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King of the forest ~Improved version~  作者: 龍門 
【 森 】 ~ 邂逅 ~
14/21

Who are you?



お久しぶり?

どうも龍門です。


断らないから使い勝手が良いのか?

バイトが凄まじい感じ。

俺のシフトだけ空白が少ない。


胃に穴が空きそうな程、接客・接客・接客・愛想笑い・接客・接客、の無限ループ。

ストレスと無縁だったあの頃………。

襲い来る腹痛と胸焼け。


………矢張りあそこのタイ焼きは甘すぎる………。
















 【森】『南』・『ガランド大帝国』側、『黄昏の砂丘』


 【森】を囲む様に形勢される『黄昏の砂丘』と呼ばれる砂丘。

 200年前に堕ちた『永久凍結フリーズ』により出来上がったと文献には書かれている。が、現在の学者の調査によると、「隕石落下により出来上がったモノではない」と言われてはいるが、それを証明する事は出来ずに『不可思議な現象』と上げられる現象の一つ。


 【森】・『黄昏の砂丘』・『ガランド大帝国』は差程離れていなく、『ガランド大帝国』の『帝都ランスボルグ』から『黄昏の砂丘』に着くまで2日。『黄昏の砂丘』から【森】までは2時間も掛からない。


 砂丘に月が昇っている。

 見通しの良い景色。映るのは月光に反射した砂の輝き。

 風は吹かず、静寂が場を支配する。


 そんな中、砂に足跡を付けながら歩く数名の兵士。

 全員合わせても五名。


 その内、真っ赤な鎧を纏う者が二人。

 残りはくすんだ銀色の鎧を纏っている。


 全員が全員体の何処かしらに傷を負っている。

 一言も発せずに、口から零れるのは疲労から来る荒い呼吸。


 そんな中、赤い鎧を纏った『紅蓮騎士団』団長、レイナード=アヒリアは口を開いた。

「此所で暫く休憩を取る。各自もう一度自身の怪我を」


 その言葉を聞き、くすんだ銀色の鎧を纏う兵士二人が糸が切れた人形の様に地面に座り込む。


 表情に安堵は無い。

 未だ顔は青白く、ガタガタと歯を振るわせている。


 『不確かな狼ゴースト・ウルフ』に刻まれた恐怖。

 余りにも根は深く、【森】から離れた今でも何時襲われるかと言う恐怖に苛まれる。


 手を伸ばせば届く距離。至近距離で死んで行く仲間。

 首筋から噴き出る鮮血。

 鮮明する程に脳裏に焼き付いている。


 悲痛の叫び。死にたくない一身の叫び。助けを求める叫び。

 此所に居る者はそれを無視し、そして屈辱と敗北、恐怖を与えられ逃げた者達だ。


「死にたくない………死にたくない………死にたくない………死にたくない」

 座り込む兵士の一人が自分の体を抱きながら震え出す。


「……………………………………………………………………」

 もう一人の兵士は虚ろな目で唯々砂を見つめている。


 二人とも大きな怪我は見あたらないが、精神には大き過ぎる傷を負っている。


 その様子を見て、余りにも不憫過ぎ目を逸らす『紅蓮騎士団』団員フロア=ミスカラ。

 彼女も大きな傷は無い。


 正体不明の少年により与えられた怪我は致命傷ではなく、時間と共に癒えるモノ。

 多少の息苦しさはあるが、動く事に支障は無い。


「………たった………たった五人」

 フロアは思わず漏らす。


 この砂丘を越え【森】に向かった時は何人居た?

 ………157名。些か今回の作戦には多すぎる人数。それ程の数を投入し、生き残ったのはたったの五名。

 その内二人は『紅蓮騎士団』だ。この作戦の正規メンバーではない。


「………あれが………森………『不確かな狼』………幻想種」

 自身の世界の狭さ?そんな範疇の話ではない。


 あれは、人が戦うべき相手ではない。

 『有限魔法』とも『未知魔法』とも取れない謎の力。


 姿が消える?突然現れる?

 どうやって戦えと?どうやって勝てと?


 国は………あんな化け物と戦う気なのか?


