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King of the forest ~Improved version~  作者: 龍門 
【 森 】 ~ 邂逅 ~
5/21

Fight of start

中々に大変だ・・・・。








 真夜中の筈なのに、空は赤く光っている。

 その空を見上げながら少年は奥歯を噛み締めた。

「まさか火を放ってくるとは」


「全て燃やすつもりではないだろうさ。炙り出すつもりなんだろう」

 ナイトメアーも少年同様空を見上げている。


「クソが。愚策中の愚策だな」

 少年が空から視線を外し歩き出す。


「私を放って置いて良いのか? 何かしでかすかもしれないぞ?」

 ナイトメアーが薄く笑みを浮かべながら尋ねる。


 少年は半身だけ振り返り、笑みを浮かべる。

「じゃぁ~着いて来てよ」


「は?」

 予想外の返答に彼女はあんぐりする。


「それなら放って置くって問題を解決出来る」

 少年はそれだけ言って歩き出す。


「………何なんだ一体」

 彼女は少年のどれが本当でどれが嘘か見抜けないでいた。

 だが、下手に動けない状況で未だに殺されていないのは幸いだろう。


 ナイトメアーは一定の距離を開けて少年に着いて行く。

 すると、


『おいセン!』

 茂みから何かが飛び出してくる。


 それが獣であると理解するのに数秒掛かった。

 そして、理解した後に異常さに気付く。

「………何故狼が人語を?」


『んあぁ? ………何故人間の女が………コイツは兵士共の中に居た………』

 狼はナイトメアーを睨みながら近づく。


 普段の【森】ならば暗闇で狼かどうかなど解らない。

 だけれど今は火の明るさでうっすらと見える。


 ナイトメアーは驚愕していた。

 それは自分の目の前に居る獣のせいだ。


 黒い毛色。赤い眼。体に纏わる黒い靄。

 そして人語を話す。

「………まさか『不確かな狼ゴーストウルフ』か?」


『フンッ! だったらどうだって? 貴様は今から俺に喰われるんだよ。何を知っても無意味だ』

 狼は鼻で笑いながら近づく。


 ナイトメアーは狼が言った事よりも、未だに狼が喋ると言う現象の方に驚いていた。


 『不確かな狼ゴーストウルフ

 名の通り存在が不確かな事と、その狼が幽霊の様に実体が無いと言われる所から付けられた名だ。


 『世界が変わった日ワールドチェンジ』の時に『未知魔法アンノウンマジック』と共に消えたと言われている。幻想種。

 今では絵本や童話になっており、伝説上の生き物だ。


 その生き物が目の前に居る。

 驚愕。そして、その状況で思わず唇を舐めた。

「ハハッ! 伝説上の生き物とご対面なんて………最高だね」


 そう言いながらナイトメアーは瞬時に鎌を造り出す。

 その様子を見た狼が目を丸くする。

『『失われた魔法ロスト・マジック』!? 本当に使えたのか!』


 ナイトメアーは造り出した黒い鎌を、最小限の動作で狼の首めがけて振るう。

 それは一瞬。


 殺った!!

 そう彼女は確信した。


 だが、

『小娘が―――』

 狼がそう呟き笑みを浮かべた瞬間、鎌の刃が狼の体をすり抜けた。


「なっ!!?」

 ナイトメアーは驚き、後ろに下がろうとした。


 すると、狼が体に纏っていた黒い靄が完全に狼を包み込み、その場から姿を消す。

「!!?」

 ナイトメアーは辺りを見渡す。


 消えた!!?

