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初めて知った母の思い

富栄の殺害された事を調べる事になった夏希は、応援団の練習が終わった後、富栄が経営していた店に向かった。身体は疲れていたが、自分が言い出した事なので後回しにする事は出来なかった。

駅から歩いて十五分、通りから少し入ったところに富栄の店はある。住宅街にあるその店は、周囲の景色とそぐわないが、外国のような外観に隠れ家的な感じで、スナックではないようだ。まるで雑貨店やケーキ店のような雰囲気を醸し出している。

夏希は富栄と一緒に暮らしている時に何かあったら店の中に入っていいと店の合鍵を渡されていて、今まで持っていたのだ。施設に入る前に返せば良かったのだが、バタバタしてそのままになっていたのだ。

店の鍵を開けた夏希は、入る決意をしてゆっくりとドアを開けた。中に入ると、富栄と暮らしていた時の懐かしい思い出が去来した。

そんなに広くない店は、カウンター席が五つ、テーブル席が三つあり、キッチンにはグラスや色んな酒が置いてある。キッチンの奥には夏希の写真がコルクボードに貼ってある。恐らく、夏希の写真を見る事によって富栄も頑張っていたという思いが伝わってくる。この店には何度か来た事があった夏希は、富栄の事はいいように思っていなかったが、店の雰囲気や匂いは好きだった。

富栄の店はスナックという割りにはいつも繁盛していた。恐らく、富栄の人柄が客を引きつけていたのだろう。たくさんの常連客で溢れ返っていた。割合では男性客が多かったが、中には女性客も訪れていて、富栄に色んな相談をしていた。富栄の的確なアドバイスは女性客には好評だった。

夏希はカウンター席に座ると、その当時の事が思い出された。キッチンには富栄の笑顔、席には常連客が酒を飲んだり談笑したり、カラオケをしたりと賑やかな光景がそこにはあった。

そのことを思い出すと夏希はため息をつく。そして、富栄と再会した日に美夕が言っていた言葉を思い出していた。それは常連客と関係を持っていたのは仕事と割り切っていたからなのではないか。そうじゃないと夏希を育てていけない、という言葉だった。

言われてみれば、女で一つで子供を育てていくのは困難な事だ。どんなことをしてでも子供を育てていかなければいけないという思いが富栄の中にあって、そのまま進んできたのだろう。だが、そんな富栄の思いは夏希には届かなかった。

本当は常連客と関係を持ちたくないのに…。だけど、大切な夏希を育てていくには、自分はこんなことしか出来ない。富栄はその思いを持ったまま自分をずっと育てていたのではないか。それなのに自分は施設に入りたいと言って、富栄の前から姿を消してしまった。

施設に入る当日の朝、アパートに施設の職員が迎えに来た時、富栄はまるで気が狂ったかのように泣き崩れ、夏希の名前を呼んでいた。一刻も富栄の前からいなくなりたかった夏希は引き止めようと夏希の腕を掴みすがり泣く富栄を振り払い、富栄を気にかける事もなく、施設の職員とそそくさと行ってしまった。それが今でも脳裏にこびりついている。

なぜ、自分はそんな酷い事が出来たのか。育ててきてくれた母親を一人残して、自分の事しか考えず、一人で生きていくという事が出来たのか。もう少し母親を大切にする事が出来たのではないか。富栄が亡くなった今、夏希は施設に入った事を後悔していた。

