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King of the forest ~Improved version~  作者: 龍門 
【 森 】 ~ 邂逅 ~
17/21

The decision for her



少し早い投稿。

頑張った俺!


ちゃんと書けてるかは解りませんがね。

早く進めたいのに中々。


今回、少しだけバルデトが格好いい事言ってます。

狼なのにね。














 【森】『中央』


 一人と二頭、特に一人は苦虫を噛んだ様な表情を浮かべていた。


「やってくれたな………!!」

 吐き捨てる。


 表情は歳不相応な憤怒。

 まるで親の敵を見つけた様な、全ての悪の根源を見つけた様な。


「………ディガー、バルデト。今からメアの………『森神樹グランドツリー』の場所まで行くぞ」

 それだけ言い、センは歩き出す。


 が、

『んあぁ? 何でだ?』

 バルデトが尋ねる。

 この問いは、場の空気に相応しくない。


 案の定センは歩を止める。

「………バルデト。今………なんて言った?」


『ハッキリ言っちまえば、テメェが気を緩めていた事以外に原因が見つからないんだが?』


「………んあぁ?」


『なんだ? 逆ギレか? 所詮人間の女が『森神樹』に連れて行かれただけの話だろ? 何をそこまでキレる?』


 センはゆっくりとバルデトに近づく。

 殺気をばらまき、見ただけで冷静さを失っていると解る。


「バルデト………それ以上喋るな」


『んあぁ? 「王」を嫌うお前が、今まるで「王」の様な命令を出しているぞ? お怒りの時は「王」を利用するのか? 俺等森の住まう物に対してではなく、余所者のしかも人間如きに「王」を利用するのか? ………少し都合が良過ぎやしねぇか?』


 センの威圧にも屈せず、バルデトは口を開く。それと同時に脚が黒い靄に包まれる。

 戦闘態勢。何時でも殺れると言う現れ。


『止めろ、バルデト』

 すかさずディガーが止めに入る。


『俺は別に止めても良いんだぜ? だがよぉ………「王」様がどうやら殺る気満々らしい』

 ニタリ………と、笑みを作る。


「………バルデト、俺を「王」と………呼ぶな」

 俯き、肩を振るわせながら命令する。


『ニュアンスの問題だろ? 王と「王」、何処が違う? 俺は唯、何時も通りに「王」って呼んでいるだけだぜ?』


「バルデトッッ!!!」

 叫ぶ。センの表情は先程以上に歪んでいる。


『………中途半端なんだよ。あの女を此所まで連れて来た事自体は、テメェがテメェで決めてやった事だ。だがな………予想外の事起きて「王」を利用しようなんて下らねぇ事してんじゃねぇよッッ!!!』


「!?」

 センは言葉を失う。


『バルデト』

 ディガーがバルデトの名だけを呼び、止める。が、バルデトは止まらない。


『何で其処まであの女に肩入れするか知ったこっちゃねぇが、狼狽えてどうする? ………格好悪い姿見せるんじゃねぇよ。言っただろ? テメェが「王」になろうが、ならないだろうが、俺はテメェを手助けするって。それはテメェが「王」以外の自分の価値を見いだそうとしているからだ。………だがな、テメェのミスで起きた出来事に「王」を利用するのは随分と勝手が違うだろうが? んあぁ!?』