 そう思った時、


『終わりだ』


 ナイトメアーの耳元で狼が囁く。

 耳元には黒い靄に包まれた、狼の頭だけが宙を浮いていた。


 彼女は体を硬直させる。


 これ程の距離まで近づかれて、反応出来なかった。

 そして、急に襲い来る死への感覚。


 直ぐ側で狼が口を開く。

 鋭く鈍く光る牙。


 その牙がナイトメアーの首筋に食い込む瞬間、

「そこまでだ」


 今まで見ていた少年が止める。


『………何故だ?』

 狼が首筋に牙を当てたまま少年に尋ねる。


「殺す必要性が今は無い」

 少年は腕を組みながら淡々と言う。


『必要性? それを求める必要性が無いが?』


「俺がその女と共に居た時点で、俺に今は殺す気が無い事ぐらい解るだろ?」

 少年がそう言いながら狼を睨む。


『チッ!』

 狼がゆっくり首筋から牙を離す。

 そして黒い靄に包まれた頭部がゆっくりと少年の側まで行く。

 少年の側まで行った時には何時の間にか狼の頭部は体に付いていた。


 その光景を見ながらナイトメアーは冷や汗を流した。

 もし少年が止めなければ確実に喉元を噛み切られていた。


 彼女自身が油断していたのもあった。

 それでも力量は断然狼の方が上だった。


 幻想種に会えた嬉しさと好奇心で行動してしまった事を後悔していた。


『命拾いしたな女。だが、気を付けろよ? この森ではテメェーは餌だよ』

 狼がニヤリと笑みを作る。


「………確かに。貴様みたいなのが大量に居るのなら私は餌だな」

 頬を流れる汗を拭う。


 此所まで力量差を見せつけられたのは初めてだった。

 本気を出してないとは言え、それで死ねば元も子も無い。


 悔しさの反面彼女は嬉しさも感じていた。

 目標と言うモノを見つけた様な気がしたからだ。


 すると、狼が思い出した様に少年に話しかける。

『そうだセン!! 兵士共が森に火を放ちやがったぞ!!』


 それを聞いた少年は「解っている」と呟き、ナイトメアーを見た。

「アンタどうする?」


 質問の意味が解らずナイトメアーが首を傾げる。


 その様子に少年は笑いながら説明する。

「簡単な質問だ。此所で死ぬか後で死ぬかって事さ」

 少年は笑いながら言った。殺気や威圧感などは含まれていない。

 だが、ナイトメアーは背筋を凍らせた。


 本気だと解っているからだ。

 それに、先程少年は言った。「―――今は殺す気が無い」と。


 生かされていると言う事を理解させられる。

 「何時でも殺せる」そう言われている。


 彼女は静かに口を開く。

「………少しでも長く息をしていたいね」


 それを聞いて少年が歩き出す。

「それなら、付いて来てよ」


『………チッ! 潔く死ねば良いものを』

 狼が舌打ちしながら少年の後を追う。


 その様子を見ながら、今なら逃げられるのでは?と思った彼女だったが、この【森】は彼等のホーム。下手に動けば殺される。


 ゆっくりと彼等の後を追う。

 少しでも長く生きられるのならば、当然付いて行くだろう。


 そこまで彼女は潔い人間ではない。

 負けイコール死が彼女の方程式ではないからだ。


 彼女にとっての死は、最後まで足掻いての死なのだから。











 【森】の外。

 兵士達が【森】へ向かって火が付いた矢を放っていた。


 その様子を見ながら『紅蓮騎士団』の騎士が舌打ちした。

「愚策だな。これで炙り出せると思っているのか?」


 そう吐き捨てた騎士の隣に立つもう一人の騎士も言う。

「タイミングも最悪です。これでは『黒き鎌使い』に勘づかれますよ」


 この作戦を考え実行したのは一応この作戦を任されている隊長だ。

 『紅蓮騎士団』はこの中では一番偉いのだが、この作戦に関しては別任務で来ている為口出しはしない。と言う約束事が結ばれている。


 その別任務と言うのが『黒き鎌使い』の抹殺と【森】の調査だ。

 だが、この様子だとその『黒き鎌使い』の抹殺が不可能に近くなった。


 それでも何も言わずに傍観しているのは約束事があるからだろう。

「………まぁ、何かを言っても良いのだがな。面倒だから何もしないだけで」


「『黒き鎌使い』の抹殺が失敗しても森への調査が上手く行けば問題なしですからね」


 火は盛大に【森】を焼いていた。

 その様子を眺めながら、騎士が呟く。

「あの女とは戦ってみたかったのだがな。この様子だと残念ながら諦めるしかないか」


 そう呟きテントの中に戻ろうとした時、


「ぐあぁぁぁあぁああああぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!」

「な、な! 何だ、ぎゃぁぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁあッッッ!!!!!!」


「!!?」

 兵士達の悲鳴。


 それを聞いて騎士は振り返る。


 すると、燃える【森】から一人の女が現れる。

 それを見て騎士は驚きの声を出した。

「………まさか、現れるとはな」


 現れた女は鎌を持ち、不敵な笑みを浮かべていた。


「貴様ッッッ!!!!!」

 複数の兵士達が剣を翳しながら女に向かって走り出す。


 それを見て、女は浮かべる笑みを一層に深くした。

「『幾千もの悪夢サウザンド・オブ・ナイトメアー』」


 そう女が言った瞬間、手に持つ鎌の刃が弾け飛ぶ。


 その弾け飛んだ刃は、黒い固まりとなり兵士達めがけて飛ぶ。


ブシュゥゥゥウウウゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!


