世界を
新たにネット上で構築したのだ。
そして、誹謗中傷する奴らをそこに飛ばしたのだ。
永遠に。
GOSAの奴らは通常のSNSにアクセスできなくなっていた。
彼はタレントのSのブログを開いた。
そこには誹謗・中傷がなく、感謝と応援のメッセージが溢れていた。
「Sさんも、初めから気にしなければいいのに。
科学の世界じゃあ当たり前の事。
99.99%以上の数字を出せてるのに。
ツイッターフォロー数30万人中、ふざけたコメントをするのは10人未満。
そんなやつらはゴサ(誤差)」
マッドサイエンティストは呟き、大きく一つ頷いた。