To an overwhelming, disadvantageous situation
進まないなぁ~。
ラブコメを目指しているのだけれど、全然だ。
何時になれば書けるのだろうか。
イチャイチャとかさぁ~。
暗い【森】の中。少年と狼は身を潜めていた。
目の前には大量の兵士。
その兵士を見て狼が嫌気が差した様な声を出す。
『これだけの滓を………吐き気がする』
その一言で狼が人間を嫌っているのが解る。
だが、それだとこの少年は?と思ってしまう。
少年は狼の隣で兵士達を見ている。
狼は少年を見ずに尋ねる。
『で、骨の有りそうな奴は居たか?』
その問いに少年は直ぐには答えない。
『居ないみたいだな』
少年の答えを聞かずに狼が言う。
その意見に頷こうとした瞬間、少年が一人の人間を見つける。
「………あれは」
『ん? 居たのか?』
狼も少年が見ている人間を見る。
少年の視線の先には全身を黒で固めた女性が居た。
『女? ………だが、異様だな』
狼が何かを感じ取る。
その言葉に少年は頷く。
「魔力だ。まさかこんな所で『失われた魔法』を扱える人間に会うなんて」
『それは早合点し過ぎた。魔力を保持している奴など少なくない。問題はそれを使えるかどうかだ』
狼は少年を見ながら言う。
「そうだな。でも、異様なのは確かだ」
そう言いながら少年は後ろに下がる。
狼もそれに続き後ろに下がる。
『作戦は?』
「俺的にはあの女が気になる。周りは兵士だけなのにあの女だけ兵士じゃなかった」
少年が切り株に腰を下ろしながら答える。
『そうだな。では、向こうの出方を見るか。バルデトとクィスには待機だと伝える』
狼はそう言いながら【森】の闇に駆けて行った。
残った少年はもう一度外を見た。
視界に居るのは全身黒の女性。
その女性を見ながら少年は少し微笑んだ。
その真意は解らない。
だが、その微笑みは年相応の無垢な笑みだった。
『黒き鎌使い』ナイトメアーは【森】の前に立っていた。
後ろには複数の兵士。その兵士達の前に隊長が腕を組み仁王立ちしている。
「作戦内容は解っているだろ?」
隊長がナイトメアーに尋ねる。
ナイトメアーは振り返らずに答える。
「内容? あぁ、あの不透明なアレか。大体はな」
それを聞いた隊長は後ろに立つ兵士に何かを尋ね、そしてナイトメアーに言う。
「良し。では行けッ!!!」
その命令に若干眉を細め、けれども仕方無いと言った感じでナイトメアーは【森】へ歩き出す。
暗い、暗い闇。
【森】に入って直ぐに周りが見えなくなる。
外では松明の明かりで昼並みなのだが、【森】の中は暗闇だ。
少し入っただけで光が届かない常闇へと変わる。
だが、ナイトメアーは気にせず歩く。
夜目が利くらしい。
全身黒の彼女は闇に同化し、息を潜めながら移動する。
見渡しても生き物の気配が無い。
あの噂、「【森】に入いれば呪い殺される」。これが本当ならば何かしらのアクションが在るはずだ。
だが、元々彼女はそう言う噂の類を信じ無い方だ。
所詮は【森】に住む獣の仕業だろう。
そう思いながらも何かイレギュラーが起きないか楽しみにもしていた。
すると、微かに生き物の気配を感じた。
立ち止まり、辺りを見渡す。
けれども夜目が利くと言っても隅々まで見える訳ではない。
静かに、静かに息を潜め辺りを見渡す。
何かが居る。だが、それが何かは解らない。
獣か、はたまた人外か。
ガサッ―――。
後ろで茂みが音を鳴らす。
誰か居るのか?彼女は差ほど慌てず息を潜める。
ガサッガサガサッ―――。
ナイトメアーの周りの茂みが不自然に揺れる。
何かが居る。だが、直ぐさま襲って来ないと言う事は多少なりとも考える事の出来るモノ。
彼女は直ぐさま攻撃出来る体勢を取る。
ガサッ!!―――。
茂みから何かが飛び出す。
彼女は笑みを浮かべ、その方へ攻撃しようとした瞬間、
「甘い」
声が響く。
「なっ!?」
彼女は慌てて後ろを振り返ろうとする。
だが、それは遅かった。
「ぐッ!!!」
何かが彼女の首を掴み、そのまま押し倒される。
首を押さえられ、そして胸に刃物の刃先が当たる。
少し痛みが走る。
「くッ! ………これは………」
ナイトメアーは自分の首を掴む手が人の手だと気付く。
目を見開き、自分を押し倒す何かを凝視する。
「なっ………子供だと!?」
彼女は驚愕した。
自分を押し倒し、刃物を突き付けているのは子供だった。
だが、直ぐさまその少年の異常性に気付く。
「貴様………何者だッ!?」
ナイトメアーが尋ねる。だが、少年は無表情のままだった。
喋れないのか?いや、警戒しているのか?
