Fear resembles the death closely
短いです。
それと、グロイです。
まぁ、文才が無いのでそのグロさが伝わっているかは解りませんが………。
………あれ? 何故目から液体が………。
「ハァ、ハァ、ハァ………」
「糞が………ま、まさか………本当に幻想種が存在………するなんて」
「やってられるか………あんな化け物と戦ったら………即………殺されちまう………」
くすんだ鉄の鎧を身に纏う兵士。
この兵士達は逃げて来たのだ。
どんな戦場よりも血生臭く、圧倒的な力を有した敵から。
『不確かな狼』が蹂躙するあの場から。
手に握る剣が唯の棒にしか見えなくなり、身に纏う鎧は唯の紙にしか思えなくなる。
『不確かな狼』達が振りまいた恐怖は、凄まじく強力で何を考えても死を連想させる。
その中で、逃げるにまで思考が至ったこの兵士達は中々の手練れなのだろう。
一般市民ならば、逃げるなんて思考にすら辿り着けない。
それ程の相手。
だが、それ程の相手、『不確かな狼』だからこそ運が無かったとしか言えない。
逃げる者を見す見す観逃す筈が無い。
『あら? 何処にお出かけかしら?』
女性の声が響き渡る。
その声を聞き、必死に走っていた兵士達は足を止めた。いや、止めてしまった。
体が硬直する。聞こえた声。それは明らかに人の声ではなかった。
そう、まるで先程まで聞いていた声。
「!? だ、誰だ!?」
一人の兵士が辺りを見渡しながら叫ぶ。
剣など先程の惨状に捨ててきた。
逃げる途中で襲われる。そんな事は思考の隅にすら無かった。
兎に角あの惨状から逃げ出したい。死にたくない。
それだけしか考えられなかった。
恐怖は人の思考を鈍くさせる。
唯、この兵士達は鈍くなる程度で済まなかった。
絶望的な状況。
逃げる最中、一番に感じていけないのは恐怖だろう。
恐怖は人の思考だけではなく、体すらも呑み込む。
そうなってしまえば、内部分裂が始まる。
身内同士の殺し合い程、醜い物は無い。
恐怖は混乱を誘い、破滅を導く。
必要な者はそんな者を統率出来るリーダー的存在。
そんな存在も居ない。恐怖は既に全てを蝕む。
この逃げる兵士達に、この場から助かる策など在る訳がない。
「ど、何処だ!? 何処に居やがる!?」
叫ぶ。
叫ばなければ保てないからだ。
額から流れる汗。方や涙を流す者までも居る。
『何処? さぁ、何処に居るのかしらね。見つけられたら、ご褒美でもあげようかしら?』
響く声は、兵士達を馬鹿にした様に楽しむかの様に、じわじわと恐怖を煽る。
敵に姿を見せない事は心理戦に措いては有効だ。
その場合、自分は相手が見えていないといけない。
それに相手に切り札が無い場合が好ましい。
第一に、会話の所々で相手の行動を態々口にする。
『フフ、そっちに私は居ないわよ?』
それにより相手は焦り、易い挑発を始める。
「何処にいやがる!? さっさと出てこい!! 姿を隠す臆病者が!!」
第二に、そこで見せしめに一人仕留める。
『フフフ………』
ブシュゥゥゥウウウゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!
「「「「!!?」」」」
どうやって殺したか悟られない様に。
「う………が………」
ドサッ―――………。
一人の兵士が首筋から血を噴き出し地面に倒れる。
「ヒッ!!!」
兵士の一人が見慣れて居る筈の血に怯え小さく悲鳴を上げる。
限界に達した者は直ぐさま逃げ出す。
「うあぁぁあああぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああッッッッ!!!!!!」
脇目も振らず、背中をガラ空きに逃げ出す。
そして、逃げる者は即座に仕留める。
ブシュゥゥゥウウウゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!
逃げられない。そう思わせる為に。
この場は、既に声の主の独壇場だった。
手中。掌で踊るだけ踊らされる哀れな道化共。
兵士達は恐怖と言うメイクを施した道化なのだ。
生死の綱渡り。飛んだ先に誰も居ない空中ブランコ。死が待つ火の輪潜り。
演目は声の主の匙加減一つだ。
『残りは三人。言い残す事は? しておきたい事は? 懺悔とかしたいのであれば、私が聞いてあげるわよ?』
心底楽しそうに尋ねる。
既に、兵士達に叫ぶ力など残っていない。
精神的に追い詰められ、何かをする気力が起こらない。
「いっそ………人思いに殺せ」
兵士が虚ろな笑みを浮かべる。
その言葉を聞き、声の主は一気にテンションを下げる。
『………愚か。余りにも愚か。殺せ? 随分偉そうね………だから嫌いなのよ』
ブシュゥゥゥウウウゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!
「!? ぐがぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁぁああああああぁぁぁあああッッッ!!!」
殺せと言った兵士の左腕が、肩から綺麗に吹き飛ぶ。
噛み切られたかの様に。
『何様なの? 今のアンタ達には死ぬ権利すらないのよ?』
声は響き続ける。
『痛みを伴わず、恐怖から逃げるなど愚行。味わえ。それが、アンタ達が味わえる最後の痛み』
「うが………ああ………」
左肩を押さえ、呻く。
『人間と言うのは、勝手に自分達に何かを「殺す権利」があると思い込む。そして当たり前の様に「死ぬ権利」があると思い込む。………図に乗るなよ』
声の主は徐々に声に殺意を込める。
『アンタ達愚かな人間には『殺される現実』しか無いのよ。等価交換。散々無駄に殺して来たアンタ達人間が払い忘れた対価………払いなさい』
「うぅ………あが………」
兵士は動かなくなり、呻き声だけ聞こえる。
まだ五体満足の二人の兵士も逃げる事を忘れ呆然と立ち尽くす。
『………それに、私は生理的に人間が嫌いなのよ………まぁ、王は特別だけど』
一瞬和らいだ殺気。だが、
ブシュゥゥゥウウウゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!
ブシュゥゥゥウウウゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!
五体満足であった二人の兵士の首筋からいきなり血が噴き出し、倒れる。
『………殺すのであれば殺される覚悟を持て。死を願うならば痛みを伴い死ね。死を恐れるならばその恐怖を抱いて死ね………』
「うあ………―――――――」
遂には呻き声すら途絶えた。気絶しただけなのだが、放って置いても時期に死ぬ。
『………はぁ。疲れるわね、本当に………』
【森】の中から、白い狼が姿を現す。
『人間には転生と言う概念があると聞くわ。次にアンタ達が生を受ける時は、まともな人間になる事を切に願うわ。………そうすれば、もしかしたら私達がアンタ達の隣に立てる日が来るかもしれない』
白い狼、クィスは倒れ死ぬ兵士達見ながら言葉を発する。
実に饒舌。聞き手が居ない会話は、響かず霧散し消える。
『………まぁ、生理的に人間は無理だけどね。王は特別だけど』
ゆっくりと、再度【森】の中へ姿を消す。
無残な死体を残し。
本当はもう少し長い筈だったのですが、それだと長くなるし、終わりが中途半端になる為、切りました。
まぁ、これも十分中途半端ですけどね。
『不確かな狼』達は良い奴ではないですよ。
まぁ、何故そこまで人間を毛嫌いするかは後々ですかね。
次回はメアです。
強気な女性をイメージしています。
では、では。