 バルデトは叫ぶ。


『………………………』

 その叫びを聞き、ディガーはバルデトを止めるのを止める。

 バルデトの叫びは本心であり、代弁であるからだ。


 「王」しか認めないのならば、「王」を嫌うセンになど従わない。

 だが、現にこうして「少年」のセンに従っている。


 センは認めてはいないが、【森】の中ではセンは見習いの「王」であり、時期「王」であるのだ。

 だが、そんな決め事を取っ払ってお前に従うと、少なくともこの場に居る二頭は誓っている。

 その誓いをその張本人がぶち壊そうとしている。

 バルデトはそれが腹立たしくてならなかった。


『………今此所で決めろ。テメェは「王」としてあの女に肩入れしているのか。それとも「セン」として肩入れしているのか。それによって、俺等の態度が変わるぞ?』


 「王」として肩入れし、ディガー達に命令するのか。

 「セン」として肩入れし、ディガー達にお願いするのか。


 何故、いきなりこんな状況になったのか。


 人間を助ける。

 そこが問題なのである。

 これが人間ではなく、【森】に住まう物なのならば、この様な問答をしなくても良かった。

 同胞の為とバルデトも何も言わずに素直に「王」になっているセンに従う。


 が、人間。つまりは敵。その人間を助けるとなると、センにもそれ相応に決意してもらわなければならない。

 それは「王」として人間であるナイトメアーを利用・・するのか、「セン」として人間であるナイトメアーを助けるのか。


 後者を選んだのならば、何かしらの面倒事が起こるだろう。

 この選択を後悔する程の。


 だからこそ、今此所で決めて貰わないと困るのだ。

 ナイトメアーの事に関してだけは決めて貰わなければ。


『テメェは「王」として行くのか。「セン」として行くのか。………先に言っておくぞ? あの女を「王」として護るのは不可能だ。だが、「セン」としても役不足………テメェはどっちであの女護るんだ?』


 センの表情から怒りが引いていく。

 静かに、静かな、「少年」の表情になっていく。


 その表情を見ながら、ディガーは溜息を吐いた。

 バルデト、お前も随分優しいな、と。


 この問答は別に今此所で決めなくとも良いものだ。

 早いに越した事はなのだが、それでも今でなくて良い。


 先を見てバルデトが此所で口を開いた。

 コイツなりの優しさ。


 戦いの時は「王」になれば良い。

 日常では「セン」のままで良い。


 どっち着かずでどっちにも属すで良い。


 だが、あの人間の女。

 義理も何もなく、理由も何もない。此方の利益に何もならないあの女を護る事に関してだけは、どちらかを選ばなくてはならない。


「俺は―――」


 ………解っているさ。

 お前がどっちを選ぶかなど。


 だがな、セン。

 我は、お前を「王」にするつもりだ。

 永遠に「王」にするつもりだ。


 この先面倒で、最悪な事が起きるだろう。

 だから、今だけはその答えを選ばせてやる。


 あの女の隣だけは、お前の本心で居れば良い。


「―――「セン」としてメアを護る」


 我は、お前に付き従うだけの話。

 これはお前が完全な「王」になるのが遅れるだけの話。


 センの答えを聞き、バルデトが笑みを浮かべる。

『ケッ! あの女に惚れたのか?』


「ん?」


 ………それだけ阻止させて貰う。























 【森】『中央』


 ナイトメアーは忽然と現れた道を歩いていた。

 まるで木々が除けたかの様に出来上がったその道。獣道の様な道ではなく、人工的な道が続いている。


「………嫌がらせか?」

 歩きながら、ナイトメアーは呟いた。


 彼女は歩き続けているのだ。

 誘いに乗り、目の前で輝く光。其処に居るであろう『森神樹』。

 が、歩けど歩けど距離が縮まらない。


 辺りの景色は変わっている。

 その筈なのだが、一向に近づかない。


「来いって言って、これは無いだろう………それにしても、風邪でも引いたか? 鼻が詰まっている様だ」

 愚痴を零し、眉間に険しい皺を寄せ鼻を擦る。


 新手の嫌がらせならば、凄まじいダメージを喰らわしているだろう。

 狼達と共に兵士達相手に蹂躙し、『中央』に入るまで休憩無しで走り、目まぐるしく変わる展開に混乱し、そして何故か頭痛。


 ハッキリ言ってコンディションは最悪だ。

 肉体的なモノと精神的なモノを満遍なく喰らっている。

 今すぐにでも【森】を飛び出し、ふかふかのベッドが備わっている宿で寝たい気分な彼女だが、現在地が良く解らない上にどうやって【森】を出るかすらも解らない。


「………精神的な攻撃」

 両腕をブランと、力無く下げ俯きながら唯々歩き続ける。


「本当に、どうなっ―――――!?」

 突然ナイトメアーは固まった。


 固まりながら、口を何度もパクパクと動かす。

 そして、ゆっくりと首に手を持って行く。


「―――――!!」

 口を大きく開き、何かを叫ぶ。

 が、声は出ていない。


「!!?」

 目を見開き、必死に叫ぶ。いや、実際声が出ていない為叫んでいる様に見えるだけだ。


『語る。不安を、憎しみを、怒りを、独りを、悲しさを』

 声が響く。その声は彼女の、ナイトメアーの声だった。


「!!?」

 突然響いた自分の声。

 だが、彼女が喋った訳ではない。今の彼女は声が出せないのだから。


 では、誰が?