 フロアは相手の強さに恐怖していた。

 簡単に遂行出来る作戦。そう、言われた筈なのに。


「………あんなの………敵う訳………ない」

 思わずそう漏らしてしまう。

 弱音が聞かれてしまう。そんな事は気にもとめずに。


「フロア。余りそう言う事を口にするな」

 レイナードは腰に手を当てながら注意する。


 が、フロアには届かない。

 彼女もまた心に傷を刻まれているのだ。


 人と言う者は圧倒的な力に弱い。

 ねじ伏せられる恐怖。抗えない恐怖。

 人はそれを肥大させ抱え込む。


 自滅が得意な生き物は人ぐらいだろう。


「………ふぅ」

 フロアから視線を外しながら息を吐く。


 此所で慰めても大差意味を成さない。

 それに、レイナード自身も実際は慰める余裕など無いのだ。


 『紅蓮騎士団』の団長と言う体裁がある。

 それを張っているだけであって、平気な訳ではない。


 唯、彼女は恐怖以外に屈辱を刻まれている。

 逃がされた。殺さずに。相手の気分で。


 それが堪らなく苛つかせる。その苛つきのお陰か、崩れずに張っていられる。

 その苛つきは吐き出したい、叫びたい程に大きい。


 が、堪えろ。抑えろ。

 唇を噛む。

 此所で露わにして良い感情ではない。


 噛んだ唇から鈍い痛みが走る。

 【森】でも同じ所を噛んでいた為か、血の固まりが傷口に付いている。


「………我慢強いな。以外にも」

 思わず苦笑してしまう。


 もう一度フロアや兵士達に目をやる。

 胸に痛む光景。


 人の死には慣れている。

 そう言えは出来るが、矢張りそれは嘘だ。


 我慢する事は出来るの間違い。

 叫び逃げだそうと思ったのは軍に所属して間も無い頃。

 顧みず救い出そうと無茶をしたのは部隊に所属した頃。

 自分のミスで仲間を死なせてしまったのは騎士団に入った時。


 随分私は染まったな………。

 浮き出る記憶は余りにも血生臭い。


 気高く、誇り高い人間に。

 そう思い志願した軍。


 残念な事に今の私には程遠い。

 覚悟……は、決めたつもりだったが。矢張り慣れない。


「………ん?」

 ふと、一人居ない事に気付く。


 確か、今回の作戦を指揮した部隊長が生き残っていた筈だ。

 その彼が何処にも居ない。


 恐怖の余り何処かに行ったのか?