「「「「ぐぎゃぁぁああぁあぁぁぁぁああああああああッッッ!!!!!!!!」」」」


 兵士達は叫び、血を噴き出し倒れて行く。


「まさか、あれは『未知魔法アンノウンマジック』!? 扱えるのか!?」

 騎士は驚き、そして剣の柄を握った。


「面白い………面白いぞ!!!!」

 兜で顔は見えないが、彼女は笑みを浮かべているだろう。


「フロア!! 私達も行くぞ!!」

 もう一人の騎士にそう叫び、進み出す。

「ハッ!!」

 フロアと呼ばれた騎士も剣を抜き、後に続く。


 すると、【森】から複数の何かが飛び出した。


「!!?」

 騎士はそれを見つめる。

「狼………?」

 誰かがそう口にした。


 【森】から飛び出したのは黒い狼達。

 その狼の一匹、赤い眼。右側が欠けた牙。その狼は女の後ろで止まり、兵士達を睨んでいた。


 その狼が女の側まで行く。

『愚者共!! 貴様等は我等の森を汚した!! その代償………貴様等の死で払って貰うぞ!!!』

 狼が声を発した。


「なっ!? まさか『不確かな狼ゴーストウルフ』か!?」

 騎士が驚く。それはこの場に居た全ての者もだろう。


『行くぞ!!! 我等の牙の鋭さ………見せつけろッッッ!!!!』

 狼がそう叫んだ瞬間、全ての狼が兵士に向かって走り出す。


「クソが!! まさか『黒き鎌使い』は【森】となんだかの繋がりを!!」

 騎士がそう叫び、走り出し叫ぶ。

「怯むな!! 我々は『ガランド大帝国』の剣だぞ!! 我々が獣如きに怖じけ付いてどうする!! 前を見よ! 剣を構えよ! 我々には力が在る!!!!」


 その叫びを聞いた瞬間、逃げようとした兵士達が剣を構える。

 土壇場でのこの統率力が中々だった。


 だが、それだけで切り抜ける程の力は持ち合わせていなかった。


 先程叫んだ狼とは違う、尻尾に鎖を巻き付けた狼が叫ぶ。

『塵共が!! テメェー等の末路は死だけなんだよッッ!! 獣の恐ろしさを体に刻んでやるぜッッッ!!!!!』

 叫び、狼が纏っていた黒い靄が完全に狼を包み込む。

 その瞬間、その黒い靄が凄まじい速さで動き、兵士達を噛み殺して行く。


「アレが『不確かな狼』の力か!?」

 そう騎士が吐き捨て時、フロアが叫ぶ。

「レイナード隊長!!!!!」


 名を呼ばれ、騎士が振り返ろうとした時何かが迫って来ているのに気付く。

「なっ!!?」


 兵士達の間を縫って、何かがレイナードと呼ばれた騎士へ向かって来ている。

 その存在に気付いた兵士達が攻撃するが、全て躱し向かっている。


「ハッッ!!!!!」

 フロアが落ちていた槍を拾い何かに向かって投げた。


 だが、その何かは投げられた槍を紙一重で躱し、通り過ぎる瞬間に槍の柄を掴む。

「なっ!!?」

 それに驚きながらもフロアは剣を構え走り出す。


 そこでレイナードがその何かが何なのか気付く。

「子供だとッ!?」


 少年は姿勢を低くし、槍を構えながらフロアに向かって駆ける。

 そして、その槍を投げるモーションに入る。


 それを見てレイナードは直感で危険だと気付いた。

「フロア!!! 避けろッッッ!!!!」


 フロアは動かず剣を構えている。

 アレは避けなければ駄目だ!!!

 そう思い、レイナードは短剣を抜いた。


 少年かはフロアめがけて槍を投げた。


ドゴォォォォオオオオオォォォォォォンッッッッッッ!!!!!!!!!!!


 凄まじい速さで槍が投げ出された。


「なっ!!!??」

 その異常な速さに驚き、動きが一瞬止まる。


 当たる。

 そうフロアが思った瞬間、声が響く。


「貫けッッッ!!!!!!!」

 その叫び声が響いた瞬間、投げられた槍の真横に何かが衝突し、槍をへし折る。


「れ、レイナード隊長………」

 フロアがレイナードを見て名を呟く。その表情は安堵。


 そのレイナードは短剣の刃先を少年に向けていた。

「此所で使う気は毛頭無かったのだがな。お前は余りにも危険だ」

 彼女は短剣の柄を掴む力を強くする。


 少年はゆっくりと腰から短剣を抜く。

 そして、笑みを作る。

「俺も使うとは思わなかった………かな?」



 これが二人の初めての対峙だった――――………。






少し疲れた。いや、スゲェー疲れた。

どうしてナイトメアーが狼と一緒に戦っているかは次回。


それでは・・・。

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