 ナイトメアーは困惑しながらも考えた。だが、直ぐに答えは出る。

 此所に私を拉致したのは誰だ?


 『森神樹』ッッッ!!!


『声が出ない事は恐怖だ。自分の言いたい事が伝わらない。それは何よりも恐怖だ』


 響く彼女の声は淡々と続けている。


 ナイトメアーは辺りを睨み付ける様に見渡す。

 が、姿などない。見えるのは木や草だけ。


 それでも必死に辺りを見渡し、捜すナイトメアーの視界が唐突に閉ざされた。


「!!?」

 突然。見ていた筈の【森】の景色が消えた。


 目を瞑ってしまったのか?

 何かに目隠しされてしまったのか?


『視る。空を、森を、建物を、者を、表情を』


 彼女の声が響く。


 が、ナイトメアーはまた自分の声が響いた事よりも、今の自分の現状で一杯一杯だった。

 突然と消えた視界。


 何も見えない。

 何も映らない。


 苛つきを吐き出す為の声さも出ない。

 募り出す。それは肥大していく。


『真っ暗。何も視えない。笑っている? 泣いている? 怒っている? だが、それを聞きたくとも声が出ない』


 響く彼女の声は淡々と続ける。


 既に、ナイトメアーは身動きを完全に封じられていた。

 喋れない程度なら、相手に伝えたい事が中々伝えられない程度だろう。

 だが、見えないと言うのはその次元を超えている。


 今誰かに襲われたりでもしたら、一瞬だ。

 心の目? 笑わせるな。この二つの目が無ければ何も出来ないに決まっている。


 見えないと言う状況を考えた事が無い。

 対策などある筈もない。


 目が見えなければ戦わない。これに限る。

 けれども今はそんな事を言っていられない。現に見えないのだから。


 嫌な汗が流れる。

 辺りに誰も居ないのは感覚で分かる。

 肌で感じる空気があるだけマシ。


 そう、思った瞬間に消える。


「!!?」

 いきなり彼女は両腕を前に突き出し、そして力無く地面に崩れた。


 両手で自分の顔を触る。

 が、彼女の表情には恐怖しか浮かんでいない。


『感じる。風を、熱を、冷たさを、痛みを、悦を』


 彼女ではない彼女の声が響く。


 失った。それは触覚。

 触れている筈の自分の肌が解らない。地面の冷たさが解らない。空気の生ぬるさが解らない。

 自分が立っているのか座っているのか、それすらも解らない。

 見えない事が一層にその恐怖を煽る。


『生きているのか? 全てのモノを感じない自分は、生きているのか? 自身の熱すらも解らない。これは生きているのか?』


 響く彼女の声は淡々と続ける。


 その声の通り、ナイトメアーは生きている心地がしなかった。

 唯一残る音で、今此所に自分が居ると解る。


 何も感じない中、自分で自分を抱きしめる。

 抱きしめているかも解らない。彼女の心は不安定に揺れていた。


 怖い。

 感覚を奪われている事もそうだが、彼女には聴こえる声が何よりも怖かった。


 全てを見透かしたかの様に響く声。


 私の声で。まるで私を言う様に。


 ナイトメアーの体が震え出す。

 が、今の彼女にはそれすらも感じられない。


「――――――――――――――――――!!!!!!」

 出ない声。だが、叫ぶ。


 必死に叫んでいる様に見えるその姿は、今までの彼女の姿からは見当も付かない姿。

 日常で襲って来る恐怖に怯える様な、無垢な子の様な姿。


 死を感じる彼女の日常では、既に感じる事が出来ないモノ。

 失っていた筈の何かが蘇る。


 それは何か?


 何時の間にか、ナイトメアーの目から涙が流れ出していた。


「――――――――――――――――――!!!!!!」

 何度も。何度も。出ない声を振り絞ろうと叫ぶ。


『―――ここは、どこ?』


「!!?」


 幼い子の声が突然に聞こえる。


『だれもいないの? ひとりなの? どうして? ねぇ、どうして?』


 その声を聞き、ナイトメアーの顔は青ざめていく。

 聞き覚えのある声。


『わたしはいらないこなの? どうして? わたし、がんばってるのに?』


 その幼い声は、まるで助けを求める様に、か弱い声で誰かに尋ねている。


 ナイトメアーはその声を聞きながら、首を横に振った。

 それは否定。


『なんでみんなわたしをキライになるの? わたしなにもしてないのに』


 止めろ………。


『どうしてそんな目でわたしを見るの? わたしわるい子じゃないのに』


 止めろ………!!


