King and fantasy kind
遅くなると言いながら連続投稿。
プロローグだけじゃ解らないと思い。セットと言う事で。
てか、結構厨二臭い感じですよね。
ネタかぶってる!とかあるかもしれません。
暗闇。高木に空は覆われ光が閉ざされた世界。
【森】
その暗闇の中で影が大木の根っこに腰を下ろしていた。
暗闇のせいか、解るのはそれが人だと言う事だけだ。
いや、もしかしたら人の形をした人外かもしれない。
『他の奴等はまだ来てないのか?』
突然、声が響く。
そして、茂みの中から何かが現れる。
それは四つ足で歩く獣。
「………皆怠け者だからね」
この声は大木の根っこに腰を下ろす人の声。
声は幼さが残る男の子の声。
その少年の言葉を聞いて、獣は大層嬉しそうに笑う。
『ハハッ! それにしてもお前が一番とは………威厳も糞も無いな!』
「威厳なんて、俺には似合わないでしょ? それにまだ『森神樹』に加護を受けていない。見習いさ」
少年も少し嬉しそうに言う。
『まぁ、それもすぐさ。最初の頃は他の奴等からの反発が凄かったが、今では全ての奴等がお前を認めている。『森神樹』もそれはご理解しているさ』
獣が少年に近づく。
「認めて欲しい訳ではないんだけどね。それに、王にならなくとも特別困らないし」
少年は先程までの嬉しそうな声ではなく、億劫そうに言う。
『相変わらず………まぁ、そんなお前だからこそなのだがな』
獣は呆れ、それでもどことなく嬉しそうな声で言う。
ふと、一人と一匹は同じ方向を見る。
「………良くこんな暗闇の中で会話が出来ますね?」
茂みの中から一人の、声からして男が現れる。
『暗闇が嫌いか?』
獣が現れた男の方を見ながら尋ねる。
「嫌いではありませんよ。けれども、相手の顔を見ていないと話している気がしないのですよ」
男は「フフフッ」と笑う。
『我等は夜目が利く。それは貴様も同じであろう?』
獣は呆れた様に男に尋ねる。
「そうなんですけどね。明かりを点けても大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
少年が答える。
「それでは」
そう男が言った瞬間、暗闇に閉ざされていた【森】が一瞬で明るくなる。
全体ではない。周りだけだ。
その明かりによって少年や獣の表情がハッキリする。
少年の容姿は黒髪に黒い瞳。灰色っぽい上下の服。
表情も声同様に幼さが抜けきっていない。
獣の外見は狼だ。黒い毛の色。口から出る牙の右側が欠けている。だが、普通の狼と違うのが体に黒い靄の様なモノがかかっていると言う事だ。
そして、明かりを点けた男は白いローブを着ており、フードで顔をすっぽり覆っている。
その様子を見ながら狼が茶化す様に笑う。
『クハハッ! こんな所でも隠すのか? 用心深いと言うのか』
フードを被る男は苦笑しながらフードを脱ぐ。
「大変なんですよ。今の御時世」
『そうだな………『失われた魔法』を使う幻想種と今では言われる人外。エルフ』
フードを脱いだ男。
白いロングヘア。蒼い瞳。そして尖った長い耳。
正にエルフ。
今では幻想種として恐れられる人外。
エルフはニコリと笑いながら狼に言う。
「まぁ、貴方も十分幻想種ですよ? 『不確かな狼』」
そう言われ、狼はエルフから目線を外す。
先程まで黙ってエルフと狼のやり取りを見ていた少年が口を開く。
「集まりは相変わらず悪いなぁ~」
「まぁ、集まりと言っても毎度毎度何をする訳では在りませんからね」
エルフが腕を組む。
『面倒臭いだけだろうがな』
狼が大きく口を開け、欠伸をする。
すると、
「遅れましたぁ~!!! スイマセン、スイマセン!!!」
茂みの中から飛び出し、そのまま土下座をする青年。
『………良い加減その腰の低さと言うか、プライドの無さをどうにかした方が良いぞ?』
狼が土下座をする青年をみながら溜息を吐く。
「まぁ、それが彼の良い所ですよ。顔を上げて下さい。怒っていませんから」
エルフが微笑みながら土下座する男に言う。
「スイマセンでした。本当にスイマセンでした」
謝りながら頭を上げようとする男。
「ガオッ!!!!」
「ヒィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!」
顔を上げた瞬間、少年が青年の顔の前で大声を出した。
青年は悲鳴を上げ、土下座をしたまま後ろに下がる。
その様子を見ながら少年は笑う。
「ハハハッ! 本当に臆病者だよなぁ~」
『あまり虐めるな。挙動不審が更に悪化して自殺しちまうぞ?』
狼が呆れた様に注意する。
「大丈夫ですよ。臆病者は自殺するのにもビビりますから」
微笑みながら酷い事を言うエルフ。
「御免な! 大丈夫だぞ!!」
少年が笑いながら土下座をしながら震える青年の肩を叩く。
「あ、あまり吃驚させないで下さいよぉ~」
