第7話 召喚キターーーーーー!
女神は、椅子の横にある鏡をジッと覗き込んでいる。
サラは、その鏡を覗き込んで百面相をしていた。
女神からは何かの情報が見えているらしいが、サラにとってはただの鏡だ。
(わーい。どんな表情を浮かべても、どの角度でも、マジ可愛いぞぉ。新しい、わ・た・し)
笑ってみたり、しかめっ面をしてみたり。
クルクル回ってみたりと鏡の前のサラは忙しい。
女神は、鏡に映っているであろうサラには見えない情報を、真剣に追っているようだが気にしない。
サラは自分をしっかりじっくり観察しながら、新しい体を馴染ませるように動いていた。
しかめっ面で鏡を覗き込んでいた女神が「あ、来た」と声を上げた。
サラはキョトンとして首を傾げながら覗き込む。
すると喜色満面の女神と目が合った。
「召喚呪文の詠唱が始まったみたいだわ。サラちゃん。準備はいい?」
「はいっ、女神さまっ!」
サラはシャキッと真っ直ぐに立つと、指先を揃えた右手を右のこめかみあたりに当てて、敬礼っぽいポーズをとった。
「おさらいよ、サラちゃん。召喚陣の光が上から来たらどうするの?」
「はいっ! 綺麗なポーズをとって立ち、召喚先についたら微笑みを浮かべてご挨拶っ!」
女神の指示通り、サラは右側をちょっとだけ前に出してポーズを作って微笑む。
その表情は、目を細めて口元に弧を作るというものだが、サラがやると無理があって変顔にしか見えない。
だが女神は褒め称えた。
「いいわよー、サラちゃん~。可愛いわぁ~。それで光が前から来たらどうするの?」
「スッと飛び込み、サッと立つ!」
サラは前に少し飛んで前転し、スッと立ちが合ってみせた。
「いいわよ、いいわよ、サラちゃ~ん。カッコいいわ。これは召喚先の皆さまもニッコリよぉ~」
「よしっ!」
笑顔の女神に褒められて、サラは鼻の穴を膨らめ握りこぶしにした両手を胸の前に持ってきて小さく振って上機嫌だ。
「うふふ。こんなに可愛い聖女さまが来たら、召喚先の皆さまは感動間違いなしよ。絶対に歓迎されるから、何にも心配しなくていいわよぉ」
「はいっ、女神さま」
(どんな冒険が待ってるんだろう?)
サラの胸は期待で膨らんだ。
ついでに小鼻も膨らんでいる。
そんなサラの前に、白い光がキラキラしながら現れた。
「あら、今回の光は前からね。召喚先は神殿でしょうし、サラちゃんには身体強化が常時かかっているから怪我をするようなことはないわ。思い切ってカッコよく飛び込んで行っちゃっても大丈夫よ」
「はいっ。女神さま」
白い光が渦巻きながら少しずつ広がっていく。
サラの身長と同じくらいに広がった時、女神が握った右手の親指を立ててGOサインを出した。
「では行ってらっしゃーい」
「はいっ、女神さま! 行ってきまーす!」
手を振る女神に見送られて、サラは異世界へと転生するために勢いよく白い光のなかに飛び込んだ。