彼女は考えながら今の状況の打破を考えていた。
子供だと言って油断しない方が良いな。
【森】の中に居るのだ。只者ではないだろうし。
ナイトメアーは考えながら左手を少し動かす。
「ぐッ!!」
だが、少し動かしただけで少年は首を強く掴む。
胸に突き付けられた刃先が皮膚にチクリと刺さる。
血が流れているのが解る。
すると、先程まで黙っていた子供が口を開いた。
「………何故使わない?」
一瞬その言葉の意味が解らなかった。
そして、それを理解した瞬間この子供は危険だと本能が知らせた。
「チッ!!!」
舌打ちをし、直ぐさま左手に力を集める。
掌を開き力を篭める。その瞬間、掌に黒い固まりが生まれる。
その黒い固まりは瞬時に形を変える。
それは黒い鎌。
「フッ!!」
ナイトメアーその黒い鎌を少年へ振るう。
だが、少年はそれを紙一重で躱し後ろに跳ぶ。
躱された。だが、退かす事は出来た。
彼女は少年から目を離さずに立ち上がる。
子供は涼しい顔でナイトメアーを見続けている。
その目に若干の苛立ちを感じていた。
何故、こんな子供がそんな目を出来る?
一瞬感情が揺らいだ。だが、その感情を冷酷さが抑え込む。
黒い鎌を構える。
「………矢張り使えたか。『失われた魔法』お前等では言う所の『未知魔法』」
少年が彼女の持つ黒い鎌を見ながら呟く。
それを聞いて彼女は背筋を凍らせた。
まったく感情の篭もっていない声。
こんな子供が出せるモノなのか?そう思いながら唇を噛んだ。
「良く勉強出来ているね。頭でも撫でて欲しいかい?」
彼女は笑みを浮かべる。
余裕は無い。
彼女は今初めて自分の目の前に立つ子供の強さを感じていた。
異質。異常。
それはどれも初めて感じるモノだった。
逃げろ。本能が告げる。
気を抜いた瞬間、きっと自分は瞬殺される。
頭の中でそのビジョンが何度も再生される。
それに、この子供は彼女が『未知魔法』を使える事を予測していた。
それが何よりも驚愕だった。
勘でも気付く訳がない。
鎌の柄を握る力が強くなる。
どう動く?右か?左か?上か?下か?
駄目だ。どれも愚策。
ナイトメアーは自身の目の前に立つ少年を睨み付ける。
汗が流れる。
すると、少年が口を開く。歳不相応な口調で。
「………中途半端な『失われた魔法』だな。それ以外使えないのか?」
その言葉に唇を噛む。
舐められている。こんな餓鬼に。
苛立ち。苛立ち。苛立ち。
「………糞餓鬼が」
そう呟いた瞬間、手に持つ鎌がグネグネと動き出す。
そして、少年を睨み呟く。
「『悪霊の悪夢』」
鎌は形を固定せずに不規則に形を変えている。
「殺す」
ナイトメアーはそれだけ言い、動き出す。
手に持つ鎌を振るう。
それを少年は紙一重で躱そうとする。だが、喉元をギリギリで過ぎようとする鎌の刃が不規則に揺れ形を瞬時に変える。
「!!?」
少年は目を見開き、瞬時に刃を蹴り上げ後ろへ飛ぶ。
少年は鎌を凝視する。
鎌は不規則に揺れ、動いている。まるで生き物の様に。
鎌を凝視したまま短剣を構える。
それを見てナイトメアーは眉を細めた。
先程の短剣………『有限魔法』か?
