第61話 めでたしめでたし♪
王国はミハイルとイサベルが結婚して王位を継いだこと、聖女サラが2人の養女になったこと、聖獣たちの訪問などを一気に発表した。
サラは王城のバルコニーから外を見て叫んだ。
「お祭りだよ!」
晴れた空にポンポンと音を立てて上がる花火。
後に残った白い煙が風になびいて消えていく。
イザベルが説明する。
「うふふ。王国に平和が戻ったのですもの。皆お祝いしたい気分でいっぱいなの。夜に上がる花火は色とりどりで美しいのよ」
「そうなんだ。イサベル」
「あら? お母さまと呼んでくれないの?」
イザベルがフフフと笑いながらサラを見下ろす。
サラは照れて頬を赤く染め、顔をそっと背けて小さく「お母さま」と呼んだ。
「ふふ。なぁに? サラ」
イザベルがサラを覗き込むと、サラは真っ赤になった顔を両手で隠した。
そこにミハイルが羨ましそうな表情を浮かべて混ざってきた。
「あ、ずるいぞ。私のことも呼んでくれ」
サラは迷わず呼ぶ。
「ミハイル」
「ちがぁ~う。お父さまと呼びなさい」
「……」
サラはミハイルを上目遣いで睨んだ。
ちょっとひるんだミハイルは譲歩する。
「父上でもいいぞ?」
「……」
「パパでも……」
「くそオヤジ」
「それはちょっと聞き捨てならんな?」
そんな2人を見て、イザベルは笑った。
ミハイルとイザベルの結婚式や戴冠式。
王城での宴や舞踏会。
おとぎ話のような華やかな世界を、サラは楽しんだ。
しかし、メイドたちによるお世話を受けたり、おいしい食事が出てきたりしても、王城はサラと聖獣たちの我が家とはならなかった。
イザベルが名残惜しそうに言う。
「本当に帰ってしまうの? サラ」
「うん」
サラはコクリと頷いた。
「イザベルの……お母さまの側にもいたいけど、聖獣たちと聖獣の森にいたいの」
「サラがそうしたいのなら仕方ないわね」
イザベルの隣で、ミハイルが言う。
「ここはお前の家なのだから、いつでも遠慮なく戻っておいで」
「うん、ミハイル。わかった」
ミハイルが不満げに言う。
「お父さまと……」
「ダメオヤジ」
「うぅ、意味はよく分からんが、罵倒なのは分かるぞ?」
ミハイルが不満げに眉毛を下げて、怒っているのか、嘆いているのかわからない表情を浮かべたのを見て、サラが満足そうにニマッと笑う。
それを見て、イザベルは軽い笑い声を立てた。
サラはイザベルに言う。
「瘴気の掃除は、掃除機がしてくれるし。聖力はたっぷり注いでおいたから、お母さまが毎日ちょっとずつ補充すれは当分持つと思うよ」
「ええ、わかったわ。しっかり管理するから心配しないで」
サラはコクリと頷いた。
「うん。また何かあったら来るね」
「わたくしたちも、聖獣の森へ遊びにいくわ」
「うん。待っているね」
笑顔で言うイザベルに、サラも笑顔を向けた。
ミハイルがイザベルの肩を抱いて言う。
「ああ。2人して行くぞ」
「お母さまだけでも……」
「2人で行くっ」
ミハイルが言い張るので、サラは仕方なさそうに渋々といった感じで頷いた。
それを見てイザベルが笑う。
『サラ~。そろそろ行こう?』
クロがサラを呼ぶ。
聖獣たちは既に転移のための魔法陣の上に立ち、サラが来るのを待っていた。
「うん、わかった」
サラはクロに頷くと、女神のくれた白い服を揺らしながら聖獣たちの元へと駆けていく。
魔法陣の上に立ったサラは、クルッと向きを変えて、見送る人たちのほうを見た。
「じゃあまたね。バイバーイ」
サラは笑顔で手を振って、聖獣たちと一緒に青白く輝く魔法陣の中へと消えていった。
~おわり~