夏希がそんなことを思っていると、店のドアが開いた。ドアのほうを振り返った夏希は、驚いた表情をする。そこには一人の男性がいたのだ。

「夏希ちゃんかい?」

その男性は店内に入りながら聞く。

「そうですけど…」

夏希は警戒しながら、自分が夏希だと認める。

「やっぱり…。店に入っていくのが見えたから…。久しぶりだな。覚えてるかな? 向かいに住んでいる伊藤だよ」

伊藤と名乗った男性は、五十代半ばで白髪交じりで細身の男性だ。

伊藤と聞いた夏希は、自分の記憶を手繰り寄せる。しばらくして、あっと声を上げた。

「思い出しました。母さんがいつもお世話になっていた…」

思い出した夏希は笑顔になる。

「そうだよ。夏希ちゃんも元気そうだな。もう高校生になるのかな?」

「はい、そうです」

「そうか。少し見ないうちに大きくなったな」

久しぶりに夏希と会った伊藤は、親戚の伯父さんのように上から下まで見る。

伊藤は店の向かいに住む男性で、妻と二人暮らしなのだ。いつも赤谷親子がお世話になっていて、夏希が性同一性障害だということも知っている。

「夏希ちゃんが施設に入った後、富栄さんは酷く落ち込んでしまってね。しばらく店を休んだんだよ。やっと店を開けた富栄さんはやつれてしまって、見るに見かねないほどになってたよ。でも、富栄さんが亡くなって、こうして夏希ちゃんが戻ってきてくれただけでも富栄さんは喜ぶと思うよ」

伊藤は夏希が店に来てくれた事を喜んでいる。

(母さんがやつれていた事、今初めて知った。あの頃、母さんの事だからボクの事なんて気にしないって思ってた)

夏希は伊藤の言葉が胸に突き刺さった。

「夏希ちゃん、この店とアパートはどうするんだ? 未成年だから一人で生活していくなんて無理だろうし、このまま施設で生活すると思うが…」

伊藤は夏希の今後を心配しているようだ。

「この店とアパートは引き払うつもりでいます。家賃も払えない上にそのままにしておくのは出来ないので…」

夏希はしっかりと今後を考えた上で答える。

「そうか。せっかくいい店だったのに仕方ないよな。夏希ちゃんが経営するわけにはいかないし…」

店を畳む事に残念そうにしている伊藤。

「夏希ちゃん、富栄さんが亡くなって辛いだろうが、気を落とさずにな。じゃあ、これで…」

伊藤は夏希に励ましの言葉を言うと、店を出て行こうとする。

「あ、伊藤さん…」

夏希は店を出て行く伊藤を呼び止める。

「なんだい?」

「ボクがいなくなった後の母さんの事を教えてくれませんか?」

夏希は事件を解決する上で富栄の事を知りたいと思ったのだ。

伊藤は快く応じてくれて、伊藤の家に向かう事になった。夕食を共にしようということになり、施設に帰りが遅くなるから夕食はいらないと連絡をしておいた。









「夏希ちゃん、久しぶり。高校生になって美人になったんじゃない?」

伊藤の妻である規子が夏希の高校の制服姿を見て明るい声で言った。

「コラコラ…美人だなんて夏希ちゃんはそんな言葉を言われるのが嫌なんじゃないのか」

伊藤は夏希の心情を代弁するように規子に言う。

「そう? 私は夏希ちゃんが美人になったと思うけどね」

規子はイスに座りながらいう。

今日の夕食は、規子お手製のハンバーグに付け合わせがポテトとニンジン。別皿にはサラダ、そしてミネストローネだ。この夕食を見た夏希は、規子が母親だったら…と正直に思っていた。