鎌を構える。
彼女の表情には余裕は感じられない。
それ程のやり取り。
先程の攻撃も奇襲紛いの一発だ。もう一度やっても今度は完璧に躱されるだろう。
その為、次の攻撃からは自分の反応速度がモノを言う。
少年は見た目からしても力押しで来るタイプではない。
スピードで翻弄して瞬殺。
暗殺に向いたタイプだ。
その反面ナイトメアーは力で押すタイプだった。
鎌と言う武器自体も小回りに向かない。
唯でさえ彼女の持つ鎌は大きい。
だが、彼女にはそれを扱える程の技量が在った。
けれども格上の相手だとこの鎌と言う武器では手に余る。
それでも彼女は武器を変える素振りは見せない。
まさか鎌しか造り出せない訳では在るまい。
そう、彼女のそれはプライドだった。
この武器で刈り取る。
余裕の無い表情のまま唇を舐める。
沸々と沸き上がる高揚感。
彼女は気付いていなかった。今この状況を本能が楽しんでいる事に。
命のやり取り。しかも自分が劣勢。
これ程に生きている事を実感出来るだろうか。
これこそが彼女の異常だ。
生に対して執着していない様に見えて一番貪欲に生を求め、生を理解している。
だからこそ、死ぬ訳にもいかないし逃げる事もしない。
けれども、だからこそ読まれやすい。
現に少年は彼女の、ナイトメアーの異常性に気付いていた。
この状況を楽しもうとしている。
この時点で少年は自分が負けると言う事が無いと確信する。
戦いを楽しむと言う事は勝敗を求めないと言う事。
まずは自分の欲を満たす。勝敗は二の次。
きっとこの女は自分が負けると解れば容易く負けを認めるだろう。
生きる意味を本能的に理解しているからこそ、だ。
逃げはしない。それはプライド。
だが、負けを認めないのはプライドではなく傲りだ。
少年は少し悩んだ。
それはナイトメアーへの対処だ。
殺すか。殺さないか。
殺せば済む話しではある。
そう、済む話しなのだ。
「………1つ尋ねる」
少年は短剣を構えたまま尋ねる。
だが、ナイトメアーはそれに全く答えない。
それでも少年は口を閉ざさず尋ねる。
「森の外に居る兵士は貴様の仲間か? それとも敵か?」
この質問は少年の立場からしては愚問だった。
尋ねてはいけない質問。優勢な彼がこれを言ってしまった場合、自分が殺すか殺さないかで迷っている事を知らせてしまう。
彼女は目を少し開く。
予想外の質問だったのだろう。
少し返答に悩む。
殺すか殺さないかで悩んでいると言う事は、返答次第で即決すると言う事だ。
一字一句違えない様に言わなければ、即少年は動く。
唇を噛み、静かに口を開く。
血と唾液が混じり口の中に広がる。
「仲間ではない。私は雇われの身でね」
「雇われ? 殺し屋か?」
「いや、賞金稼ぎだ。まぁ、殺し屋と大して変わらないがな」
そう言ってナイトメアーは苦笑した。自然に。
その表情を見て少年は驚いた顔をした。
「………そうか」
それだけ言うと少年は構えた短剣を腰に戻した。
「………何のつもりだ? 情けか?」
ナイトメアーは怪訝し、顔を歪めた。
「いや、残念だけどそうじゃない。これは何て言うか………えぇ~と………うぅ~ん」
そう言いながら少年は考え込んでしまった。
その様子を見ながらナイトメアーは首を傾げた。
それは少年から異常さが消えたからである。
短剣をしまうまでは異常な殺気を放ち、有無も言わさない威圧感が在った。
けれども今の少年には威圧感のいの字も無い。
拍子抜け。それが素直な感想だった。
「………ん~」
少年は未だに考え込んでいる。
何をそんなに考える事があるのか。
ナイトメアーは溜息を吐き、鎌を消した。
「君、一体何者だ?」
武器を消す事は自殺行為だが、今の彼女は興が削がれている。
既に戦う気は毛頭無かった。
「何者? ………何て言ったら良いのやら」
そう言って少年は笑った。
年相応な無垢で、純粋な笑み。
少し驚き、そして思わず凝視してしまった。
ギャップと言うヤツか。
先程のやり取りでの高揚感が消えていないせいなのか。
ナイトメアーは少年から視線を外した。
「―――!!?」
すると、少年がいきなり殺気を放った。
それに驚き再度鎌を造り出そうとする。
だが、少年は彼女に殺気を向けているのではなかった。
「………糞が」
少年は忌々しそうに吐き捨てる。
その表情は怒りで歪んでいた。
彼女は何がなにやら意味が解らず、警戒を続けている。
すると―――
【森】が異常に明るくなっているのに気付く。
「これは………」
彼女は空を見上げる。
赤い赤い―――燃えさかる空を。
戦闘シーンが少し面倒だった。
此所で勝敗つけるつもりが無かったので。
まだ少年、つまりは主人公の名前が出ない。
タイミングを見失った・・・。