『私は、何もしていない。ただ、欲しかっただけなの』


 止めろ!!


『奪う気などない。私に無いモノが羨ましいだけなんだ』


 止めてくれ………。


『結局、満たそうとしても空っぽだ』


 止め、て。


『私は悪夢ナイトメアー………苦しめるだけの存在』


 頼む………止めてくれ。


『ねぇ………幸せって、何だ?』


 声が響く。

 最初は幼く、どんどんと彼女の声になっていく。

 そして、彼女の声は全て、何かの代弁の様に響く。


 ナイトメアーは、見上げながら涙を流していた。

 顔を歪め、まるで聞きたくない本心から逃げるかの様に首を横に振る。


『―――何を恐れる?』


 声が響く。まさしくこの現状を引き起こす主、『森神樹』の声。


『汝の思い、何故封じ込める?』


『孤独を満たそうと振るう刃。その中で汝は何を見いだせた?』


『何故、本心を押し込み偽りを気取り求める?』


 尋ねる。

 解っているかの様に尋ねる。


『―――答えてみろ』


 見上げながら、ナイトメアーは未だ首を横に振っていた。

 何かに逃げようと。何かを否定しようと。


『―――答えてみろ』


 自身を抱く腕に力を篭める。

 止めてくれ、と心で叫び続ける。


 これ以上、私を乱さないで。


 止めて。止めて。止めて。止めて。止めて。ヤメテ。止めて。


『―――答えて―――』


「その必要はないよ」


 『森神樹』の声を遮り、新たな声が響く。


「今此所での答えは、嘘にもなる。無理に出さなくとも良いよ」

 その声は優しく響く。


 ………誰?


「今は、眠っても大丈夫」


 ………独りは、嫌。


「俺が、側に居るよ。涙を止めて、ゆっくりと眠りな」

 声の主は、ナイトメアーの肩に優しく手を乗せる。


 感覚が無い筈のナイトメアーの肩は、一瞬ビクッと震える。

 が、直ぐにその震えが消える。


「………大丈夫だから」


 見えない筈の目が、映し出す。

 ぼんやりと、霧がかかったかの様に不確かだが。


「………セン………」

 強張った表情が、ゆっくりと緩み、小さな笑みを作る。


「オヤスミ」


 ナイトメアーはゆっくりと瞼を閉じる。

 その瞬間、糸が切れたかの様に力無く倒れる。が、センがナイトメアーの肩を抱く様に支える。


『何故、邪魔をした?』


 ゆっくりとナイトメアーをその場に寝かせる。

 頬に残る涙を拭い、センは立ち上がる。

「此所からは俺とアンタとの話だ」


『―――もう一度問おう。何故、邪魔をした?』


「俺は少し驚いている。アンタは、何時から女を泣かせる様な趣味を持った?」


 センは一歩、前へ出る。


「今回は、少しやり過ぎた様だな………俺は、随分と久しぶりにアンタに怒りを抱いている」


 また一歩。


「さぁ、姿を見せろ」


 一歩。


「始めよう。俺とアンタで」


 一歩。


「久しぶりの口喧嘩を………!!」



















いやぁ~突然だよね。

「王」と「セン」の件は必要だと思いましたので。


もう少し話進めないと何で「王」を嫌がっているのか?とかが解りませんので、今回の件は頭の隅に置く程度で。


ナイトメアーの描写はですねぇ~、これだけ読んでも「は?」なんですよね。

彼女の本性と言うのはまだ完全に出てませんから。

これも頭の隅に置いておく的な感じで。


………もう頭の隅が隅じゃなくなっていく感じがしますね。


次回は「セン、口喧嘩する」の一本です。

………いや、そんなサブタイではないですよ。


それでは、それでは。


P.S.

キュンと来るような女性を書けません。

魅力的とでも言うのか………。

ムカツクおっさんは書けるのに………。



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