「性同一性障害だっていっても、夏希ちゃんが高校の制服着てたら美人になったなって誰だって思うわよ。ねぇ、夏希ちゃん?」

規子は夏希に同意を求める。

「はぁ…」

夏希はどう返事していいのかわからず、曖昧に返事をする。

「ほら、夏希ちゃんも困ってるだろ?」

伊藤は妻の言う事に呆れている。

「さぁ、食べてちょうだい。今日はハンバーグ作り過ぎたのよ。夏希ちゃんが来てくれて良かったわ」

規子は伊藤の言う事は気にせず、笑顔で夏希に言う。

アポなしで来た夏希に対して、規子はむしろありがたかったという様子だ。

そして、夏希はいただきますと一言言うと食べ始める。

「そういえば、夏希ちゃんが施設に入った後の富栄さんの事が聞きたいって言ってたけど…」

しばらく食べ始めた後、伊藤が夏希に言った。

「実は昨日、警察に事情聴取をされた時に内縁の夫がいると聞いたもので…」

夏希は箸を置くと、伊藤と規子に内縁の夫について聞いてみた。

「内縁の夫…。もしかして、岸田さんの事かな?」

伊藤は内縁の夫と聞いて思い当たる節があるようだ。

「岸田さん…?」

夏希は初めて聞く名前に首を傾げる。

「うん。一年前くらいに常連客だった岸田さんと富栄さんが一緒に暮らし始めたんだよ。二年半前に店に通い始めた岸田さんが一目惚れしたらしく富栄さんに猛アタックしてたよ。最初、富栄さんは客の一人だからって言って相手にはしなかったよ。でも、富栄さんも岸田さんが好きになって、一年半前から付き合い始めたよ」

伊藤は一連の経緯を知っていたのか、詳しく二人の事を夏希に教える。

(常連客と恋仲か…。いかにも母さんらしいな)

その話を聞いた夏希は、常連客と関係を持っていた富栄の事を思い出しながらそう思っていた。

「その岸田さんとアパートで暮らしてたんですよね?」

「そうだよ。さっき夏希ちゃんがアパート解約するって言ってたけど、多分、岸田さんがそのまま住むんじゃないのかな。店は家賃の問題もあるから解約したほうがいいと思うけど…」

伊藤は何か考えるような表情で話す。

「どういう人なんですか?」

「大人しい人だよ。でも、たまにカッとなる性格でもあるんじゃないかな」

「カッとなる性格…?」

「うん。富栄さんと付き合う前に他の客とケンカした事があったんだ。その時は他の男性客が中に入って収まったんだけどな。今までの岸田さんを見た事がないくらいというくらいに怒ったんだ。そんなことがあっても富栄さんは岸田さんの事を出入り禁止にはしないでいたんだ。それが岸田さんにとって嬉しかったんだろうな」

その場にいた伊藤は岸田が他の客とケンカをした時の事を思い出しながら答えた。

「ケンカの理由はなんなんですか?」

「相手が岸田さんの事を悪く言ったんだよ。それに岸田さんがキレたっていうわけだ。そりゃあ、誰だって自分の事を悪く言われたら怒るのは当たり前だっていうのに…」

食べている手を止めて、自分の事を悪く言われたら怒るのは仕方ないという表情をする伊藤。

(それだけでカッとなる性格っていうのもなんだかな…。母さんの内縁の夫である岸田さん。一度会ってみたいような気がするけどな。瀬川警部達がどういう人なのか調べてからのほうがよさそうだ)

夏希は岸田という内縁の夫の事が気になって会いたいという気持ちが出てきたが、初めて会う相手にはどうも気が進まないという様子だ。

「私も一度会った事あるけど、なんか暗そうな人だったじゃない? どこか影を持っているっていうか、隠し事をしてるっていう感じに見受けられたけど…」

規子は一度会った事のある岸田の印象を今だからというふうに正直に言う。

「確かにそれはあるな。過去の事を聞いても話したがらなかったし、富栄さんも岸田さんの過去はほとんど知らなかったんじゃないかな」

伊藤も規子の言った事に同感したようだ。

「多分、警察は岸田さんにも色々話を聞いてると思うよ。夏希ちゃんに岸田さんの事を言ってるならそのうち会わせてくれるかもしれないな。内縁の夫といえども血の繋がりがない上に、一度も会った事のない人だから、安易に会おうなんて事はしたらダメだよ。自分は常連客の一人で知り合いだから会っても大丈夫だが…。どうしても会いたいなら警察の人とか誰か一緒のほうがいいよ」