青年は顔を上げながら情けない声を出す。
金髪天パのタレ目の男だ。
「いやぁ~チキンが余りにも面白いリアクションをしてくれるからさ」
少年が年相応の笑みを浮かべる。
それを見て少し男はホッとした。
「心臓に悪いです………それと、僕の名前はチキンじゃないですよぉ~」
青年が情けない声を出しながら抗議する。なっていないが。
「えぇ~美味しいじゃん」
少年が首を傾げながら微笑む。
『確かにな。鶏は旨いな』
狼が「ジュルリ」と涎を流しながら言う。
「何にしても美味しいですよね。鶏は」
エルフが微笑みながら言う。
「ぼ、僕食べられるんですかぁ~?」
涙を流しながら情けない声を出す。
「食べる訳ないじゃん!」
少年が青年の肩を叩きながら笑う。
「よ、良かったですぅ~」
『まぁ、気を付けろ』
狼がボソッと言う。
「出汁にしか出来ない様な気もしますけどね」
エルフもボソッと言う。
それが聞こえなかったのか、青年は涙を流しながら笑っていた。
「まぁ、チキンは食べても美味しくないから食べないけどな!!!」
少年が大声で笑いながら言う。
「………僕が太っていたら食べていたんですか?」
青年が笑みを固めたまま尋ねる。
「ん? ……………………………………………」
何故か沈黙。
青年は急いで少年から目線を外し、狼とエルフを交互に見る。
だが、狼もエルフも沈黙している。
「な、な、な!!! 何で答えないですか!? どうしてですか!?」
アタフタしながら叫ぶ。情けない声で。
『なぁ~に下らない事を大きな声で言っているのか。情けないを通り越して哀れ』
その声を聞き、少年・狼・エルフ・チキンは上を見上げる。
木の枝に腰を掛けながら笑う猿。
一見すれば唯の猿だ。だが、頭にはお面を付けている。何処かの民族が被る様なけったいな色合いのお面だ。
首からは猿が付けるには不釣り合いな青い石のネックレス。手首にも幾つかのアクセサリーが嵌められている。
その猿を見ながら狼は不機嫌そうに言う。
『『嘘吐きの猿』が何を言っている。喉元を食い千切るぞ?』
『フファッ! 怖い、怖い! これでは落ち落ち嘘も吐けない!』
猿はオーバーアクションをしながら甲高い声を出す。
それが狼の感に障る。
『貴様を喰い捨てたくて堪らないぞ? 気を付けろよ。獣には食物連鎖が付きものだ』
それを聞いて猿は狼に指を指す。
『お前が何時までも喰う側の獣だと? 傲るなよ。お前も喰われる側なんだからな』
そのまま猿と狼は啀み合う。
その様子を見ながらチキンはオドオドしており、エルフは微笑み、少年は苦笑している。
『おや? 早く来たつもりなのだがな。所詮はつもりか』
茂みの中から四つ足で歩く獣。だが、狼ではない。
白い虎だ。
この【森】の生態系はどうなっているのかと疑問に思う。
虎はノシノシと歩きながら辺りを見渡す。
『少ないが、仕方無い。それにこれ以上猿と狼が共に居ると互いを喰い合う羽目になってしまうからな』
虎を見ながら少年が口を開く。
「で、態々集めて何を話すんだ? 『幻影』」
幻影と言われ虎が笑う。
『気付いておったか。流石は王だな』
少年は王と言われ眉を細める。
「簡単な話だ。本体は今西だろ? 流石のアンタでも此所まで直ぐさま戻って来られないだろ? まぁ、本気を出せば話は別だけどな」
『その通りだ。その為『幻影』で来たと言う訳だ。さて、話を戻すか』
そう言った瞬間虎の雰囲気が変わる。
いや、それは少年・狼・猿も同じだ。
それを見てエルフも気付く。気付いていないのはチキンだけだ。
虎が何も無い所を見ながら呟く。
『話は後だな。何処の誰かが森の側に集まっている』
『方角的に南。『帝国』だな。もしくはそこらの小国か』
狼も虎同様の方角を見ながら呟く。
すると、狼が纏う黒い靄が完全に狼を包み込む。
そして、その靄が晴れた時には狼の姿はその場に無かった。
『あちら側は確か狼の担当だ。俺は関係無し』
猿がアクセサリーを「ガチャガチャ」鳴らしながら呟く。
「私は人の前に出たくありませんね。殲滅出来る可能性は低いでしょうし」
エルフが眉を細めながら言う。
それを聞いて少年は立ち上がりながら皆(チキン以外)が見る方角へ歩いて行く。
「まぁ、来なくとも俺とディガーが居れば足りるさ。それに向こうにはディガー以外の『不確かな狼』が居るからな」
『では、話は愚者を殲滅した後だ。頼むぞ王よ』
虎が少年を見ながらまるで頬を吊り上げる様に言う。
王。それを聞いて少年は眉間に深い皺を寄せる。
「………まぁ、まだ王じゃないけど、ね!!」
少年は脚に力を入れ、脚力で【森】の奥深くに飛び込む。
『帰って来たら真っ先に貴様を喰ってやるよ!!』
【森】の中から狼の声が響く。猿へ向けた言葉だろう。
それを聞いて猿は鼻で笑う。
『それなら罠でも張って待っているさ』
疲れた。それだけ残してベッドにダイブしたいと思います。