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子供たちに誇れる仕事を

【速報】情報は国有化されました【速報】


7チャンネル、毎朝元気をくれていたお天気お姉さんは淡々とそう告げ、それっきりテレビで観てない。



要注意団体、廣川新聞社。俺の職場。


「星座占いの占める割合でけえよ」

「しょうがないじゃないすか、情報省の目があるんだから、まともな記事作れませんって」

「…ぶっちゃけ、あのタレントの不倫はマジネタだろ」

「もうそんな時代じゃないんですって」


民放は廣川の1社を残してすべて倒産。

その後、国内唯一の民放として要注意認定を食らった。それでも俺たちが残れているのは、大昔、表現だとか、報道の自由を憲法で保証してくれたマッカーサーのおかげだ。

まあ、それも時間の問題だった。政治には詳しくなかったが、8割を民青党の若者が占める国会では、憲法改正も秒読みだろう。


俺たち世代の政治家の腐敗が、若い世代の政治への興味関心を高めた。ややあって、日本は若者主体の国へと生まれ変わった。年金制度は撤廃され、趣味の悪いスキャンダルを垂れ流すオールドメディアは一掃された。


なんて素晴らしい国になったことだろう。

…そんなお褒めの言葉しか新聞には載せられない。


「そんな時代じゃない、ねえ…」


お天気お姉さんを奪ったお国のヨイショは記事にしたくない。いや、なにより、ジャーナリズムに反する。ああ!なんて息苦しい時代だ!日に日にタバコの本数が増えてるのをコンビニを利用する頻度で実感する。


「…仕事中のタバコとか、端締はじめさん世代でも禁止されてましたよね?」

「俺ら要注意団体だからいいの、労基とかねえし」

「いまこの瞬間を記事にしたっていいんですよ」

「えできんの」

「…いや、無理っすね」


"子供に悪影響な事"と判断されれば、情報省に営業停止処分を下される。全くやりがいのない仕事になったもんだ。


「世に出した瞬間に俺ら無職ですもんね」

「あそっか世に出す"だけ"ならできんのか」

「自爆する価値のある内容ならやれちゃいますよ〜」

「労基にその価値がないことは確かだな」


考えてみれば、いままで、やりがいなんてあっただろうか。アイドル、タレント、大物司会者の不倫を暴いてなにが楽しかった?別にその日の飯が食えれば良かったんだ。でも編集部が盛り上がるのは、まあ、悪くない気分だった。なんでジャーナリストになったんだっけか。


思い出した。


俺は、俺が書いた記事で、どよめく民衆が見たかったんだ。俺の見た情報で、俺のタイピング数回で国民がどうにかなってしまうそのさまが見たかったんだ。


「…なあ、菜魚ナヲ、俺と無職になる覚悟はあるか?」

「なんすか、よっぽどのとくダネなんでしょうね」

「政権交代が起こった2年前のネタだ」

「ああ、民青党旋風で忙しかったっすね、懐かし~」

「現民青党首相に公職選挙法違反があったってハナシだ」

「…情報源ソースどこすか?てか、なんで当時報道しなかったんすか」

「…まあ、裏金貰っちゃってるし」

「ん?」

「部下には申し訳ないと思ってるよ、もうお前しか残ってねえけどさ」

「それをなんで今更告発する気になったんです?」


大金貰って、生活が楽になって、人生について考える余裕ができた。まあまあつまらん人生だったな。パパはなんの仕事してるの?ってきかれたら、なんて答えようとか、妻も子もいないのに考えたりしてた。やりがいとかいまさら見出してどうなるんだって話だが、この先、長生きしても砂を噛むような人生が続いていくだろう。


「男なら一花咲かせてから死にたいだろ」

「…まじで死にますよ、てか自分にメリットがないじゃないすか」

「お前一人くらいヨユーで養えるぞ、政治の裏金。」


菜魚の目がキラキラしだした。

この守銭奴が。ジャーナリストの鏡が。


「乗ります。その話」


聞く前からわかってたセリフを聞き終えて。赤マルの火を消す。


「起こすぞ、大スキャンダル」


国営テレビの天気予報は、嵐が迫っていることを無機質な合成音声で伝えていた。

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