伊藤は哲平同様、夏希の身を案じて言った。

「わかりました」

夏希は頷きながらそう答えた。

「そういえば、店にいつも夏希ちゃんの写真が貼ってあったわよね?」

規子は店に夏希の写真が貼ってあった事を思い出す。

「あぁ、あったな。みんなに自慢してたもんな。たった一人の娘だって…。今は事情があって離れて暮らしてるけど、いつか一緒に暮らすんだってずっと言ってたよ」

伊藤も富栄がそう言っていた事を思い出す。

(自慢の娘。いつか一緒に暮らす。母さん、そんな事言ってたんだ。出来れば、その言葉、直接母さんから聞きたかった)

伊藤から富栄の思いを知った夏希は、富栄が殺害される三日前、心の底では本当は嬉しかったのになぜ自分は富栄に今さら母親づらするなと言ってしまったのかと思っていた。

確かにあの時は急に現れた富栄に戸惑ってしまい、母親づらするなと言い放ってしまったのだが、今となっては追い返した事を後悔していた。

(母さんに相談もしないで勝手に施設に入るなんて酷い事をしたのに、それでもボクの事を思って写真を店に貼るなんてお人好し過ぎだろ…)

今さらながら富栄の深い愛情に気付いた夏希は、自分が今までどれだけ身勝手な事をしてきたのだろうと反省していた。














夏希が施設に戻ったのは午後八時半だった。伊藤が遅くなったからと来るまで施設まで送ってくれたのだ。職員に戻った事を告げた後、風呂に入って一息つくと、机の中から一枚の写真を取り出した。その写真は夏希が施設に入る前に撮った富栄との旅行写真だ。

学校が長期休暇でも店を開けていた富栄は、夏希が中学一年の冬休みに年末年始とは別に四日間の休みを取って、二泊三日で旅行に連れていってくれたのだ。行き先は三重県の伊勢志摩だ。夏希が志摩スペイン村に行きたいと言ったため、笑顔で快く承諾してくれたのだ。

恐らく、離婚してから何もやれていないという思いが富栄の中にあったのかもしれない。だが、夏希はそれだけでも嬉しかった。

一日目は宿に着いた後、宿でゆっくりと過ごし、二日目には志摩スペイン村で一日遊び、三日目は伊勢神宮で参拝というコースだった。こんな何気ない旅行でも夏希にとって嬉しかった。もう一度、あんな楽しい旅行がしたかったし、旅行に連れていってもらった事で一番に母親の愛を感じていた。

だが、施設に入る前の自分はどうだっただろうか。富栄の事は考えず、ただ自分のためだけに行動を起こしてきた。自分さえ良ければそれでいいという考えだったに違いない。富栄が亡くなり、自分の行動をしてきた事の愚かさに気付いた今では、素直に富栄の言う事を聞いておくべきだったと思うようになっていたが、その当時はそんなことまで気付かないでいた。

中学生という難しい時期にこんな大きな決断を一人でしたのだから、これから先、どんな決断も出来るかもしれないと思っていた。出来るかもしれないというより、しなければならないのだ。これから一人で生きていくには、大きな決断をしなければいけない事もあるだろう。中学生の経験があるからこそ、この経験が活かされるのではないかと思っていた。

富栄の事件を調べた初日、今日の結果は岸田という内縁の夫の事が知れた事が一番大きい。まさか初日からこんなことがわかるとは思ってもみなかった。思い切って富栄の店に行って良かったと思っていた。初日からいいスタートが切れたと思っていた。

しかし、順調に行くとは思えなかった。途中、何が起こるかわからない。犯人に富栄の娘だと知られれば何かされるに違いない。誰が犯人だかわからない今、自分の身に何かが起こる事も暗示しなければいけない。

それに、伊藤の言うとおり、一度も会ったの事のない富栄の内縁の夫である岸田という男性にも簡単に会わないほうがいい。警察がきちんと身元を調べてもらってからのほうがいい。そうじゃないと何をされるかわからない。哲平と伊藤が心配してくれたとおり、富栄の殺害した犯人を調べるに当たって慎重にならなければいけないと夏希自身そう思っていた。