 砂の地面に目をやる。

 足跡。その一つ。部隊長のモノであろう足跡が此所から離れていた。


「矢張り………恐怖に耐えられなく」

 その足跡を目で追いながら歩き出す。


 部隊長。多分あの男も幾度もの戦いを生き抜いた筈だ。

 だが、今回の任務は余りにも過酷過ぎた。


 一方的な虐殺は私自身も初めてだった。

 あの男も、きっと初めてだったのだろう。


 少し大きな砂の瘤を登る。

 そして下を見ると、一人の兵士、部隊長が座っていた。


 見つけた。


 だが、心身共に疲労した彼女に完璧な体裁を保つ事は出来ない。

 舐められない為にも大きく息を吸い、表情をいつもの彼女、『紅蓮騎士団』団長の表情にする。

 そして座る部隊長に近づく。

「………此所で何をしている?」

 声はいつもの彼女だ。


「ん? ………これは、これは。騎士団長様ではないですか。私に何か?」

 部隊長は皮肉な口調で振り返る。


 左目を布で覆っている。

 先程の戦いで傷を負わされたのか。

「姿が見えなかったからな。勝手な行動は慎んでもらいたく」


「申し訳ありませんでしたな。幾分私も頭が回らず、勝手な行動をしてしまった」

 無表情のまま、口だけ吊り上げ笑みを作ろうとする。


 不意に、レイナードは感じ取った。

 僅かだが、引っかかる違和感を。

「………随分………元気だな?」


 その言葉は不適切な言葉であった。

 元気な訳がない。そう自分自身も思っていながら、その言葉が口から出た。


「元気? そんな訳在る筈がないじゃないですか。死にかけ、部隊の兵士達を殆ど死なせてしまったのですよ?」


 レイナードは先程までの張った姿ではなく、いつもの雰囲気を醸し出す。

「………その傷、狼共にやられた傷ではないな? 誰と戦った?」


「聴取ですか? 今は勘弁してくれませんか?」

 ゆっくりと立ち上がる。

 部隊長の鎧は所々に刃物で開けられた様な穴が空いている。


「まぁ、見当は付く………『黒き鎌使い』、あの賞金稼ぎと戦ったのだろう?」

 狼の牙による傷は、腐るほど見た。だが、同じではない。


 部隊長は黙ったまま、レイナードを見つめている。


「あの閃光弾。あれは貴様がやったのだろ? 狼共が使う必要性があの場ではない。『黒き鎌使い』も、そんな物を持っている様に見えなかった」


「………他には?」

 それは突然。部隊長の雰囲気が変わる。


 先程までは心身共に疲労した雰囲気を醸し出していた。

 だが、今の彼には余裕さえ感じられる。


 それを感じ取り、レイナードは若干眉を細ませる。

「………作戦内容。森に火を放つと言う今回の任務に大きく外れた作戦。今回は森に住まう物の調査が主だっ―――」

「『黒き鎌使い』の処分も、だろ?」


 被せる様に部隊長が発する。

 その発言に更に眉を細ませる。

「………何故、貴様がそれを知っているかは置いておく。その任務は私達に与えられたものだ。貴様等部隊には関係の無い話。話を戻すが、火を放つと言う行為は炙り出す為なのかもしれないが、それは余りにも愚策。最初は唯々貴様が無能で阿呆なだけだと思っていたが、どうやらそれは認識の誤りだったらしい」


 一度そこで切る。

「………いや、炙り出すと言う事自体は間違いではないな? ………問題は、何を炙り出したかったのか、だ」

 そこでレイナードは腰に下げる『有限魔法リミテッド・マジック』の短剣の柄を握る。

「答えろ。貴様は………何者だ?」


「いきなり「何者だ?」か、随分飛ばしたな………まぁ、守秘義務があるからな。色々と言えないが、そこら辺の穴を突き、言える事が一つや二つはある」

 部隊長は口角を吊り上げる。


「………答えて貰おうか」


「ハハッ! 怖い、怖い………先程までは体裁を保とうとしていたのに、今は素だな。流石と言うべきか、な? 『紅蓮騎士団』の団長としては些か若過ぎるし、色々とまだ足りない部分が在ると思っていたが、いやはや………中々、と俺の中の評価を上げておくとしよう」

 手を広げたりと、大きなアクションを取りながら態とらしく言葉を並べていく。

 が、その言葉はレイナードを刺激するモノばかりだった。


「………そう言う評価は言われ慣れてはいるが、矢張り面と向かって言われるのは何度経験しても嫌なものだな。しかも、色々と見抜かれていたときた。これは余りにも私が滑稽ではないか?」

 笑みを浮かべるが、その笑みは怒りから来るものだ。


「そこまで馬鹿にしたつもりは無い。素直に評価を上げたんだ。その観察眼。そして相手の雰囲気を察する洞察力と言うのか、勘と言うのか。それを踏まえても格段に評価は上がった。矢張り、噂や調書と言うのは完全に信用は出来ないな」

 部隊長は不敵な笑みを浮かべたまま両の手を大きく広げる。


「………解せない事がある」


「何だ? まぁ、それに答えられるかどうかは解らないが、一応聞こうじゃないか」

 階級。そんな事を気にもしない口調に態度。


 レイナードは既にその事に対しての感心はなく、情報を引き出す事だけに集中している。

「今回の貴様の任務・・・・・が森に住まう何かを炙り出す事と過程しよう。それなのに、何故貴様は『黒き鎌使い』と戦闘を行った? 炙り出すだけが貴様の任なのか?」


「残念だ。それは言えないな。まぁ、『黒き鎌使い』と一戦交えたのは俺の勝手な行動だ。唯純粋に戦ってみたいと思ってしまって、な。いやぁ、伊達に女で一人稼ぎ屋をしているだけあるな。殺されかけちまったよ!」

 話している途中で思い出したのか、顎を撫でながら笑い出す。


 その反面、レイナードは何か考えた様に顎に手を当てていた。

 その様子に気付き、ニヤリと再度表情を変える。


「考えろ、考えろ! 俺の素性や今回の不可解な点を、な! 何故俺は火を放ったのか! 何故俺は放っただけで他のアクションを見せなかったのか! 何故俺が………此所に居るのか、な」


 部隊長が発する言葉自体がレイナードに取って不可解だった。

 何故、態々考えさせる様な発言をする?

