The defeat is not an end etc
凄く短いです。
ここ以外で切る所がなく。それでも中途半端ですかね。
『なんともまぁ………数人逃がしちゃったみたいだねぇ』
白い『不確かな狼』、クィスは呆れた様に言いながら惨状に現れた。
『ケッ! あの人間がミスしたんだよッ!!』
尻尾に鎖を巻いた『不確かな狼』、バルデトは未だに閃光弾による影響で目が見えないのか、目を瞑ったまんま叫ぶ。
『………どうやら、センもミスをした様だな………まぁ、いつもの悪い癖だろう』
右側の牙が欠けた『不確かな狼』、ディガーはどうやら目は見えているらしく、センを見つめている。
『んあぁ? またかよッ!! 森焼き払おうとしようする奴等だぞ!? その中に気に入る奴が居たって言うのか!?』
バルデトは苛つきを隠しもせず、兎に角叫んでいる。
『俺が知るか………まぁ、何だ。何か見えるもんがあったんだろうさ』
ディガーはバルデトを軽くあしらい、センの元へ向かって歩き出す。
『ケッ! 良く解らないねぇ。人間はチキンだけで十分だっての!!』
未だに目が開けないのか、目を瞑ったまんま歩き出す。
『はぁ~………アンタ、少し静かにしさないよ』
『なっ!? クィス! お前も俺が五月蠅いって言うのかよ!?』
『えぇ。私達の耳の良さを呪ってしまう程に、ね』
軽く毒を吐きながらクィスはディガーを追う様に歩き出す。
『嘘だろ!? おいおい! 嘘を吐くのはあの糞猿だけで十分だぜ!?』
『叫ぶの止めなさいよ』
毒まで吐いたのに叫び続けるバルデトに呆れる。
『あの馬鹿は目が見えなくとも馬鹿か』
小声で毒を吐きつつ、ディガーはセンの横で立ち止まる。
『………あの赤い鎧、少しは戦えた様だな』
「今回は俺の方が有利だったし、向こうが準備万端だったら、解らないだろうけど」
『それは本音か? それとも謙遜か?』
「本音………でもまぁ、どんな相手でも負ける気はしないけどね」
センは笑みを浮かべディガーを見下ろした。
『フンッ! 易々と負けて貰っては困る。………最低でも「最も強い者」を名乗れるまでは負けるなよ?』
「最強止まりで良いの? てっきり、無敵になれぐらい言うと思ったけど?」
『舐めるなよ? 基礎を教えたのは誰だ?』
口角を吊り上げる。
その表情を見て、センは小さく溜息を吐いた。
「はいはい。弟子は師匠には勝てませんよ」
『あら? でも、弟子は師を超えるって相場は決まっているわよ?』
話を聞いていたのか、クィスが笑みを浮かべながらセンとディガーに近づく。
『何を言っている? 俺がセンに負ける訳がない』
断言。
「………余りハッキリと言わないでよ。落ち込む」
再度溜息を吐きながら、センは視線をディガー達から変え、違う方向を見る。
そこには、両膝を付きながら悔しがる女性。
『あれは相手が悪かったな』
センの視線で気付いたのか、ディガーがそう述べる。
「強い相手だったの?」
『お前が戦った赤い鎧以上………そう言えば良いか?』
「………そんなに?」
『まぁ、あの男が『有限魔法』を持っていなかったし、魔力も感じなかった………だが、それでも此所から逃げる事が出来た』
ナイトメアーは『未知魔法』を駆使し戦っていた。
だが、あの兵士は自身の腕だけでこの場から逃げた。
それは圧倒的な差と言っても良い。
弱者と強者が戦い、強者が手を抜かないかアクシデントが無い限り、弱者が逃げる事など出来ない。
強者から逃れられる者は、同じ強者かそれ以上の最強だろう。
ナイトメアーは手を抜いてはいなかった。
つまりは、あの男は同等か、それ以上。
「………大陸ってやっぱ広いよね」
笑みを零す。
『………まぁな。俺等とも互角に戦う人間が存在しないなど決めつける事など出来はしない。それがこの世だ………あの女も自分の世界の狭さに気付いただろうさ』
「だから手助けしなかったの?」
『一対一の戦いに割り込むのは、無粋だろう………まぁ、負けたら代わりに俺が食い千切ろうと思っていたが、まさか閃光弾を使われるとは思わなくてな』