そこに美夕からのメールが入った。夏希はすぐに目を通すと、ホッとため息をつく。美夕からの心配のメールだった。夏希は今日得た事の報告とありがとうと一言返信した。その後、ベッドに入った夏希は疲れから来る睡魔が一気に襲いくるとすぐに眠りについた。

翌日、目を覚ました夏希が食堂に行くと、女性職員が血相を変えて夏希の元にやってきた。

「なんだよ?」

夏希はまだ眠いのか、目をこすりながら聞く。

「マスコミが夏希の事を嗅ぎつけて、施設の前まで来てるのよ」

早口で言った女性職員は不安そうな表情をした。

「え? もう…?」

それを聞いた夏希は一気に眠気が吹き飛んでしまった。

「そうなのよ。今日、学校はどうする? 休む?」

女性職員は学校に行くかどうかを聞くが、夏希の答えは決まっていた。

「行くに決まってるだろ。今のところ、学校から連絡はないんだよな?」

「ないけど…」

「なら大丈夫だ。この分だと学校名は知られてるかもしれないけど、何もしてないんだし堂々としてればいいじゃねーか」

夏希は強気に言う。

「わかった。夏希がそこまで言うなら…。学校に行く前に言ってちょうだい。裏口から行けばいいから…」

女性職員は了承した。

夏希はいつもより少し早くに高校に向かう事にした。職員の何人かがマスコミがいないか確認すると、バス停までさっきの女性職員がついてきてくれた。無事にバスに乗り込んだ夏希を見ると、女性職員はホッとした表情を見せた。

夏希はバスに乗ると、マスコミがもう自分の事を嗅ぎつけたのかと思うのと同時に、自分はどこまで人様に迷惑をかけているのかと思っていた。富栄に娘がいるとわかればマスコミはすぐに調べる。そして、追いかけてくる。個人情報も何もないなと実感していた。

高校に着いた夏希は、マスコミがいない事に内心ホッとしていた。きっと自分の通う高校まで知られていて、すでに来ているのではないかと内心不安に駆られていたからだ。

夏希が下駄箱で上履きに履き替えていると、いつもギリギリにしか来ない義隆が登校してきた。

「学校に来て大丈夫なのかよ? ニュースでお前が住んでる施設が映ってたぜ」

義隆は上履きに履き替えながら、ニュースで見た事を何事もないように夏希に聞く。

夏希の事を心配してくれているような口調だ。

一瞬、驚いた夏希だったが、すぐに正気になった。

「大丈夫だ。今日は裏口から出てきたからな。まぁ、放課後には学校まで来てるかもしれねーけどな」

「それはあるかもな。帰る時って言っても応援団の練習があるから、帰りは五時半とかになるだろうし、その頃にはマスコミもいないんじゃないかな」

義隆は上履きを履き終えると、まっすぐ夏希のほうを見る。

「そうだな。一番は来ないほうがいいんだけどな。もしかして、心配してくれてるのかよ?」

夏希は心配してくれてるのかと聞く。

そう聞かれた義隆は鼻で笑う。

「まさか…。ニュースで見たから聞いただけだ。それにお前の母親が殺害されたばかりだからな。ホント、そんな時にでも学校に来るなんてお前らしいよな。普通はショックで来れねーよ」

「確かにショックを受けた。でも、いつまでも泣いていられねーからな」

夏希は自分の立ち直りが早い事に驚いていたが、富栄を殺害した犯人を捜すと決めた以上、犯人がわかるまで泣くまいと決断したのだ。今までにたくさん心の中で泣いたし、犯人がわかってから泣くかもしれない。今の自分は強くいないといけないという使命感みたいなものがあった。

「お前がそう決めた事ならいいんじゃねーか」

義隆は夏希が決めた事なら何も言わないという感じだ。

夏希のほうは義隆なりのエールだと受け取っていた。

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