 何かを知らせたいのか?何かを教えたいのか?何かが在るのか?


 考えるだけ泥沼に嵌っていく様な感覚に陥る。

 裏が在るのでは?罠か?それとも本当に何かが?


 この男の本性が全く解らない今、この発言を鵜呑みにする事は無い。

 頭の片隅に置いておく。その程度に止めておこう。


 それに、随分お優しい様で………。

「………もう一つ良いか?」


「知りたがりだ、な? まぁ、知る権利は多少成りともあるだろうさな。良いぜ? 聞きな」


「帝都に帰った後も貴様は、部隊に所属しているのか否、かだ」

 この問いの返答により、部隊長が行った作戦の必要性が多少でも見える。


 一時的な、牽制的な作戦だったのか。それともこの作戦自体が布石だったのか。


「ククッ………なんだぁ? 俺にトキメ―――」

「断じて違う」

「………そうかい」


 最後まで言わせずに被せ否定する。

 その速さにつまらなそうな表情を浮かべ、溜息を吐く。

「はぁ、………居るぜ。一応の軍籍は『第二森対策部隊』だ。知っているだろ? 今回は少し部隊弄られて変な感じになったけど、な。一応は今回も『第二森対策部隊』の主導だったんだ」


「成る程な。てっきり今回の作戦指揮部隊は編成された部隊だと思っていたのだが………部隊長を任されていたと言う事は、それ相応の戦果を挙げていたらしいな。元から対策部隊に?」


「一つって話じゃ………あぁ、そうだよ。俺は産まれは違えど育ちは帝国だ。余所者ではない。まぁ、色々と経緯があるんだが、それは依頼主にも関わるから喋れん」

 先程から表情を変える為、嫌がっているのかどうか、その真意は掴めない。

 本当に本性を装うのが得意な男だ。


「………『第二森対策部隊』」

 もう一度呟く。


 『森対策部隊』

 【森】への作戦を実行する部隊。

 奇襲・強襲・偵察・侵攻。【森】に関する事は全て行う部隊。


「………実力か?」

 笑みを浮かべる。


 その問いに部隊長もニヤリと笑みを浮かべた。

「その問いは………NOだ。半年程前か。人員不足による急遽な補充で、な。全く、困ったもんだよな! 今回も部隊ゴチャゴチャに弄られての部隊長だ。どうやらあの軍隊長様は余程『黒き鎌使い』を邪魔に思っていたらしいな!」