ある意味人間臭い考えでもある。
『逃がしたら元も子も無いけどね』
『だから言っただろ! 逃がすつもりなど毛頭無かったと!』
クィスの言葉に怒鳴るディガーだが、
『何の為の鼻だい? 考え過ぎで獣の本能を忘れたのかしら?』
『ぐっ………』
反論出来ず。
二頭がそんな会話をしている間に、センはゆっくりとナイトメアーに近づいていた。
近づきながら、センはどう言葉を掛けようか考えていた。
ぶっちゃけてしまうと、センに今のナイトメアーの様な経験が無い。
負けた事がではない。戦いの後に後悔をした事がないのだ。
どんな相手でも、どんな状況でも、その時出来る事をやる。
後々に、「ああすれば良かった」など考えた事がない。
その為、慰めなどと言う言葉は浮かばない。
だが、慰めを言うつもりはない。
自分が言われて嬉しくない言葉だからだ。
負けたけれども、生きていると言えば良いのか。
次は勝てると、確信も無い言葉を掛ければ良いのか。
追い打ちをかける様に罵倒すれば良いのか。
言葉は重い。
それを解っているからこそ、こう言う場では選ばなくてはならない。
「………メア」
ナイトメアーの後ろに立ち、名を呼ぶ。
返事は返ってはこない。
「………相手は強かった?」
「………………あぁ、強かったな」
「………その強さが天辺かな?」
センはゆっくりと歩み、ナイトメアーの横に立つ。
「………出来たのは新たな標的………儲けだね。楽しみが増えた」
センの口からその言葉。
思わずナイトメアーはセンを見てしまった。
一瞬、滲み出たのは『王』でも『少年』でもない、異質さ。
それはまるで、
「………ふふっ………私みたいな事を言うんだな」
同じ。ナイトメアーと同じ。
『戦闘狂』の言葉。
「天辺を決める権利は己ではなく他にある。他がその者を無敵と呼ぶのならば、その者は無敵。他がその者を弱者と呼ぶならば、弱者。………だが、それを覆せるのは他ではなく己のみ」
声質は、既に『王』のモノであった。
その変わりように、ナイトメアーは苦笑する。
「………その通りだな………標的が出来た。自分の甘さが解った。そして、挑戦者と言う立場になれた。今回は随分儲けが多い。こんなにも、殺したい奴が出来たのだから」
深い笑みを浮かべる。
勝っていたなら勝っていた。それだけだ。
この世界に措いて、死なずの敗北は貴重。
刃を突き付けるチャンスを。罵声を浴びせるチャンスを。追い詰めるチャンスを。
殺すチャンスを。
まだ、終わりではない。
『戦闘狂』の辞書に、「負けて終わり」など無い。
生きていれば戦う。
死ねば終わる。
死ななければ、終わらない。
「んじゃ、もっと自分の位置を把握する?」
「ん?」
差し伸べられた手を握り立ち上がりながらナイトメアーは首を傾げる。
センは満面の笑みを浮かべる。
だが、それは胸ときめく様なモノではない。
もっと、邪悪な感じのする笑み。
「招待するよ………【森】へ」
後にナイトメアーは語る。
「あの時、頷かなければ良かった」と。
どうも。龍門です。
今回、短いです。
実は前話でこの話も含まれていたのですが、「話数稼ぎの為に次だな」とかセコイ事を考えてしまい。
結果蓋を開けてみればこれですよ。
本当はもっとメアは落ち込み、センが優しい言葉をかけていたのですが、
それは違うと思いまして、結果呆気なく立ち直ったみたいな。
ぶっちゃけメアは差ほど落ち込んでいません。
一回一回の戦闘に対して彼女自身それ程感情移入する暇も必要性も感じないからです。
一応『賞金稼ぎ』なんで、戦う事が仕事ですので。
勝っても次!みたいな感じです。
ですが、今回は屈辱的な負け方をしたので少し落ち込んだみたいな感じです。
センは戦闘狂です。
戦う事は本能だと思っているので、抵抗がありません。
もっと掘り下げれ色々書けたのですが、書きすぎると諄い感じになってしまうので。
ごめんない。
次回は長いです。
………かもです。
それでは………。