 今回の『紅蓮騎士団』に与えられた任務は『黒き鎌使い』の排除だった。

 言ってしまえばこの任が一応の本命だ。


 こんな大掛かりにする必要が在るかは不明だが、その為だけに急遽編成した様な部隊を【森】へ向かわせた。

 火を放つ。と言う作戦はこの男が『紅蓮騎士団』にも知らされない、極秘と思われる任を受けた事によるモノだったが、それでも説明が付かない。


「フフ、………そうだな」

 此所で初めて、レイナードは気を緩めた笑みを浮かべた。

 色々と考える所はあるが、部隊長の苦労している話を聞き、思わずの笑みを零してしまった。


 その笑みを意外そうな表情で見る部隊長は俯き、今までとは全く違う笑みを浮かべた。

「あぁ………本当だ。アンタの言った通り………情報だけで決めつけるのは良くない、な」


 小さく呟いたその言葉は、真意の掴めぬ飄飄とした言葉ではなく、彼の素を露わにした言葉。

 言葉の意味は解らない。それでも、彼の本音とだけは解る言葉。


「ん? 何か言ったか?」

 小さく呟いた為か、聞き取れずにレイナードが聞き返す。


 腰に手を当て、思わず漏らしてしまった自分に首を振りながら部隊長は顔を上げる。

「…………はぁ~」

 何故か溜息を吐いた。


「何だ?」


「………可愛くない女だ」

 首を横に振る。


「何だ、その態度。そしてその言葉。貴様に言われる筋合いは無いのだが?」

 額に青筋が浮き出ている。突然の発言に溜まっている苛々が暴れ出しそうになっている。


「いや、別に」

 彼がこうもつまらなそうな表情をしているのは、今のレイナードの表情が団長としての表情だからだ。

 先程笑って見せたあの表情は、年相応のモノだった。


 それがこうも一瞬で元に戻った事に、部隊長はつまらなさを感じていた。

 だが、この事は部隊長が説明しない限りレイナードが知る事はないだろう。


「些か失礼じゃないか? 説明しないのなら、態々言う必要があったか?」


「やっぱツンツンしているより、従順な子の方が良いな」

 改めて自分の好みが間違っていなかった事を確認。かなり唐突だが。


「………私は貶されているのか?」


「いやぁ、貶してはいない。唯、俺は女運が無いってだけの話しよ」

 両手を挙げ、背筋を伸ばしながら歩き出す。


 レイナードは眉間に皺を寄せたまま部隊長を睨み付けている。

 完全に部隊長のペースに乗せられている事に気付かず。


 その表情に苦笑しながらも何も言わず、部隊長はレイナードの横を通り過ぎる。

 後ろ姿を見ながら、レイナードは寄せていた眉間の皺を緩める。


「………名は?」

 不意に、レイナードは尋ねた。


「尋ねすぎだぜ? 団長さん」

 立ち止まらずに話し続ける。


「………まぁ、良いか………俺の名はバッグラー=サファリヤ。調べたいなら勝手に調べな。まぁ、知りたい情報は出てこないだろうが、な」

 腰に手を当て、笑いながら歩いて行く。


「バッグラー=サファリヤ」

 記憶の中にその名が在るかどうか、記憶を辿る。

 が、記憶の中にある名にヒットしない。


 偽名か?

 後ろ姿を眺めながら眉を細めた。


 不意に、彼女は蒼く光る左目を瞑った。

 世界を視るのは碧に輝く右目。

「………………………………………」

 何も言わず、唯々視続ける。


「………痛ッ! …………」

 唐突に、右目に痛みが走る。

 余程の痛みなのか足が蹌踉け、倒れそうになる。

 ゆっくりと右目を手で押さえながら左目の瞼を開く。


「ハァ、ハァ………流石に、あんな短時間では、本名かどうか程度しか視えないか」

俯き、苦笑混じりに額を流れる汗を拭う。


 未だに痛みが残っているのか、手で右目を押さえたまま顔を上げる。

 既に目の前にバッグラー=サファリヤと名乗った部隊長の姿はない。


「………卑怯かな。少し………」

 自分がやった事に少し後悔しながらも、唇を噛もうとする。が、


「………噛みすぎだな。唇が歯形だらけになってしまう」

 癖なのかどうなのか。苦笑。


 バッグラー=サファリヤ。

 この男が誰の命令により動いたのか。何が目的なのか。


 調べる必要がありそうだ。

 軍上層部………または相当上が関わっている可能性がある。


 それに、あの男………、

「………かなり出来る」

 だからこその、

「………嫌いに入る分類だな」

 押さえていた手をゆっくりと離す。


 何度か瞬きをし、痛みが残っているか確認する。

「………ふぅ。使い勝手の悪い」

 滲む汗を拭う。


 碧と蒼に輝くオッドアイ。

 双眼は、何を見つめているの、か。
















やっと出たよ隊長の名前。何か格好いい。

本当はこの話だけで一話取る予定はありませんでした。


ですが、何か色々書いている内に結構長く。

なので今回はこれだけ。


まぁ、隊長の名前出せただけでもラッキー。

この話書かないと隊長の名前次の登場まで出ない所でした。


因みに、隊長の妄想CVは藤原啓治さんです。

皆様もそんな感じで読んでみて下さい。多分合います。


それでは、それでは………。



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